埋め合わせ
僕は今、彼女の部屋の外にいる。座敷童子の童子に今日彼女の家に泊まることと僕のパジャマを持ってきてくれてありがとうと言うためだ。
「おーい、童子ー。いるかー?」
「はい、ここに」
「いつも思うが、お前どこにでもいるよな」
「私は雅人さんのお世話係ですから」
「おー、そうか。えーっと、僕のパジャマ持ってきてくれてありがとう。助かったよ」
「どういたしまして」
「あー、それから、いろいろあって今日ここに泊まることになったからみんなにそのことを伝えてくれ」
「分かりました。まあ、それを聞いた瞬間、殺意を剥き出しにしそうな人が一人いますが」
「……夏樹か。うーん、でも、どうにもならないんだよなー」
「でしょうね。まあ、この埋め合わせは後日するということで」
「だなー。あっ、全身マッサージでもしてやろうかなー」
「いいと思います。あと私にもしてほしいです」
「ん? お前は疲労なんて文字の力でいつでも消せるだろ?」
「雅人さん、私はあなたに全身マッサージをしてほしいのです。正直、それで疲労が消えなくてもいいんです。あなたに私の体を誠心誠意時間をかけてほぐしてほしいんです。それだけで私は確実に幸せになれます」
「そうか。分かった。えーっと、夏樹のあとでもいいかな?」
「はい」
「変なところ触るかもしれないけど、それでもいいか?」
「はい。というか、むしろ触ってほしいです」
「お前な……。まあ、いいや。それじゃあ、おやすみ」
「はい、おやすみなさい」
彼女はそう言うと一瞬でその場からいなくなった。さてと、寝るか。




