お兄ちゃん、ここは天国じゃないよ
僕が目を開けるとそこは天国だった。一糸纏わぬ天使たちが風呂場で騒いでいる。ああ、そうか。僕は死んだのか。僕はそんなことを考えながらゆっくり上体を起こした。
「あっ! お兄ちゃん! おはよう!!」
「おはよう。というか、なんで夏樹が天国にいるんだ?」
「天国? お兄ちゃん、ここは天国じゃないよ。ここは私たちの家だよ。あー、あと、ここはお風呂だよ。そして私たちは今、一緒にお風呂に入ってるんだよ。分かった?」
「ああ、まあ、なんとなく」
「お兄さん、私の体洗って」
「あっ、レイナ! お前、なんでさっき助けに来なかったんだ?」
「ごめんなさい。防音空間で通話してたから何も聞こえなくて」
「あー、なるほど、そういうことか。まあ、なんとかなったから良しとするか。えーっと、どこから洗う?」
「どこからでもいいよ。頭でも胸でもお腹でもお尻でもお兄さんの好きにしていいよ」
レイナ(白髪ロングの幼女だが宇宙人である)は僕の手を自分の両手で包み込みながらそんなことを言った。それを聞いた夏樹(僕の実の妹)の目は血眼になった。
「お兄ちゃん! 先に私の体洗って!! 指何本使ってもいいから!!」
「え? あ、ああ、うん、分かった」
「お兄さん、私の体いっぱい洗って♡」
「え? いや、でも、夏樹が」
「お兄ちゃん!!」
「お兄さん♡」
『早く洗って!!』
え、えーっと、二人同士はさすがに無理かなー。
「お二人ともいい加減にしてください。雅人さん、今から検査を行いますので私の部屋に来てください」
「検査?」
「はい、そうです。さぁ、早く行きましょう」
「お兄ちゃん! 私の体早く洗って!!」
「お兄さん、お願い。私、もう我慢できない♡」
「……あー、えーっと、二人の体洗ってからでいいか?」
「はぁ……まあ、焦らしすぎはよくありませんからね、分かりました。許可します」
「ありがとう、童子。でも、さすがに一人だとどっちかが拗ねちゃうから僕のコピーを一体作ってくれないか?」
「分かりました」
その直後、座敷童子の童子は文字の力で僕のコピーを一体作った。
「では、私はこれで」
「ああ」
童子、いつもありがとな。お前には感謝しても仕切れないよ。
「よし、じゃあ、二人同時に洗っちゃうぞー!」
『やったー!!』




