水をたくさん用意しておくと恋愛運がアップするよ
次の日の朝、人間をお菓子にしてしまうお菓子がたくさん降ってきた。これによりレイナ(白髪ロングの幼女だが宇宙人である)の予言が見事的中したことになるわけだが、できれば夢であってほしいと僕は思った。
「お兄さん、そこのソファに座って」
リビングにある窓からお菓子の雨を見ていた僕にレイナはそう言った。
「え? あー、分かった」
今日、学校あるのかなー? 僕がそんなことを考えながらソファに座るとレイナは僕と向かい合うように僕の膝の上に座り、僕の両頬に手を添えた。
「ちょ! ちょっと! 私のお兄ちゃんに何する気!!」
夏樹(僕の実の妹)がレイナに殺意を向けながらそんなことを言うとレイナは怯まず夏樹にこう言った。
「安心して。お兄さんの潜在能力を一時的に解放するだけだから」
「え? そうなの? てっきり私の目の前でベロチューするのかと思った」
「私にその気はあったけど、お兄さんの顔見たら今はその時じゃないなーって思ったからやめた」
ええ……その気あったのかよ……。
「ふーん、そうなんだ。お兄ちゃん! 私、これから歯磨きしに行ってくるけど、レイナちゃんに襲われないようにしてね」
「あ、ああ、分かった」
夏樹がリビングから出ていくとレイナは僕の耳元でこう囁いた。
「ねえ、お兄さんはどんな女の子が好きなの?」
「その質問、今答えないとダメか?」
「言ったでしょ。これからお兄さんの潜在能力を一時的に解放するって。これはそれを実行するのに必要なプロセスだから、今答えないと人類滅亡しちゃうよ」
「耳元で恐ろしいこと言うな! うーん、そうだなー。お互いのことを知り尽くしても僕と一生一緒にいてくれそうな子だったら誰でもいいなー」
「はぁ……お兄さんは欲がないね」
「そうか? あんまり欲張るとハードルがどんどん上がって婚期逃すと思うぞ」
「あっ、うん、そうだね。じゃあ、今欲しいものはない?」
「うーん、そうだなー。あっ、洗濯用洗剤の詰め替え用のストックとトイレットペーパーのストックがなかったような気がするからこの一件が片付いたら買いに行かないといけないなー」
あー、そういえば、お兄さんは学生兼主夫だったなー。
「はぁ……どうしてお兄さんは草食系なの? お兄さんの周りにはかわいい女の子いっぱいいるよね?」
「なんでそこで女の子の話になるんだよ。まあ、別にいいけど。うーん、そうだなー。多分、誰かを選んだら誰かが悲しんじゃうのが分かってるから僕は誰とも恋をしようとしないんだと思うよ」
「なるほど。お兄さんは誰も選ばないことを選んだんだね」
「まあ、今のところはそうだな。でも、これからどうなるのかは誰にも分からないから今後どうなるのかは神のみぞ知るってところだな」
「ふーん、そうなんだ。まあ、そうだね。よし、じゃあ、潜在能力を一時的に解放するね」
「え? あんな適当な答えでいいのか?」
「私が聞きたかったのは今のお兄さんの答えだから正直内容はどうでもいいんだよ」
「そうなのか?」
「うん、そうだよ。あっ、一応これだけは言っておくね。お兄さんはこれからもすっごく苦労するけど素敵な出会いが待ってるから頑張って長生きしないといけないよ」
「そうかー。まあ、そうだよなー。でも、今のを聞いたおかげで長生きしたくなったよ」
「そっか。なら、良かった。じゃあ、少しの間、人類滅亡を食い止める希望になってもらおうかなー」
「うわあ、責任重大だなー。というか、そんな大役、僕がやっていいのか?」
「これは完璧な管理者になったお兄さんにしかできないことだよ。だから、助けを求めている人たちに手を差し伸べてあげて」
彼女は自分の額を僕の額に押し当てると僕の潜在能力を一時的に解放した。
「……分かった。それじゃあ、ちょっと人類救ってくる」
「いってらっしゃい。必ずここに帰ってきてね」
「ああ! もちろんだ!! それじゃあ、いってくる!!」
お兄さんが希望の光になって家から出ていくとお兄さんの妹がリビングに戻ってきた。
「……お兄ちゃん、なるべく早く帰って来てね」
「お兄さんのこと心配?」
「大丈夫。今のお兄ちゃんは今までで一番安定してるから」
「兄妹ってそういうの分かるの?」
「さぁ? どうなんだろう。でも、私とお兄ちゃんは結構そういうの分かる方だと思うよ」
「そう。教えてくれてありがとう。お礼に一ついいこと教えてあげる」
「いいこと?」
「水をたくさん用意しておくと恋愛運がアップするよ」
「分かった! ありがとう! レイナちゃん!!」
お兄さんは今頃、お菓子の妖精と会話してるのかな? まあ、もうとっくに解決してそうだけど。




