魅惑のショコラ4
BLが苦手な方はおやめください。本編には全く関係ありません。
エリアル様が来なかった……読んでもらおうと思っていたのに。
セリナ様も心配している。この前は、アルフォード様に送っていっていただいたので、その話を聞こうと思っていたのに、残念だ。クレイン様の話だけでなく、アルフォード様のお話まで聞けるなんて、なんて素晴らしいのかしら?
リサはセリナの髪を梳かしながらそう思う。
「エリアルが来れなくて残念だわ。アルテイル様もお休みしてるらしいのよ」
「どうされたのでしょうね」
「この前のお昼のアルテイル様、いつもと違ってとても怖かったでしょう? 送っていくといってたけど、そのままエリアルを監禁としてないか心配だわ」
「それはないでしょう。クレイン様はお休みの閣下のために忙しくお仕事されてるといいますし。妹が監禁されてて仕事してるなんてありえませんよ」
「それならいいのだけど……」
「今日は、エリアル様もいらっしゃらないし、どうされます?」
本当は、また騎士団の訓練をみにいこうと思っていたのだが、エリアルがいなければ行くのが少し楽しくないとセリナは思う。
「今日はゆっくりしてましょう。たまにはリサと二人でお茶でもいいじゃない。小説のネタも教えて頂戴」
もう少し十四歳らしいことをしてほしいと思うリサだった。
=====
書簡を宰相閣下に届けさせた後のクレインの様子がおかしい。ジリアムは弟子でもあるクレインが昼間から具合が悪そうにしてるのに気付いた。
「おい、クレインどうした? 顔が青いぞ。帰るか?」
騎士見習いとしてもう一月になるが、クレインの利発さにジリアムは感心していた。気がつくし、我慢強いし、作業が速い。その彼が青い顔で、作業に集中できないでいるのだ。
このまま作業がすすむとも思えないし、なにより心配だ。
「ジリアム、言われていた服をもってきたぞ」
ひょいと顔を出したのはアルフォードだ。
この前から騎士に支給されているズボンの強度についてアルフォードに相談していたが、それの見本をもってきたくれたようだ。騎士団を辞したとはいえ、救国の英雄、この国の侯爵、王宮に顔を出すのはもはや日常だ。ついでに騎士団に寄って、友達後輩元上司と喋っていく。
ジリアムのところにくるのも日常で、ちょうどいいところに来てくれたと、安堵した。
「なんだ、クレイン顔色が悪いぞ?」
早速クレインの様子に気付いてくれたようだ。
「アルフォード、悪い、クレインを送っていってくれないか」
ジリアムの提案にクレインは青を通して白くなっていく。
ただ単に具合が悪いわけではないのかとジリアムは思った。
「ああ……、クレインちょっと医師にみせてやるから、俺の部屋に……」
アルフォードは王宮内に部屋を持っている。侯爵であり、王太子の親友であり、英雄である彼だからこそ許されている特別な部屋だ。アルフォードはフットワークが軽いので、人を呼ぶより自身が赴くほうが多いのであまり使われていないが、一日ゆっくりと過ごすこともできる部屋だということは、何度も酒盛りをしたジリアムは知っている。
アルフォードがクレインの手を引っ張って立ち上がらせるとクレインはそのまま転びそうになって、アルフォードに縋った。
「おい、本当に大丈夫か」
アルフォードの声に困惑が混ざる。
「無理……吐き……」
アルフォードが慌てて掴んだ空の書類入れにクレインは思わず吐いてしまった。
「医者。医者を……」
「嫌です……大丈夫です。なんともありません……」
背中をさすり、緩めてやろうと襟元を肌蹴て、アルフォードは気がついた。苦しそうに息を吐くクレインもアルフォードの硬直を感じて、その視線の先に気がついた。
自分の首から胸元に散らされた赤い花を――。
「大丈夫です。自分で帰れます」
クレインは自然にみえるように襟元を正し、白い顔のまま立ち上がる。吐いた書類入れを持とうとして、アルフォードに手首を掴まれた。
「ジリアム、後頼んだぞ」
ジリアムは息を詰める。アルフォードの普段はみえない感情の高ぶりを感じて、一歩下がってしまう。
「どうするつもりなんだ?」
「どうもしない。休ませるつもりだ」
抑える声に怒気は感じないが、竦んでしまう自分がいた。敵に後ろをみせたことのない騎士団の誇る精鋭部隊の隊長が、逃げたくなるなんてとジリアムは自分のことながら、笑いたくなる。
それと同時にそれを真横で浴びるクレインが気の毒だった。
「ひどくするなよ……」
そういうと、自嘲を浮かべて、アルフォードはクレインを抱えて部屋を出て行った。
=====
「何故こうなったか、聞いていいか?」
連れて来られたのはアルフォードの部屋だった。随分遠くまで醜態をさらしながら(アルフォードに抱きかかえられて騎士団から王宮の一室まで)来たお陰で、さらに具合がわるくなりそうなクレインだった。
下ろされたのは奥にある寝室で、この前王太子殿下に拉致されて部屋で襲われそうになったときにアルフォードが助けてくれて、連れて来られたのがここだった。
ゆっくり震える背中をさすられて、その手のぬくもりに癒されたのは、ついこの前だ。ショコラと温かいミルクをもらって、気が落ち着くまでここにいてくれた。
アルフォードはやはり優しかった。つれてくる時の強引さもなく、寝台の端に腰かけたクレインの頬をそっと撫でてくれた。
クレインは、どう答えていいか迷った。アルフォードに本当のことを言っていいのかどうか。
「コンラートか……?」
アルフォードはクレインの襟を解くとそこに広がる所有の証に目を眇める。
そこに指を這わされると、さっきのことを思い出してクレインはゾクリと背中を震わせた。
真っ直ぐ向けられるアルフォードの視線から逃げる術をクレインはもっていない。
頷いたクレインの深い森のような緑の瞳から透明な雫が零れ落ちる。
「泣くな……、もう二度とあいつには触れさせない」
強い言葉だった。けれど、それは幼い自分を護れなかった謝罪で、クレインの欲しかった言葉ではないはずだ。
「大丈夫です。きっともう興味は失せているはずです……」
王太子は身体を開かせることが目的だったようで、最初から媚薬入りのショコラを使ってきたし、言葉だってほとんど交わしていない。
『男はいい。女のように妊娠しないからな。好きなだけ遊べる……』
といっていたから、もしかしたら気まぐれに抱かれることはあるかもしれないが、大したことではない。心を伴わないそれは、ただの運動だと思う。訓練してたら怪我をしたとかそういうものだ。
「俺が、許さないと言ってる」
「護れなかったくせにと思われるかもしれんが……、お前を傷つけるのは、――俺だけでいい」
アルフォードに抱きしめられて、どうやら自分の欲しかったものが手の中にこぼれてきたのだとクレインは思った。クレインに拒否されるのを恐れるように、アルフォードは視線を合わせようとはしない。
性急にクレインの唇を求めてくる男を必死で押し返すと、傷ついた瞳が暗い翳りを灯していた。
「違います……。嫌なんじゃなくて……貴方の瞳を見つめていたいだけです」
アルフォードは、その言葉の意味を知って、大事なものをいたわる様にクレインを抱きしめた。
「俺を煽るのはよせ」
「好きって……言っていいですか?」
「だから煽るなといってるのに。俺のほうが、――ずっとお前を愛してる」
クレインはアルフォードの口付けを受けながら、どれだけ愛されているかを感じるのだった。
=====
「は~すっきりした~」
「リサったら、本当にアル×クレね」
昨日隠していた原稿用意を見つけられて、セリナ様にばれてしまった。
散々文句を言われたが、リサがキャンディ・ローズと知ってセリナ様は「自分の侍女が!」 と誇らしげだった。
セリナ様はクレイン様がでていればいいのだそうで、特にアルフォード様でも王太子殿下でもないようだった。
「でもクレイン様が十四歳てことは、アルフォード様もお父様も二十二歳くらいよね。それって犯罪よね……」
だから、嬉しそうに言うのは止めて欲しい。
疲れがとれません・・・こういうときに本編を書くと説明っぽくて、嫌なので、こっちに逃げてきました。申し訳ありません。
明日も更新できるかわかりません。皆様も体調管理をしっかりがんばってください。




