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ぼくだけの、

作者: 柊 氷雨

午前二時二十六分。夜明け前の月を独り占めしたくて外に出る。

消灯してそんなに時間がたっていない今。それでもこの檻の中で蠢いているのは僕ぐらいだった。

「ピピッ退室してください」

記憶にある昼間と同じ無機質な声で二つしか言葉を知らない機械に見送られる。

ひゅおんと声を上げる外界に、適当に羽織ったパーカーを閉めて隠しに両手を突っ込んだ。

数日ぶりに見る、外だった。


草木も眠る丑三つ時、なんていっても眠っているのは人間で。

僕だって眠くないわけじゃない。

音を待ち望んで息を潜めている世界に言い訳するような思考。

「おはよう、世界。久しぶり」

なんて、柄じゃない。僕と意識たちだけの孤立した世界は存外音を拾う。

まだ冷えたままの指先で両頬を冷ましながら、緩く首を振った。

そこらじゅうと意識が合ったような、覗き込まれているような座りの悪い沈黙から足早に逃げ出す。

ぬるくなった指をまた隠しに入れて、どこに行こうか。


眠くなるまでなんて言わない。

眠くなって僕が目を閉じるまで、夜明け前の月は僕だけのものだ。

朝の消える前の月だって、きっと僕が独り占めできる。

いつも特別なのに、僕を見てくれないお月さまはこの瞬間だけは堕ちてきて僕だけを見つめてくれるんだ。

暁の空にお月さまは昇ってしまった。

ぼくを見下ろして、きっとぼくらだけの夜を嘲笑っている。

お月さまはすぐに変わってしまうから、夜は昼を、昼は夜を笑っているんだ。

「何を言ったって、君はこっちへ来られないだろう?」って。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 夜に何か、詩人じみた気分になったのか、そういう台詞を口にしする年頃なのか。 [気になる点] 物語なのかエッセイなのか判断に迷った。 [一言] 主人公の自意識と内面が強く押し出されている。
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