魅惑のショコラ5
読んでくださってありがとうございます。
BL要素をふくみます。本編とは関係ありません。
「リサ、明日の結婚式にはあなたも出席してらっしゃいね」
少し、恨めしげにセリナはリサを見上げる。
「セリナ様もいけたらいいんですけどね……」
基本王族は臣下の結婚式を祝福しに行くことはできない。示しがつかないというのが理由らしい。だから、長年の親友の結婚式だというのに、父である王太子コンラートも我慢しているのだ。
結婚のためのドレスは、国王陛下であるおじいさまにご挨拶にくるから見れるが、結婚式の様子を知りたかったセリナは、リサにその役目をまかせた。
=====
「明日、お前は妹のものになるんだな……」
自分を置いて、ベットをでたクレインに、そういうとアルフォードは顔をしかめた。
「あなたもおれの妹のものになるんですよ」
視線にひくりと背中を震わせてクレインはガウンを羽織った。先程までの熱の残りが醒めていくのを感じる。
「お前を誰のものにもしたくないというのに……俺は馬鹿だな――」
仕方ないことだった。二人は侯爵と未来の伯爵となるのだ。次の跡取りを作らないわけにはいかない。
二人が選んだのは、自分達とよく似た妹達だった。
「貴方を誰にも渡したくないのはおれも一緒です……」
クレインが、そう呟くとベットで半身を起こしていたアルフォードは身体からは想像のつかないほど俊敏にクレインを抱きしめた。無言で、唇を落とすとクレインは「嫌です……」とアルフォードの胸に顔をつけて、逃げる。
「お前に嫌われたら、俺はいきていけないな……。次に抵抗するときは、俺を殺したいときだけにしてくれ……」
アルフォードはクレインの抵抗をうばい、何度も口付けた。嫌だという言葉を封じるように、何度も何度も――。
花嫁は何も知らない――わけではなかった。
クレインに妹を紹介された侯爵家の姫は、怖ろしいほど奔放な伯爵家の姫に恋をした。自分が歩けない場所を走るエリアルを、馬に乗せてもらったときの高揚をいつしか、高鳴る恋へと昇華させたのだった。
エリアルもまた自分にないアルティシアの楚々とした美しさに見惚れ、やがてアルティシアにねだられる度に頬におとす口付けが、いたわりや親愛だけでないことに気付いた。
お泊りで一緒に眠るアルティシアの吐息にドキドキする――。
朝起きて、アルティシアの胸の中で目覚めたときの幸せといったらなかった。
「お兄様、私、おかしいの」
エリアルは兄にその気持ちを伝えた。アルティシアが好きなんだと、これは「どこかおかしいのかしら?」と。
クレインは微笑む。
「それは恋だよ」
それはエリアルの胸にストンと落ちてきた。
ああ、なるほど――恋だったのか。
いい提案があるんだけど。そんな兄の囁きに耳をすませる。
=====
侯爵家と伯爵家の結婚式は早々に行われることになった。
=====
ちょお――とまった~!!
リサは、ふと遠い世界から戻ってきた。
目の前のエリアルに「どうですか? 新しい構想は」と聞く。
「なんで、私とお義姉さまがそういうことになってるの!」
「恋は突然訪れるも……ぐえ」
エリアルがリサの頭を振る。
「この頭か!! この頭が諸悪の根源か!!」
リサは気持ち悪くなるまで揺さぶられる。
「まぁまぁ、エリアル。お話の中じゃない気にしなくていいわ」
エリアルが、深いため息をつく。
「この腐った小説に頭を侵食された貴婦人やらどこぞの令嬢に『お気の毒なんだけど、アルフォード様の愛がクレイン様にあるからといって、気にしては駄目よ』とか生ぬるい目で見られて同情される身にもなってください!」
これで、こんな話を作られた日には、アルフォードが結婚したのはクレインになってしまうだろう。頭の中で……。
「いや――!! リサ、この話を書くというなら、いいわ。もう貴女のことはお友達でもなんでもないわ。新居にだって招待しないわ。セリナと会うときも貴女がいるなら来ないわ」
「ええ――そんな困ります……。ネタが……」
「貴女、私とそれとどっちとるの?」
エリアルの憤怒と書かれた顔をみて、リサは仕方なく頷く。
「わかりました……。エリアル様とアルティシア様のところだけ抜きます……」
非常に残念そうにリサは言う。
エリアルは、その言葉を信じた。そして後日でた結婚式編で、アルティシアもエリアルもでてはくるが、何故かアルフォードとクレインがキスを交わし、手に手をとって神殿を駆け出すというものが出来上がっていた。
「確かに……確かに……私達は大丈夫だけど、なんで新郎が逃げたのに、微笑みながら手に手をとったイラストがあるのよ――!」
エリアルは、もうこれ以上リサの書く小説を読むのは止めようと決意するのだった。
今回はそれらしきシーンもなく、なんだかな~と思いましたが、一応魅惑のショコラも終了しといたほうがいいかな~と思ったのでw。




