お・い・で
僕が帰宅すると、レイナ(白髪ロングの幼女だが宇宙人である)が出迎えてくれた。
「おかえり、お兄さん」
「ただいま。夏樹は今風呂か?」
「うん、そうだよ」
レイナが唐突に両手を広げる。
「えーっと、これはいったい……」
「おいで」
「え?」
「いいから。ほら、おいで」
「えーっと、その前に手洗いとうがいをさせてくれないか?」
「お・い・で」
「わ、分かった」
僕がレイナにゆっくり近づくと彼女は優しく僕を抱きしめた。
「よしよし……よく頑張ったね」
彼女は僕の頭を優しく撫でながらそう言った。
「えっと、これは何かの儀式なのか?」
「違うよ、これはご褒美だよ」
「ご褒美?」
「うん。人間の闇を使いこなしてるし、人間の闇に心と体の主導権を奪われずに帰ってきたし、今も人間の闇を否定せずに全部受け入れてくれてるから、これはそのご褒美」
「そうか。なら、ありがたく受け取っておこう」
「本当? 嬉しいな。ねえ、もっと甘やかしてもいい?」
「え? あー、うーん、どうだろう」
「私ね、いつでもこの星を破壊できる権限を持ってるの」
「……あー、えーっと、気が済むまで好きにしてください」
「わーい、やったー、ありがとう、嬉しいなー」
「……人は見かけによらないな」
「聞こえてるよ」
「あっ、すみません。今のは聞かなかったことにしてください」
「じゃあ、私にも全身マッサージして」
「え? あー、そうか。最初からそれが目的だったんだな」
「うん」
「あー、でも、三番目になるぞ?」
「別に何番目でもいいよ。とにかくお兄さんの手で私の体を気持ちよくしてほしいから」
「そうか。でも、今の他の人の前で言うなよ?」
「言わないよ。私は基本的にお兄さん以外信じてないから」
「そうか。なんか夏樹と似てるな」
「そうだね。おー、よしよし……いい子いい子」
彼女は気が済むまで僕の頭を優しく撫でていた。




