第8話 金髪ツインテールはツンデレ確定では無いらしいですよ
あのオオムカデに襲われてから一週間が過ぎた。
俺はずっとバイトをしていて、リリスは引きこもりと化していた。
〜部屋〜
「なぁ、リリス」
俺は、疲れ切っていた。このときは、すでに冒険者の仕事を全くしていなかった。
「何?」
「俺たちってさ、今何してるんだろな」
「……」
これからどうすればいいんだ。
なんか、一攫千金できることとかないかな。
大きい家とか手に入れて、自堕落な生活を送りたいな。
「そういえば、魔王軍っていないの?」
「もちろんいるよ?」
「幹部とか倒せたりしないかな」
魔王軍があるなら幹部がいるのでは、と思った。
どうせ賞金がかかっているのだろう。
「魔王軍は、私たち人間と停戦条約を結んだから、今は戦ってないよ」
「……は?」
停戦?
ーーおかしいだろ。
異世界ってのは普通、魔王を倒してハッピーエンドだろ?
いつか、こっちから殴り込んでやる。
「…新しい仲間欲しいな」
「…っ!私がいるじゃない……」
俺の呟きにリリスが反応した。
声は、小さかったが俺は鈍感系主人公ではないので一言一句聞き逃さなかった。
「ん?なんだ、嫉妬か?俺がお前と離れると思ってるのか?」
リリスは、少し顔を赤くしながら下を向いていた。
「大丈夫だよ。俺はどこにもいかないからな」
「……それで、仲間が欲しいの?」
「そうなんだよ!クエストが失敗するのは、二人しかいないから……」
ん?ちょっと待て。何かおかしい。
「お前さ、クエスト何回受けた?」
「…………」
やっぱりおかしいと思ったんだ。
聞いた話だとオオムガテは、初心者向けのモンスターらしい。
俺でも無理だったのに、クソステータスの魔法使いが倒せるわけがない。
「やっぱり仲間がひつようだ。誰かに頼んでみるか」
どこかに暇そうなやついないかなぁ。
「仲間募集の紙貼る?」
「なんでそれを早く言わねぇんだ。早く行くぞ!」
俺たちは、ギルドへと向かった。
俺が仲間が欲しい理由は、モンスターが倒せないという理由だけではない。
俺は、金を恵んでもらおうと企んでいた。
最悪だと思われてもいい。
俺は、早く安定した生活を送りたい。
俺は、募集の紙を書き終わった。
前衛職募集しています。
日常的にも仲良くできる楽しい人、いっしょに冒険しませんか?
パーティー構成
魔法剣士:男
魔法使い:女
歳10代
気軽に話しかけてください。
「こんなとこか」
詳しい話は、興味を持った人に話せばいいだろう。
誰か来てくれるだろうか。
俺たちは、ギルドの端の席に座った。
掲示板には定期的に人が来ては、気に入ったパーティーが無かったのか、ギルドを出て行った。
長くなりそうだと思った俺は、ギルド内にある、日本で言うファストフードのようなものが売っている店で唐揚げを買った。
「お前も食うか?」
リリスは、美味しそうに食べ始めた。
肉の中からは、肉汁が出ていてジューシーでうまかった。
「すいません」
不意に後ろから声が聞こえた。
後ろを見ると、容姿が幼い金髪ツインテールの女の子が立っていた。
体格に似合わず背中には、大剣を担いでいた。
「あの……パーティーに入れてください!」
彼女は、もじもじしながら言った。
金髪ツインテールってツンデレが普通じゃね?すっげぇおどおどしているな。
「あの……聞いていますか?掲示板をみてきたんですけど」
パーティー募集の紙を見てきたらしい。見た目が弱そうだから、他の冒険者に相手にされなかったのかもしれない。
ーーでも、可愛いから弱くても許されそうな気もするが……。
「とりあえず自己紹介と臨時パーティーを組もうぜ」
俺の提案に、二人は同意した。
人に名前を名乗るのは、恥ずかしいが仕方がない。
「まず、俺の名前は斎藤 明日香。職業は、魔法剣士だ」
「私は、アマリリス。魔法使いよ」
リリスも自己紹介を終えた。
「そうだ、こいつ筋肉馬鹿なんだぜ?魔法適正クソなのに魔法使いになるアホだよ、役立たずだよ」
「ちょっと!そんなことないでしょ」
まぁ、反抗するよな。
リリスと喋っているときは、気が楽で良い。
引きこもりで、女の人とろくに話してこなかった俺としては、大切だ。
役立たずなのには、変わらないが。
「えっと……私は、…リューナ…です。職業は、戦士です」
戦士って、リリスに適性があった職業じゃないか。
筋力高いのかな。
「かっこいい名前だな。俺と交換して欲しいよ」
「ほんとね、明日香とは大違いだね」
「っ!ほっとけ!手頃なクエスト受けるぞ」
俺は、瞬時に話題をそらした。我ながら鮮やかだ。
俺が迷っていると、リリスが一枚の紙を取った。
「これにしようよ」
俺は、内容を見た。
『オオムカデ一頭の討伐』
「受付してくるねー」
「えっ、あ……ちょ待てよ!」
オオムカデはダメだ。今やトラウマになっている。
リリスが受付を終えた。
「おい!リリス。故意だろ!」
「え、何のこと?私分からな〜い」
こいつ、いつか仕返ししてやる。
「さあ、レッツゴー」
リリスの掛け声で歩き出した。
「俺は、クエストに参加しないからな」
「別に良いよ?二人になったからね」
お前も震えろ。オオムカデの恐ろしさをなめんなよ。
「いたよ」
リリスが見つけたらしい。
出来るだけ見たくはないが、いざという時に二人を助けられるようにしよう。
「さて、まずは私がやろうかな」
リリスは、杖を持って立ち上がった。まだ杖を使っていたのか。
「私の力、見せてあげるわ」
リリスは、自信満々に言った。
リリスは、杖を両手で掲げた。
魔法適正1の力を見せてくれるらしい。
《火よ》
杖の先端には、ろうそくの火ぐらいのものがでた。
《極炎の獅子となりて》
ろ火が、大きいみかんぐらいになった。
火が詠唱通りに獅子に……、猫みたいだ。
おそらく火が獅子の形になるのだろうけれど、魔法適正が低いせいで猫ができた。
《焼き尽くせ》
ね…獅子がオオムカデへと走っていった。
そして、オオムカデに当たる寸前に火が消えた。
さすが魔法適正1だ。
「おかしい……。こんなの私の本気じゃない!」
再び杖を掲げた。
《氷よ》
製氷皿で作れる大きさの氷が出来た。足が冷気でひんやりして、気持ちいい。
《獄氷の狼となりて》
氷がスイカぐらになった。
氷の形が変わっていき、狼…ではない、犬になった。
《氷と化せ》
氷の狼がオオムカデへと走っていった。獅子とは違い、オオムカデに当たったが体をぶるっと震わせて、歩いていった。
「私の力?これが本気なの?」
俺がリリスを煽ると、殴りかかって来た。
「では、私が行きます!」
リューナが勇ましく言った。
さっきまでとは、明らかに様子が違う。まず、おどおどしていない。
リューナが剣を抜いた。
金属が擦れる音がする。
やばい!かっこいい。
「なあ、リューナ。このクエストが終わったら正式なパーティーにならないか?」
「本当ですか?」
「もちろん!」
なんかいいな。こういうやりとり。
「ここで、私の力を証明します!」
リューナが構えると剣から虹色の光が溢れて来た。
これ、すごい能力なんじゃ……。
オオムカデがリューナの存在に気づいた。
そんなの関係ない、とでも言うようにリューナが走り出した。
「やあああああ!」
掛け声と共にオオムカデに向かって剣を振った。
「ドッカァァァァン」
剣で斬ったときにでる音とは思えない。
土煙が晴れていくと、目の前にはオオムカデの牙と剣がぶつかっていた。
「……は?」
すごい音したよな。
あんな音がしたら、オオムカデぐらい倒せているよな。
よく見ると、たくさんの木が倒れていて、地面に何か斬ったような跡があった。
リューナは、オオムカデの尻尾の薙ぎ払いで吹っ飛んで来た。
これは、やばい。
「に…逃げろおおおお」
俺たちは、また全力で走った。
無事にギルドへと戻ることができた。
そして、気になっていたことを話し始めた。
「お前の能力ってなんだ?」
「……」
リューナは、答えたくないらしい。
「パーティーを組むなら、仲間の力を知っておいた方が良いと思うんだが」
「……」
俺は、最後の警告をした。
「このままじゃパーティーお前と組めないなあ」
「私の能力は、命中率が極限まで下がる代わりに、破壊力が増す能力です」
「……さようなら」
「待ってよー!火力大事でしょ?ロマンがあるでしょ?みんなそうなんだよ。私の能力を知ったら、何かと理由を付けてどっかに行っちゃうんだよ」
そりゃあ、そうだ。
いくら可愛いからって、こんな地雷女とパーティーを組む物好きなんていないだろう。
「能力使わなければ良いんじゃないのか?」
「……嫌です。あの破壊力を知ったら、もう普通のものじゃ満足できない体になっちゃったの!」
「卑猥!もうちょっと抑えて。キャラ崩壊しているよ!」
「あっ、そうですか」
おどおどはどこに消えた。
リリスといい、リューナといい、異世界人、裏の性格極端すぎ。
「私をパーティーに入れないと、変な噂流すよ」
「た…例えば」
「あなたが森の中で、私とリリスさんをレイ…」
「分かった!分かったから、もう喋んないで!」
「入れてくれるんですか?」
「ああ、そうだよ」
「やったー!……あ…ありがとう……ございます」
怖っ。異世界人やばいな。演技だったのか。
「それじゃアスカ、リリスさんよろしくね」
「リリスで良いよー」
「うん、分かった」
仲間が増えたことは、良かったがこいつも役に立たないのでは。
これからどうなることやら。




