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霧と迷いと握手

 朝、私が目が覚ますと霧しかない空間にいた。


「え? ちょ、何これ。ここ、どこなの?」


「おっ、起きたか。おはよう」


「あー、おはよう……じゃなくて! ここはいったいどこなのよ!!」


「さて、どこだろうな。前にこんな感じの森に呼ばれたことあるけど、今回は違うみたいだな」


「あっ、そう。それで? これからどうするの?」


「うーん、そうだなー。自力で出口を探すか助けが来るのを待つくらいしかやることがないな」


「でしょうね……って、こんなところに助けなんて来るの?」


「多分来るよ。あっ、来た」


 彼がそう言うと壁をぶち破るように彼の妹がやってきた。


「お兄ちゃん! 大丈夫!?」


「ああ、大丈夫だよ。ところで今何時だ?」


「大丈夫。まだ七時だよ」


「そうか。それなら間に合いそうだな」


「ねえ、お兄ちゃん。いつになったらうちに帰るの?」


「うーん、そうだなー。彼女が幸せになれる時までかなー」


「そっか! じゃあ、もう帰れるね!!」


「いや、まだだ。仕上げが残ってるから」


「そっか。分かった! なるべく早く終わらせてね!!」


「ああ、そうするよ」


「よろしい。じゃあ、私先に学校行ってるから!」


「おう、気をつけて行けよ」


「はーい!!」


 彼女はそう言うと彼女がこじ開けた黒い穴の中に入り、元の世界へと帰っていった。


「おーい、大丈夫かー? 一人で立てそうかー?」


「え? あ、あー、うん、大丈夫よ。よっと……」


「おっ、いつも君の周囲にいる死霊たちがいなくなってるね。うんうん、もう大丈夫そうだ」


「大丈夫って何が?」


「やつらの仕事は君を守ることだからね。君を守る必要がなくなったからいなくなったんだよ。おめでとう、これで君は一人で生きていけるよ」


「残念だけど、それは無理よ」


「え?」


「私、気づいたの。あんたと一緒にいると多幸感を味わえるってことに。だから……」


「なるほど。ということは、これからも仲良くしてほしいってことでいいのかな?」


「え? ええ、まあ、そうよ」


「そっか。じゃあ、これからもよろしくな。菅原すがわらさん」


 彼が私に手を差し出す。


「ええ、こちらこそよろしく。雅人まさと


 私が彼の手を握ると私と雅人まさとの周囲から霧が消え、いつのまにか私の自室にいた。


「なるほど。この霧は君の心だったんだね。迷いが晴れたから霧も晴れたってところかな」


「え? そうなの?」


「さぁね」


「さぁねって、あんたねー」


「さぁ! なる早で身支度をしよう! 時間は待ってくれないからね」


「はぁ……そうね、そうしましょう」


 まったく、こいつって本当底が見えないわね。

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