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ドラゴンとフェアリー  作者: 真木
3 黄金と氷の花の章
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5 すれちがい

 セツとレナは手分けして、アンシエントドラゴン・バレー中の古代竜の家を回った。

 若い古代竜は、ゴールデン・ストリームと谷の外のドラゴンの来訪を喜んでいた。ドラゴンたちが集会場に集まると聞くと、すぐに自分も向かうと答える。

 けれど老いた古代竜たちは、家を離れない者もいた。

「最期までここで過ごすよ」

 古代竜たちの家は既にゴールデン・ストリームで壊れ始めているところもあったが、彼らは動こうとはしなかった。

「心配してくれてありがとう。でもね、アニマに逆らいたくはないんだ」

 ドラゴンは年老いても、外見は四十歳前後までしか年を取らない。それでも彼らは、セツには与り知らないほどの永い時を生きている。

「光でも影でも、私にとっては愛すべきアニマだ。アニマが望むなら、私はその中に還りたいと思う」

 最近伴侶を亡くしたという古代竜は、ほほえんでセツに諭した。

 セツは唇を噛んで、老いた古代竜の家を去るしかなかった。

 谷の斜面には亀裂が走り、ゴールデン・ストリームが噴き上げる。アニマはそこに家があってもドラゴンがいても、思いのままに氾濫していた。

「ここから下の古代竜たちには、ラグランと手分けして声をかけました」

 半分ほど回ったところで、オーブに会った。

「セツはそうするだろうと思って」

 オーブはふいに真顔になる。

「アニマの影と戦うつもりですか?」

 セツがうなずくと、オーブは困ったように口を歪めた。

「とても危険なことだとわかっていますか?」

「うん」

「セツらしいです」

 セツの頭をなでて、オーブはほほえむ。

「あなたのアニマを祝福していますよ」

 体を離して、オーブはおどける。

「レナさん。睨まないでください」

 セツが振り向くと、レナがすぐ近くまで来ていた。ぐいと少し乱暴にセツの手を引いて、斜面を下っていく。

「レナ?」

「……あなたは年上の、優しいドラゴンが好きなのね」

 不機嫌な声を聞いて、セツは考えながら答える。

「それは、その、子どもの頃からシーリンしか身の回りにいなかったから」

 セツが言葉に詰まると、レナは顔を背ける。

「どうしたって比べるでしょう。私とシーリンを」

「レナはレナだよ!」

 セツは湧き上がる気持ちのまま声を荒らげて、レナに言い返していた。

「馬鹿にするな! 僕はそんなこともわからない子どもじゃない!」

 レナが怯んだとき、セツの足元が揺れた。

 あ、と短く声をこぼす。セツの真下に亀裂が走って、そこから七色の光が見えた。

「セツ!」

 レナが手を伸ばす。その手を掴もうとして、セツは体の下で脈動する流れを感じた。

 アニマが呼んでいる。

 その声に耳を傾けたとき、思わずレナの手を掴み損ねた。

 頼りない浮遊感は一瞬。すぐにセツを眩しいばかりの光が取り巻いて、後は滝に落ちていくように大きな流れに取り込まれていった。


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