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金槌坊

 夜……リビング……。

 僕がリビングにあるソファに座ってニュースを見ていると「明日はラッキーデイなので今日は早く寝ましょう!」的なことを言っていた。ラッキーデイねー……。いったい誰が決めたんだか。よし、そろそろ風呂に入るか。


「レイナ、僕先に風呂に入ってるからなるべく早く来いよ」


「うん、分かった」


 僕が洗面所の前で服を脱ごうとした時、お風呂場から夏樹なつき(僕の実の妹)の悲鳴が聞こえた。


夏樹なつき! 大丈夫か!!」


「お兄ちゃん! 助けて!!」


 そこには金槌を持った黒蟻くろありのような妖怪『金槌かなづちぼう』の大群がいた。やつらは夏樹なつきを鏡の世界に連れて行こうとしている。


「キュー! こいつら吸い込め!!」


「キュー……」


 キュー(丸みのある黒いキューブ型の空間。なぜか自我がある)は嫌そうな声を出した。


「え? 虫は嫌い? 分かった。じゃあ、自分でなんとかするよ! キュー! お前はレイナを呼んできてくれ!!」


「キュー!!」


「来い! 人間の闇!! 夏樹なつきを助けろ!!」


 あれ? なんで来ないんだ?


「ま、まさか! さっきのニュースの影響を受けて早く寝たやつがたくさんいるから人間の闇がなかなか集まってこないのか!? くそー! こうなったら自力でなんとかするしかない! 夏樹なつき! 待ってろ!! 今助けるから!!」


 くそ! なんだ! こいつら! どんどん数が増えてる!!


「どけ! 夏樹なつきから離れろ!!」


「お兄ちゃん、もういいよ。私、今もこいつらに適度に神経毒流し込まれてるから口以外ほとんど動かせないんだよ。それにこのままだとお兄ちゃんも向こうに連れて行かれちゃうよ」


 夏樹なつきは妖怪寄りの半妖だから毒で死ぬようなことはない。けど! 僕の実の妹の体を傷つけるやつはどこの誰であろうと許さない!!


「もういい、お前ら全員消し炭にしてやる!!」


 その直後、座敷童子の童子わらこからもらったメガネにヒビが入る。


「ま、待って! お兄ちゃん!! 私は大丈夫だから無茶しないで!!」


「今無茶しないと絶対一生後悔する! だから、お前はできるだけおとなしくしてろ!!」


 お兄ちゃん……。


「わ、分かった。でも、死なないでね!!」


「ああ! くらえ! アリども!! これが『生命いのち炎焔ほのお』だ!!」


『ギギ!? ギー、ギィー!!』


 風呂場にいる黒蟻くろありが消し炭になっていくと同時にメガネが少しずつ壊れていく。今にも意識を失いそうだが、あと少し頑張れば夏樹なつきを救えるのだから、今は後先なんて考えるな。限界を超えろ、全力を出し切れ。だが、決して死ぬな。僕が死ねば夏樹なつきが絶望し、世界が終わってしまうのだから。


「……はぁ……はぁ……はぁ……やった……のか?」


 僕が両膝をついたのち、床とキスしそうになると夏樹なつきが僕を受け止めてくれた。


「お兄ちゃんのバカ! なんであんなことしたの!!」


「……そんなの決まってるだろ……。僕がお前の……お兄ちゃんだからだ」


「だからって寿命減らす必要ないでしょ!!」


「そうだな。でも、今回はそれしか方法がなかったんだよ」


「だからって自分の寿命を縮める技使わないでよ。でも、ありがとう。おかげで苗床にされずに済んだよ」


「は? あいつら、お前を苗床にするつもりだったのか?」


「あっ、苗床っていっても私の体じゃなくて私の髪が目当てだったんだけどね。というか、私のはお兄ちゃん以外が侵入しようとするとヤツメウナギみたいな形になるから、そういう展開にはならないよ。あっ、ちなみにこの現象はお兄ちゃんを好きになると起こるらしいよ」


「……そう、か。まあ、とにかくお前が無事で本当に、良かった……」


「あれ? もしかして寝ちゃった? うーん、どうしよう。とりあえず体洗ってあげようかな」


 これは僕が目覚めた時に聞いた話だがレイナ(白髪ロングの幼女だが宇宙人である)はリビングに防音空間を作り、その中でずっと誰かと通話していたらしい。

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