プロローグ
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小さい頃、正義のヒーローに憧れた。小学生の頃に剣道を習い、体を鍛え始めた。そのときに父さんからこんなことを言われた。
『煋雅、女の子は強気に見えても心の奥底では怖がりなんだ。目の前に泣きそうな子がいたらどんな子でも助けてあげなさい。たとえ自分に力がなくとも、全力で守ってあげるんだ。』
そのころから俺は女の子を助けることが増えた。クラスメイト、近くの公園で遊んでた少女、そして幼馴染の女の子。その後、中学生の時厨二病に目覚め、自分にはもっと力があると思い込んだ。授業中にも真面目に授業を聞くふりをしながら、いろいろなことを考えていた。
例えば、
――突然敵が現れて自分がその敵を倒す、自分の秘められた力が覚醒する、謎の人物が現れて肉体改造をされてみんなの知らないところで戦うとか――
それでも、本当はその頃の俺もわかっていた。絶対にそんなことはありえないと。そんなことが起こるはずもないと。そして、俺にはそんな力は宿っていないということも。高校生となった今は剣道をやめ、もう既に現実を見られるようになっていた。そう自分でも思っていた。
しかし、この考えが高校二年生の夏に覆されることになるとは、思ってもみなかった。