ありがとう、お兄さん。大好き♡
僕たちがキュー(丸みを帯びた黒いサイコロ型の空間。なぜか自我がある)の近くで運命の赤い糸の話をしていたせいでキューは僕の目をおかしくして運命の赤い糸が見えるようにしてしまった。座敷童子の童子が作った黒縁メガネ(試作品)をかければ、それは見えなくなるようだが怒ると壊れてしまうため気をつけなければならない。
「お兄ちゃん! 全身マッサージしてー!!」
僕が座敷童子の童子の部屋から出ると夏樹(僕の実の妹)がやってきた。
「いいけど、晩ごはんと入浴が済んでからにしような」
「はーい! あれっ? お兄ちゃん、なんでメガネしてるの? というか、頭のそれ何?」
「えーっと、前者は遮光カーテンみたいなものかなー。後者は僕の空間だ。名前は『暁闇の空箱』。ニックネームはキューだ」
「キュー♡」
「ふーん、そうなんだ。またメスが増えたか……」
「ん? 今なんか言ったか?」
「ううん! 何も言ってないよ!! それよりまたアレしてよ」
「アレ? えーっと、それって何のことだ?」
「えーっとねー、おへそを人差し指でキュッて押すやつ」
「あー、『快楽地獄のツボ』かー。でも、あのツボ、一日に三回押すと死ぬんだよなー」
「え? そうなの?」
「いや、さすがに死にはしないけどクセになっちゃうんだよ」
「へえ、そうなんだー。でも、あと一回だけ押してほしいなー。ねえねえ、押してよー」
「ダメだ」
「お兄さん……私も、押してほしい……」
「レイナ、お前もか……」
レイナ(白髪ロングの幼女だが宇宙人である)の頬が少し赤い。熱でもあるのだろうか。
「というか、調子悪そうだな。大丈夫か? レイナ」
「大丈夫。ちょっと興奮してるだけ」
ちょっと? ちょっとにしては辛そうだな。
「ねえねえ、お兄ちゃん。早く押してよー」
うーん、これは快楽地獄のツボに関する記憶を消した方がいいな。
「夏樹、目を閉じてくれ」
「え? 何? キスするの?」
「ん? お前、キスされたいのか?」
「されたいけど、レイナちゃんが見てるからちょっと恥ずかしいなー」
「大丈夫。すぐ終わるから」
「怪しい。本当はすぐ終わらないんじゃないの?」
「大丈夫、すぐ終わるよ。だから、早く目を閉じてくれ」
「……分かった」
夏樹が目を閉じると僕は夏樹の額の中心を人差し指で強めに押した。
「はい、おしまい」
「本当にすぐ終わったねー。あれ? 私なんか大事なこと忘れてるような気がする」
「気のせい、気のせい」
「そうかなー? あっ、そういえば今日の課題まだやってなかった! 晩ごはんまでに終わらせなきゃ!!」
夏樹はそう言うと自室へ向かった。
「レイナ、次はお前の番だ」
「う、うん、お願い……」
うーん、なんかちょっと色っぽいな。
「大丈夫か? リビングのソファで横になった方がいいじゃないか?」
「大丈夫……お願い、早くなんとかして……」
「わ、分かった。じゃあ、目を閉じてくれ。すぐ終わるから」
「うん」
レイナが目を閉じると僕は彼女の額の中心を人差し指で強めに押した。
「はい、おしまい」
「ふぅ……やっと快楽地獄から解放された。ありがとう、お兄さん。大好き♡」
「……っ!!」
彼女は僕の額に優しくキスをすると僕に身を委ねた。
「おい、レイナ。大丈夫か?」
ん? なんか寝息が聞こえるぞ。
「……晩ごはんができるまで寝かせてやるか」
僕はリビングのソファまで彼女を運び、そこに彼女を寝かせた。僕が自室に行こうとすると彼女に腕を掴まれた。はぁ……しょうがないなー。
「よしよし、いい子いい子」
僕が彼女の頭を優しく撫でると彼女は幸せそうな笑みを浮かべた。




