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あまおう

 今を楽しめ……か。

 彼は家を出る前に座敷童子に言われたことを頭の中で何度も再生していた。

 でもなー、具体的に何をすればいいのか分からないんだよなー。

 彼がそんなことを考えていると、後ろから誰かに背中を叩かれた。


雅人まさとー! おはよー!」


「ちょ、お前な……挨拶あいさつ代わりに人の背中を叩くなよ」


百々目鬼(とどめき) 羅々(らら)』は彼の幼馴染である。


「ごめん、ごめん。それで? 何考えてたの?」


「別に何でもないよ」


 彼がはぐらかすと、彼女は彼のことをじっと見つめながら、歩き始めた。


「……もしかして夏樹なつきちゃん絡み?」


「どうしてそこで妹の名前が出てくるんだよ」


 勘のいいやつだな。


「え? 違うの?」


「いや、まあ、夏樹なつき絡みじゃないとは言い切れないな」


 彼女はじっと彼のことを見つめている。


「さっきから何なんだよ。僕の顔に何か付いてるのか?」


「ううん、別に何もないよ。けど、いつもより元気ないなーって思っただけだよ」


 そう……なのか?


「別に体調は悪くないよ」


「でも、心の体調は悪いよね?」


 うまいこと言ったつもりか?


「まあ、そうだな」


「じゃあ、私が解決してあげるよ!」


 余計なお世話だ。


「いや、いいよ。僕はそこまで思い悩んでないから」


「甘い! 甘いよ! 雅人まさと! 今朝けさ食べた『あまおう』より甘いよ!」


 朝から豪華な物食べてるんだな。


「よし! 決めた! 今日は部員全員で雅人まさとの悩みを解決しよう!!」


「ちょ、勝手に決めるなよ。僕はそこまで思い悩んでないって言っただろ?」


 というか、登校中に大声を出すなよ。

 恥ずかしい。


「今の雅人まさとはいつもの雅人まさとじゃないから、イヤなの!」


「そうか。じゃあ、くが、いつもの僕と今の僕はどう違うんだ?」


 ちょっと意地悪な質問だったかな?


「明らかにいつもより覇気はきがないよ! オーラというか、雰囲気ふんいきというか、うまく説明できないけど、とにかく今のままじゃダメだよ!」


「強引に答えを出さなくてもいいのに。はぁ……もう好きにしてくれ」


 あっ、しまった。


「ん? それって、悩みを打ち明けてくれるって意味だよね? ねえ?」


「う、うるさいな……。いちいち声に出すなよ」


 こいつといると、調子狂うな。


「もうー、素直じゃないなー。うりうりー」


「あ、頭を撫でるな! 僕は子どもじゃない!」


 まあ、まだ未成年なんだけど。


「えー? そうかなー? 雅人まさとは、まだまだ子どもだと思うけどなー」


「なんだとー!」


 彼が彼女をつかまえようとすると、彼女はニコニコ笑いながら、走り始めた。


「あははははは! ここまでおいでー」


「待て! こらー!」


 心配になって様子を見に来ましたが、どうやら私の出番はないようですね。

 ちゃんと青春してるじゃないですか。それでいいんですよ、今はまだ……。

 電柱の先端に乗っていた座敷童子は彼が学校に到着する前に姿を消した。

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