第4話 女神再び
「あれ?女神様じゃないですか。どうしてここにいるんですか?」
「……。」
彼女は、ずっと下を向いていた。俺の質問には答える気配が無く、無言を貫いていた。
彼女は、ゆっくり向かってくると、俺の目の前で止まった。
「……。」
「……。」
沈黙が訪れる。
まだ親しくもないので気まずい。
親しい仲になれば、沈黙も苦じゃないらしい。
まあ、親しい仲なんて無いけどな。
「あ…あの〜女神様?」
彼女は、涙目になっていく。
「ひっく…ひっく…」
そろそろ…来る!
「ふえええええええん」
彼女は。大声で泣きだした。
周りの視線が痛い。
「あ…あの〜どうしたんですか?」
俺が声をかけるとゆっくり顔を上げ。
「ひっく…ひっくひっく…ひっくひっくひっく」
分からん!
きっと何か言いたいんだと思うが謎すぎる。
「あーはいはい」
俺は、棒読みで返事をした。
「とりあえず、ギルドの椅子に座りませんか?」
彼女は、ゆっくりと頷いた。
俺は怪我もしていない、ただ泣いているだけの女神に肩を貸している。
こんな状況なかなか経験できないだろう。
俺は椅子に座って、泣き止むのを待っ
た。
彼女は、だんだんと落ち着いてきたらしい。椅子に座った後すぐに泣き止んだ。
そして、顔が赤くなっていた。
「明日香さん。私の話聞いてくれませんか?」
「いいですよ?それで何があったんですか?」
やっと状況が分かる。
女神様ってこんな人だったっけ?
もっとおしとやかで綺麗だと思っていたのに。
「私はねぇ、やらかしてしまったんですよ。」
彼女は、少し声を震わせながら言った。
「あなたの転生が終わって、少し経った後でもう一人が来たんですよ!それで、いつも通り仕事をしていたんですが、その人は、生まれ変わりたかったらしいんです‼︎」
なんかだんだんと声が大きくなって涙をぼろぼろ流していた。
「ちょっと落ち着いてください!また泣いてもらったら困りますって!はいっ深呼吸吸ってー、吐いてーー」
どうやら落ち着いたらしい。
ゆっくりと口を動かし始めた。
「それで、私が手違いでで地獄に送ってしまったんですよ!そのせいで……そのせいで私はっ!私はっ!女神じゃ無くなったんだよっ‼︎」
彼女は、泣きを通り越して怒り始めた。
「あいつが……あいつさえ来なければっ!私はこんなところに来ることがなかったんだ!う〜…ふざけんな!」
あれ?女神ってこんなに口悪いの?
「せっかくやさしい口調で話そうと頑張っていたのに!なんでなんだよっ!」
これからは、簡単に人は信じないようにしよう。
誰にでも裏の顔ぐらいあるさ!
前向きに行こう!
「とりあえず女神様?座って落ち着きましょうよ!愚痴ぐらい聞いてあげますから」
「どうせあなたも、こんな姿を見たら幻滅するんでしょ?いいんですよ、
もう……いろいろ疲れましたし」
驚きはしたが幻滅はしないと思うんだが。いままでが大変だったんだろうなぁ。
「大丈夫ですよ、女神様!驚きはしたけど幻滅はしてませんよ?ギャップ萌えみたいで可愛いですよ?」
正直これは、本心だ!
まず、おれは銀髪が好きだ。
あのさらっさらのロングヘアーが好きだ。
人を言葉で表すのは苦手だが、とにかく可愛い。
俺のタイプだ!
「明日香さん!結婚しましょう!さあ行きましょう!式は、どこで挙げますか?」
「ちょっと待てーーーい!どうしてそんな話になるんだ?いきなりすぎるだろ!」
まあ、嬉しいけど。
「えっ?明日香さんから結婚しようって言ってきましたよね?」
ああ、もうこの人ダメだわ。
頭、全く回ってないわ
「とりあえず落ち着こうな?」
おしとやか、貧乳美少女女神はいったいどこへ行ったのだろう?
「そういえば、戻れないんですか?」
「戻れるなら、すでにそうしてますよ!」
「あっ!そうですか」
「明日香さんは今、どこに住んでいるんですか?」
さて。どう反応しようかな?
ゲームだったら、今頃選択肢が出ているのに、現実は不便だな。
「野宿です!」
「えっ、今なんて…?」
「野宿です」
「ちょっと待ってください。転生の間で、私の話しっかり聞いてましたか?」
その質問は、ダメだなあ。
嘘ついてみるか。
「はい!もちろん!」
「なんで棒読みなんですか?」
以外とするどいな!
棒読みはわざとだけど。
「はあ…やっぱり聞いてなかったんですね?」
「そんなわけないじゃないですかー」
「いい加減棒読みはやめて下さい!私の話を聞いていれば、地上に事情を知っている人に会えたのに…」
「えっ!マジで?こんなに苦労しなくてよかったの?」
「そうですよ?とにかく今からその人に会いに行きますよ?」
女神様は、立ち上がって早々に歩きだした。
「いや…待て!」
俺は言いたいことがしっかり決まっていないが、思わず止めてしまった。
どうしよう何も考えれない。
「そ…その今その人に会いに行ったら、俺のいままでの努力が台無しにになっちゃうんだけど……」
おっと!女神様がめんどくさそうな目で俺のことを見ていた。
「あのですね、明日香さん。異世界も大変なんですよ?特に冒険者は」
それは、承知のうえだった。
冒険者は命をかけて、モンスターと戦うことが仕事だからだ。
「女神様!一緒に冒険者しませんか?」
これは引きこもりである俺の本心であった。
俺は、昔から自分の意思を伝えることが苦手だった。
異世界でそんな俺を封印しようと決意をしていたのだった。
「で…でも、私は戻らなくては…」
「その関係者は、女神様を戻せるんですか?」
決まった!
これで八方塞りだ!
これで俺と冒険をする以外の選択は、無い!はず…。
「戻せますよ?」
「……ふざけんな!もう俺、帰る!じゃあな、女神様!また会えたらいいな!」
「あっ!ちょっ……」
俺は、彼女の言葉を聞かずに歩いて行ってしまった。
「はぁ…振られた……」
「ちょっと、ちょっと明日香さ〜〜ん」
「何ですか?ついさっき振られたこの良いとこなしのクソ野郎に何か用があるんですか?無いよね!あるわけがない!さようなら」
「ちょっと〜?どこに行くの?一緒にギルドに行こうよ!」
その声は、さっきまで一緒にいた女神様と同じ声だった。
「はぁ…振られた」
「明日香さん?ギルドに行って冒険者になって頑張りましょうよ!」
「えっ?…女神様???」
「私、振ってませんよ?あなたのこと」
俺の目から涙が出てきた。
「もう〜早く行ってくれれば良いのに」
「言おうとしましたよ?でも、言う前に帰って行ったから、言えなかったんですよ」
……俺のせいだったらしい。
「そういえば、女神様の名前ってなんなんですか?」
「無いですよ」
「えっ!無い?」
この世に名前がない人なんているのだろか。
…あっ!人じゃなかった。
「おそらく、この世界で名前を持っていないのは、私だけでしょう」
ガチだった。
「じゃあなんて呼べば良いんですか?」
「役立たず女神で良いですよ?」
目が死んでいる。
名前がない事は、コンプレックスだったらしい悲しい表情をしている。
そして、俺の的確な追撃が炸裂!
「元、ですけどね!」
あっ!死んだ。
つっついても全く動かない。
「俺が名前をかんがえますよ?」
「は…本当ですか?」
「もちろん!良い名前つけてあげますよ?」
「……お願いします」
女神様は、顔がにやけていた。
そんなに嬉しいんだろうか。
「えーっと、能無し役立たず女神、でどうですか?」
「良い名前をありがとうございます!今から私は、能無し役立たず女神です!」
あっ!この女神もう手遅れだわ。
頭全く回ってねえ!
さすが能無し。
「それで良いんですか?」
「良いわけないじゃない!何、馬鹿なことを言っているんですか?」
「あー、すいませーん」
殴りたい!ものすご〜く殴りたい!
俺は、その気持ちを抑えながら名前を考えた。
名付けって難しいな。
かと言って、親は許さない!
俺にこんな名前つけやがって!
そんなことより名前かー…、適当に頭から浮かんできたのにしようかな。
いや、ダメだ。名前は、大切だ。
その事は、俺自身が一番分かっているはずだ。
俺は、しばらく考えた。
「そういえば女神様は何の女神なんですか?」
「ああ、私は自然の女神です」
自然かー、今白い花を踏んでいるけどそれは良いのだろうか。
自然を大切にしないとダメだよなあー。
「花は綺麗ですよね」
全く気づいていないですね。
ここで踏んでいることを言ったら、きっと泣き出すだろうから、知らないフリだな。
「じゃあ、ユースレスだ!」
「えー、なんかおかしいと思うんだけど」
「呼ぶときとか名乗るときは、スレスにすれば?」
「まあ、それなら良いかな。」
「じゃあ、私はスレスこれからよろしくねっ、明日香!」
「おう!」
馬鹿が!
俺だけが名前にコンプレックスを持っているだと〜?
んなこと絶対に許さねー!
『ユースレス』の意味は役立たずだ!
知らずに名乗りやがれ!
「めが…じゃなくて、スレス。金は?」
やっとこれで、貧乏生活脱出だ!
「無いですよ?」
「は?」
さすがユースレス。
その名に恥じない役立たずだ。




