12話 王様の秘密を知りました
少しシリアスで重めな話が続きます。
現在、わたしは地下牢にいます。
いや、まさかお城の地下牢に入れられるなんて思ってもみない体験ですよね! というか、お城に地下牢って存在するんですね!!
魔王城にもあるのかな? 一人じゃ迷子確実だから城内探検なんてしたことないけど、もしかしたらあるかもしれない。
――なんて、現実逃避してみたけれど、勿論気分が上がる事なんてあるわけがない。
地下牢、寒いし。机と椅子とベッドしかないし。床冷たいし。
なんでこんなことになった。
いや、大体分かります。ここに入れられる前に頭の中整理しましたから。
コウガ様が毒を盛られて、倒れて、その場にいたから。
そりゃ、犯人だと思われますよね! どう考えても怪しいですよね!!
……神様はわたしに何か恨みでもあるんでしょうか。会ったら小一時間は問い詰めたい。主に魔王候補に選んだことについて。
「はあ……コウガ様、大丈夫かな」
ふっと脳裏に倒れたコウガ様の姿が浮かぶ。
わたしが無事でいられたのは、コウガ様がお茶を飲むのを防いでくれたからだ。どうか無事であってほしい。ルークさんがすぐに処置してくれたんだろうか。でも、パレードの準備で城内になかったし……お城に主治医とかいたのかな。
悶々と考え込んでいると、カツン、カツンと、硬い足音がこちらに近付いてくるのが聞こえた。
誰だろう?
思わず顔を上げて、足音が近付いてくるのを待つ。もしかして、ウィナードさんたちだろうか。それとも、雷翔? ……ジェイクさんだったら、ちょっと怖い。
じっと足音の主を待っていると、鉄格子の向こう側に影が差した。
「やあ。思ったより早く再会できたね」
そこにいるのは、ウィナードさんでも雷翔でもジェイクさんでもなく、にこやかな笑顔を向けるグレアム様でした。
「災難だったねぇ」
にこやかな紳士に、わたしは警戒を解けずにいる。
だって、コウガ様に放った言葉を覚えている。
王の座に居座る化け物。
それって、捉えようによっては「自分が座るはずだった王座を奪った」っていう言葉にも聞こえる。
わたしは彼から距離をとったまま、じっと見つめた。
「……グレアム様。コウガ様が、毒を盛られたんです」
「ああ、知っているよ」
「わたしの前で、毒を飲んで、倒れました。その前に、コウガ様はわたしが毒を飲むのを止めてくれたんです」
「そうか」
「グレアム様。貴方じゃ、ないんですか?」
「毒を盛った犯人かい?」
肯定の意味を込めて見つめると、グレアム様はふっと口元を緩めた。
「君は、コウガの味方をしてくれるんだね」
「――はい。命の恩人ですから」
「そうか、それなら良かった」
「え?」
意外な言葉が返ってきて一瞬気が抜けると、グレアム様は茶目っ気を出してウインクをしてきた。
「安心していい。すぐに君の無実は証明されるよ。あの女中にはすでに目をつけていたからねぇ。私がここに来れば間違いなく動くだろうとは踏んでいたし。まあ、君が執務室を訪れたことでコウガがお茶を飲む機会が早まってしまったことは想定外だったが――あの子の事だ。毒の耐性もついているし、ルーク殿もいることだし、大事ないだろう」
顎をさすりながら発する言葉は、全く想像していないものだった。グレアム様が呼ぶ「コウガ」も「あの子」も随分と優しい響きを持っていた。
「あの……グレアム様」
「ん? なんだね」
「貴方は、コウガ様を嫌っていたんじゃ?」
「ああ、あれを見ていたのか」
ぱっとグレアム様の顔が明るくなる。
え? あれ。なんか思った反応と違うんですけど。
戸惑うわたしをよそに、何故か目をキラキラさせながらグレアム様が尋ねてくる。
「私とコウガのやりとり、どうだったかね?」
「どうって……その、見ていて気まずいと言いますか……コウガ様にあんなこと言っていいのかなとか、蔑んでいるのかな、とか……」
「そうかねそうかね! いや、私の演技力も捨てたものじゃないな」
え、演技?
嬉しそうに笑うグレアム様に、きょとんとしてしまう。
もしかして、あれは演技? 確かに、身ぶりが大きくて少しわざとらしいような感じにも見えたけど……ええ―――!?
明るく笑っていたグレアム様だけれど、そのうち少し寂しそうな笑顔を浮かべた。
「本当はあんな事は言いたくはないんだけれどね。だが、仕方のないことだ。あの子には敵が多すぎる」
グレアム様の言葉の何が本当なのか、良く分からなくなってきました。
本当に、彼はコウガ様と敵対しているわけではないのでしょうか? でも、わたしに嘘をついて得るものもないだろうし、それに今浮かべている表情は演技に見えない気がします。
「もし、グレアム様がコウガ様を嫌っていないのだとするなら、どうして敵対しているフリをするんですか? コウガ様に敵が多いと思うのなら、尚更味方になってあげた方がいいんじゃないですか?」
わたしの疑問に、グレアム様はふっと悲しそうな笑みを浮かべた。
「できることならそうしたいがね。だが、そうもいかないのだよ。あの子の出生が、ただの身分差だけであれば、派閥はここまで根深いものにはならなかっただろうが」
「出生、ですか?」
何の話かと首を傾げると、グレアム様は意外そうな顔をした。
「ジュジュ殿は知らなかったのか? ああ、他国出身なのかな? それなら知らないかもしれないな。『ギルドニアの国王が魔族の血をひいている』というのは、世界的にも有名な話だと思っていたが」




