表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1013/1940

死にたいは生きたいで楽しくないは辛いだ

 次の日、僕と夏樹なつき(僕の実の妹)が横断歩道の前で信号待ちしていると僕のとなりにうちの高校の制服を着た女子生徒がやってきた。彼女は下を向いたまま何やらぶつぶつつぶやいている。その時の僕は彼女のことを何も知らなかったため、そういう人なんだと思っていた。けれど、彼女が何かの指示に従うかのように車道に飛び出した時、明らかにおかしいということが分かったため、僕は彼女を歩道まで引っ張った。


「おい、お前今死のうとしたろ?」


「……で」


「え?」


「なんで邪魔したのよ!!」


 彼女が怒鳴ると夏樹なつきが半分キレた。


「おい、お前……今すぐ串刺しにされたいか?」


「な、何よ! 小学生はとっとと小学校行きなさいよ!!」


「私は一応、高校生なんだがなー」


夏樹なつき、あまり刺激するな。おびえてるから」


「はーい!」


「だ、誰が怯えてなんか!!」


「君、名前は?」


「あ、あんたなんかに教えたくない!!」


「そうか。じゃあ、これから一緒に保健室に行こうか」


「は? ちょ、勝手に決めないでよ!!」


「そうでもしないとまた死のうとするだろ」


「うっ! そ、それは……」


 信号がタイミングよく青に変わる。これはそうしろってことなのかな?


「何してる? 早く来い。まあ、現状を打破したくないのなら無視してもいいが」


「わ、分かったわよ。ついていくわよ」


 彼女には見えていないようだが、彼女の背後には死霊がたくさんいる。今すぐ消すことはできるが、彼女自身が変わらなければまた死霊が寄ってくるだろうからなるべく早く彼女を救済する必要がある。


 *


 保健室……。


童子わらこ、いるか?」


「はい、ここに」


「うわっ! な、何? 小学生?」


「小学生ではありません。座敷童子です」


童子わらこ、放課後までこの子が逃げ出さないように見張っててくれ」


「分かりました」


「ちょ! 何勝手に決めてるのよ!!」


「君は今、楽しいか?」


「え?」


「死にたいは生きたいで楽しくないは辛いだ」


「ちょ、ちょっとあんた何言ってるの?」


「深く考えなくていい。とりあえず今日は休め。放課後になったらまた来るからそれまでおとなしくしてるんだぞ」


「は? ちょ! 待ちなさいよ!! あんた、いったい何なのよー!!」


 雅人まさとさんはお人好しですね。こんな小娘一人死んだところで誰も悲しまないのに。


「麦茶、緑茶、紅茶、コーヒー……色々ありますけど、何がいいですか?」


「いらない! というか、私もう帰る!!」


 彼女が保健室のドアを開けようとすると見えない壁にぶつかった。


「ちょ、ちょっと! 何なのよ! これ!!」


「結界です」


「は? 結界?」


「はい、そうです。ちなみにあなた以外は自由に出入りできます」


「はぁ……あっ、そう」


 彼女はベッドに横になると数分で眠りについた。まったく、嫁入り前の大事な体だというのにどうして自分の体をいたわれないんですかね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ