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あんたほどじゃないわよ

 私が観覧車の中で心を落ち着かせていると頭に猫耳が生えている私の友達『下北しもきた 紗良さら』が私に話しかけてきた。


「ねえ、夏樹なつきちゃん」


「何?」


「その、どうだった? 楽しかった?」


「うーん、まあまあ、かな」


「そっか。あっ! 私はすっごく楽しかったよ!! 学校では見られない夏樹なつきちゃんを見られたから!!」


「はいはい」


 彼女は数十分前に起こった悲劇を覚えていない。だけど、またあんなことがあったら私はきっとおかしくなる。だから。


夏樹なつきちゃん! また一緒に遊ぼうね!!」


「……ごめん。それ、無理」


「……え? なんで? 私、何か怒らせるようなことしちゃった?」


「あんたは悪くない」


「じゃあ、どうして?」


「私といるとあんたは不幸になる。だから」


夏樹なつきちゃん。私は今日一日、すっごく楽しかったよ。だから、そんな苦しそうな顔しないで」


「あんたは覚えてないみたいだから言うけど、あんたはさっき」


「……覚えてるよ。今まで体験した痛みの中で三番目くらいに痛かったから」


「……え?」


「ほら、私耳が四つあるから聴覚がすごいことになってるんだよ。だから、今も夏樹なつきちゃんの呼吸音とか心臓の音普通に聞こえてる。あの時、私が覚えてないフリをしたのは標的が私だってことが分かってたのと夏樹なつきちゃんの精神的ダメージを軽減するためだったんだけど、逆効果だったみたいだね」


「えっ、あっ、いや、私は別にあんたのことなんか全然心配してないわよ」


「そうかなー? 私が元通りになった時からずーっと暗い表情してたような気がするんだけど」


「そ、それはその……混乱してたから」


「え? そうなの? 嬉しいなー。それって私のこと考えてくれてたってことでしょ? うわあ、私って幸せ者だなー」


「なんでそうなるのよ。あんた、さっきので頭おかしくなったんじゃないの?」


「うーん、どうだろう。でも、そうかもしれないねー。あっ、そろそろ頂上だよ!!」


「え? あー、そうね」


「うわあ、きれいな夕日ー」


「……あんたほどじゃないわよ」


 あれ? 私、今なんて言った?


「え!? ご、ごめん! 今のもう一回言って!! 録音するから!!」


「絶対イヤ!!」


 その直後、シャッター音が鳴り響く。


「おい、なぜ今撮った?」


「いやあ、結構いい表情だったからつい」


「カッチーン。もう怒った。めちゃくちゃにしてやる」


「え? あっ! ちょっと待って!! まだ心の準備が!!」


「そんなの知るか! これでもくらえ!!」


「あははははは! 髪で脇の下くすぐるのやめてー! 笑い死ぬから!!」


「さてと、お兄ちゃんの写真でも見て心を落ち着かせるか」


「ちょ、ちょっと! 私の話、ちゃんと聞いてよー!!」

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