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南の島の少年
≪南の島≫
一人の少年が本を読んでいた。だが突然本から顔を上げる。
「マミーマミー」
「なぁにムーサ。お母さんは忙しいの」
「ここに雪降らないかなぁ。あとツリーが見てみたい!」
ムーサが持っていた本を母親に見せた。学校で借りてきたのであろう本には、一面の雪とキラキラと輝くツリーが描かれている。
「ここは雪が降らないのよ。ツリーは‥‥‥ダディに頼みなさい」
「はーい」
父親が仕事を終え横になって寝ていた。
「ダディー!雪とツリーが欲しい」
「雪は無理だがツリーなら毎年飾ってるだろう」
「ノン!あれは椰子の木、僕が欲しいのは杉とかモミの木とかメタセコイアのなの」
父親が眉を寄せる。金がかかるし面倒くさいからそこら辺の木で代用した。なのにこの歳で大人の事情に気がついたというのだろうか。
「あー‥、そうだな。サンタにプレゼントを頼んだらいいんじゃないか?」
「わかった。書くから出してね!絶対だよ!!」