運命の赤い糸か……。
座敷童子の童子の部屋……。
「童子、何かしてほしいことないか?」
「あ、ありません」
「そうか」
彼女は息を整えるとお茶を少し飲んだ。
「はぁ……酷い目に遭いました」
「ごめん。ほら、キュー。お前も謝れ」
「キュー?」
手の平サイズの丸みを帯びた黒いサイコロの形をしている空間キュー(なぜか自我がある)は疑問符を浮かべている。
「はぁ……まあ、ほぼ僕のせいだからお前は謝らなくていいよ」
「キュー♡」
僕がそう言うと彼女は僕の頭の上で飛び跳ねた。
「童子、大丈夫か?」
「何がですか?」
「いや、ほら、さっきまで……」
「大丈夫です。一日に何回か似たようなことをしているので」
「え? そうなのか?」
「はい、そうです。がっかりしましたか?」
「いや、夏樹がそんな感じだから特に何も」
「そうですか。あっ、そうそう、私がこうなったのはあなたのせいなんですよ」
「え?」
「昔はただ仕事をするだけのロボットでしたからね、恋愛や結婚について考えたことはなかったです。しかし、あなたと出会って私は変わってしまいました。さぁ、雅人さん、今すぐ責任を取ってください。とりあえずここにサインを」
「しないよ。高校を卒業するまでは」
「分かりました。では、この婚姻届はそれまで私が預かっておきます」
「できれば一生持っててほしいなー」
「それはできません。私とあなたは赤い糸で結ばれているのですから」
「運命の赤い糸か……。それって本当にあるのか?」
「ありますよ。まあ、たまに全身真っ赤な人がいますけどね」
「あー、それって僕のことじゃないよな?」
「……はい」
「ちょ、ちょっと待て! なんだ! 今の間は!! まさか、本当なのか!!」
「さて、どうでしょう」
「うわー! 気になるー! けど、知りたくないー!!」
「でしょうね」
「キュー!!」
「え?」
どうやらまたキューが何かしたらしい。はぁ……やれやれ。




