第7話 虫ってなんであんなに気持ち悪いんだろうね
「」」「はぁ、俺の100万円が」
あのドワーフに追い出された後、俺たちは、宿で作戦会議をしていた。
「君が普通にやっていれば、今頃少しでも金が手にはいっていたのになぁ」
何も言えない。
もう、どうすればいいんだ?
「とりあえず寝ようぜ!疲れているだろ?」
「いや?全く」
俺の気遣いを素直に受け取れよ。
「冗談抜きでどうしようか」
俺たちは、あたまを抱えた。
「はぁ、チート能力を持っていれば、今頃魔王を倒して世界救っていたのに…」
ほんと、なんでこんなクソ能力に決めたんだろう。
俺の能力は、今でも最初の頃と何も変わっていなかった。
「日本に返してよおおおおお‼︎」
俺は、理不尽すぎるこの状況に怒り、思いっきり叫んだ。
「うるせえええっ!」
「すいません」
俺の叫び声に隣の冒険者が怒鳴った。
「……寝るか」
「……うん」
俺たちは、何も決まらずに寝た。
〜翌日〜
「明日香ー!」
また来た。どうせクエストでも持ってきたんだろうな。
「クエストは受けないよ?」
「何言ってんの?」
「それよりも、あんた今日バイトでしょ?」
「……やばっ!それを早く言えよ!怒られるじゃねえか
」
あの人怖いんだよなぁ。時間にうるさくて、少し遅れただけでキレるからな。まあ基本的に優しいがな。
俺は、いつも通りバイトへ行った。
その日は珍しく、昼で終わった。
俺は、一旦部屋に行って休憩をした。
「ギルドにでも行くか」
ーー久しぶりだなあ。
俺は、ドワーフのクエストも全てリリスに任せていた。
「あっ!明日香さん、お久しぶりです」
ギルドの受付嬢だ。
名前を聞いていなかったことを思い出した。
「名前なんて言うんですか?」
「そういえば、言っていませんでしたね。私は、リオネ・アリアナです。好きに呼んでください」
ーーリオネ?リオネって女神の……?
「ちょっとすいません。リリスいませんか?」
俺は、いままでで最大の疑問をはやく解決したかった。
「リリスさんなら、あそこにすわってますよ?」す
アリアナの指さす方向には、顔を伏せたリリスがいた。
「おい、リリス」
「ん〜?明日香か、何?」
こいつは、あの人の名前を知っているのだろうか。
「あの、受付の人の名前にリオネって、ついているんだがどういうことだ?」
まさか、あの人がリオネっていう女神じゃないよな。
「この世界には、貴族がいてね、その人達の家名は、全部女神の名前になってるの。だから、あの人はリオネ本人じゃないわよ?」
「そ……そうか」
俺は、残念そうに言った。
それよりも、あの人貴族だったのか。
「ちなみに、世界でも有名な宗教は、女神を崇めるものが多いわ」
女神いろんなところに関わりすぎじゃね?
「な…なあ、俺って冒険者だよな」
「そうだね」
リリスは、興味なさそうに言った。
「でもさ…俺、まともなクエスト受けてなくね?」
俺は、いまさらながら気づいた。
冒険者になっただけで、ここから一歩も出ていないことに。冒険者らしいことをしていないことに。
「リリス、いまからモンスター倒しに行くぞ!」
「えー、やだよ〜」
「お前は何を言ってるんだ、俺たちは冒険者だぞ?モンスターを倒したり、遺跡の調査に行ったりすることが仕事だろ?」
俺は、自分が冒険者という仕事に対して思っている気持ちをぶつけた。
「でもずっとバイトしていた人が言う言葉ではないよね」
「そんなことないね、お前がもっと金をくれていればバイトなんてやらなずに済んだんだ」
「あなたが私の説明を聞いていればこんなことにならなかったんだよ?そこんところ、どう思っているのかな?」
何を行っても反論される。元俺のせいなのは分かりきっていることだ。
「まあ、良いよ。行っても」
「マジで?」
リリスは、返事も頷きもしなかったがそそ足早にカウンターへと向かった。
「どれにする?」
リリスは毎日見ていたことだが、俺は初めて見るので長い時間見ていたかった。
まあ、リリスがそれを許してくれるとは思えないが。
「これでいっか」
やはりそうだった。
「ああ、それで良いよ」
俺は、クエスト内容を見ていないので楽しみだ。
「俺、装備何もないんだけど」
「……」
「……」
「え?」
「え?」
「…え?」
「え?」
何この会話。ーー会話じゃないか。
俺は、中古の割と良さげな剣(何が良いか分からないが)、と筋力アップが付与されている青色の上着を買った。
俺は、久しぶり…じゃなくて初めて国の外に出た。
外は、一面が緑で、たくさんの小山があった。
だが不思議とモンスターは見えなかった。
「モンスターってどこにいるんだ?」
「モンスターは、森の中にいることが多いわ」
「森?」
「ええ、前まではここら辺にもたくさんいたんだけれど冒険者が狩りすぎて、怯えちゃったんだよね。最近は、モンスターが戻ってきているから困ってるんだよ」
「へぇ。で、俺たちは何を倒すんだ?」
さあ、どんなモンスターが来る。
「今回は、オオムカデを倒すわ」
ム…ムカデ……だと。
「嫌だああああ!帰るうううう」
俺には、引きこもっていたときにトラウマがあった。
部屋に本などが散乱していたとき、普通に歩いていると「ぐちゅっ」と音がしたかと思うと、ムカデを踏んでいた。
虫からは、変な汁が出ていた。
そのときから、虫を見ただけで拒絶するようになった。
「いいから行くよ〜」
そう言って、俺を引きずった。俺をよく運べるな、と思ったが筋力が高いことを思い出した。
「ピンチになったら俺の剣でモンスターを倒してくれよ?」
「女の私に倒してもらってもいいの?プライドはないの?」
「ふっ……、俺にそんなものは存在しない」
そんな、やり取りを続けていると森に着いてしまった。
「虫は、嫌なんだけど。特にムカデが」
「大丈夫だよ。何があったかは知らないけど」
「踏んだんだよ!…ムカデを踏んでしまったんだ」
もう、あのときのことは思い出したくない。
これっきりで永遠に封印だ。
「大丈夫だよ。オオムカデは、大きいから踏むことは無いよ」
「そう言うことじゃねえんだよ!見るのが嫌なの。虫なんか滅びてしまえ!」
「あっ、いた!」
「え?」
そのモンスター…いや、虫はムカデのようだが日本のものとは違い、圧倒的に気持ち悪かった。
まず、数え切れないほどの足がわしゃわしゃと動いていた。
目が何個も付いていて、一つ一つに意志があるように別々に動いている。
体が黒っぽい茶色だった。
「い…いや、マジで無理なんだけど」
「男なら、女の子をまもってみせろよっ!」
俺は、リリスに押された。
その言葉を聞いたとき、リリスのほうが筋力高いじゃん、と思ったが言わないでおいた。
そのムカデは、反対の方向を向いていた。
……今ならいけるんじゃないか。
俺は、ゆっくりと近づいた。
音を立てず剣を抜く。
急所がどこか分からないので頭を潰そうと考えた。
頭の横まで歩き始めた。
「パキッ」
足元を見ると、枝を踏んでいた。
ゆっくりと頭をを上げると、目の前には気持ち悪い頭がこっちを向いていた。
「キシャァァァァ」
「う…うわああああああ」
俺は、リリスの元へと全速力で逃げた。
後ろを振り向くと、数百本の細い足をわしゃわしゃと高速で動かして、向かってきた。
「リリスー、リリスさーん!」
あれ、いない。
「リリスー!」
どこかへ移動したかと思い、周りを見るとリリスの走っている後ろ姿が見えた。
「リリスー、どこ行くんだよ!逃げんじゃねぇ!」
「だってキモいもん。虫は嫌いだよ!」
「俺だって嫌だよ!人に押し付けんな」
俺たちは、必死に逃げながらも言い合いをしていた。
そして、国の門が見えた。
「こいつ、しつこいんだよ!」
ムカデは、今も俺たちを追いかけていた。
「助けてくれー!」
俺が大声で叫ぶと周りにいた冒険者が気づいた。
周りの人が近づいてきて、慣れた手つきで倒してくれた。
「お前らなんで要注意モンスターを討伐しようとしてたんだ?」
えっ?要注意モンスターって、マジで?
でもリリスが選んだわけだし…〜。
「なあ、リリス。知らなかったわけじゃないよな?」
リリスはずっと顔を背けていた。
「てめぇーリリス!お前のせいじゃないか」
「だってだって私だけがトラウマになっていたら不公平じゃない!」
こいつっ!
まさか、俺も同じ場面に合わせるために……。
俺たちは、また失敗した。




