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短い前奏
曇れる空の下で、その殺戮は行われた。
殺戮は、人の手による嵐のようであった。
男も女も老人も子供も見境はなく、その街の動くもの全てがその動きを止め、生きるもの全てが生きることをやめた。
そうして誰もいなくなった街で、一人の男が笑っていた。
何がおかしいのか知らないけれど、笑っていた。
そんな男をただ一人、じっと見つめている私は、生きているのか、死んでいるのか。
――――。
いや、すでに死んでいたのだろう。男は私の肩に手をかけて、黄色の乱杭歯を見せて言ったから。
「みんなお前のおかげだ。感謝する」
男はそうして私の体をゆっくり左右に揺さぶった。
私は、男がそうしているその間中、じっと黙って堪えていた。
絶え間ない後悔と、泣きそうになる心と、止むことのない吐き気をただじっと、黙って静かに堪え続けていた。