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闇の女王

 暗い……。僕、死んだのかな?


「……何しに来たの?」


 僕の目の前に白いもやのようなものが現れる。それは髪の長い女の子のような形をしている。


「あー、ちょっと待って。今思い出すから。あっ! 思い出した! 僕は人間の闇を完全に受け入れるためにレイナが言っていた『あの子』と握手しに来たんだ!!」


「そっか。でも、それをすると完全に人じゃなくなっちゃうよ」


「え? そうなのか?」


「……うん。でも、あなたならきっと大丈夫。人見知りの私と普通に会話できてるってことは資格があるってことだと思うから」


「そう、なのかな?」


「そうだよ。ほら、早く握手しよう。あー、あと、ハグしよう」


「え、えーっと、ハグはしなくてもいいんじゃないかなー」


「ハグしてくれないの?」


 彼女の表情は分からないが、なんとなくつぶらな瞳でこちらを見ているような気がした。


「あー! もうー! 分かったよ! ハグするよ! だから、僕と握手してくれ!!」


「うん、いいよ。じゃあ、手出して」


「あ、ああ、分かった」


 僕が彼女の手を握ると地面から人間の闇でできている腕が生えた。その後、それは手を使って僕の両足首をつかんだ。


「な、なんだ!? は、離せ! 僕をどうするつもりだ!!」


「大丈夫。それは私の体の一部だから、あなたにひどいことはしないよ。それじゃあ、ハグしよっか」


「ま、待て! お前はいったい何者なんだ?」


「うーんと、今からあなたの魂と合体する闇の女王、だよ♪」


「や、闇の女王だって!? やめろ! 僕はお前と一つになんかなりたくない!!」


「大丈夫、痛くしないから。ほら、おいで」


 彼女がそう言うと僕の背後から人間の闇でできている腕が出てきて、手を使って僕の背中をグイグイ押した。


「や、やめろ! 僕の膝を地面につけようとするな!!」


 僕は必死に抵抗したが数秒で僕は地面に両膝をつけてしまった。


「ありがとう、みんな。それじゃあ、ハグしようか」


「い、いやだ……僕はお前となんかハグしたくない」


「あー、イライラする。ねえ、あなたの精神破壊してもいい?」


「そ、それはダメだ!」


「じゃあ、早く私を受け入れて。はい、三秒前。三、二、一」


「わ、分かりました! お願いですから早く終わらせてください!!」


「よろしい。それじゃあ、始めるよ。ムギュー!!」


「あっ! あっ!! ああ……!!」


 彼女とハグをした瞬間、人間の闇と人間の闇に関する情報と彼女自身と彼女に関する情報が僕の中に侵入し始めた。それは僕が拒絶しても虫歯菌のように僕を侵食していく。


「よいしょ……っと。お疲れ様、もう終わったよ。あれ? おーい、大丈夫ー? ちゃんと生きてるー?」


 体内から聞こえる彼女の声が僕を無理やり目覚めさせる。


「……はぁ……はぁ……はぁ……こ、こんな体験、二度としたくないな」


「私があなたの体から出れば何度でもできるよ」


「……いや、普通に心と体がぶっ壊れるので勘弁してください」


「冗談だよ。ほら、早く行こう。助けたい人がいるんでしょ?」


「はい、そうです」


「敬語やめて。私とあなたはバディなんだから」


「分かった。じゃあ、行こうか」


「うん!!」


 はぁ……僕はついに人間ではない何かになってしまったんだな。

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