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酔えない獲物

読んでくださってありがとうございます。

「しまった……」


 ジンシルは、頭を抱えて呻いた。血の気が引いて、この暑いのに寒気すらする。


「兄上……。私がエリアル様に早くお伝えしなかったために……」」

「ジンシル、お前は城に戻って、クレイン様に報告しろ。私は屋敷の男達を使って領地までの道のりでエリアル様を探す」


 執事のバイエルはジンシルの一番上の兄である。青ざめる弟に命令を下して、自分も屋敷のものをかき集める。にわかに屋敷が騒々しくなる。


 エリアルは、一枚の紙に『領地に戻ります。探さないでください』とだけ書いて姿をけした。あれほどエリアルの動向を注意していたのに、さながらサルのように逃げてしまった。

 エリアルの部屋のベランダの窓がずっと開けられていたので、風邪をひくのではないかと心配した見張りがジンシルに伝えたとき、エリアルの部屋はもぬけの空で、愛馬のトライルの姿もなかった。馬番と門番の話から二時間ほど前に出かけたと知れた。


 ジンシルもバイエルもエリアルの行動力を知っていながら、思っていたのだ。


 流石に一人で帰るような危険なことはしないだろうと――。


 だから、馬番や門番に注意喚起することがなかったのだっだ。


 自らの認識の甘さをこれでもかというほど後悔しながら、ジンシルは馬をとばす。


 無事に――!


 それだけを願って。




 ==================


 ジンシルは城にもどったが、クレインの姿は見えなかった。聞いてみると、クレインはもう大分前に帰ったという。蒼白になるジンシルの様子をみて、ナリスは事情を聞く。

 エリアルのことは言えなかったが、火急の用でクレインを探しているというと、ジンシルの様子のおかしさもあいまって、ナリスは残っている勤務から外れている騎士達を集めた。


「クレインに恩が売りたかったら手伝え」


と言えば、男達は力を貸すといって、街に散らばった。クレインがアルフォードと一緒にいることがわかったのは、それから直ぐ後のことだった。


 ===================



「クレイン様! 申し訳ございません。エリアル様が一人で領地に戻られました」


 クレインの元にジンシルは駆けつけ、そこにアルフォードがいることに恐怖する。小さな声で耳打ちすると、一瞬で酒がとぶのを目の当たりにした。


「まて、どうなってる?」


 クレインは、酒を割るように置いていた氷のたまった水を飲み干し、震えるように声を出した。


「アルフォード様、エリアルが家を飛び出したそうです……。貴方はエリアルに告白したのですよね?」


 どうなっているのかわからないクレインは頭を振りながら、前の席で青くなるアルフォードに尋ねた。


「そうだ……、俺は告白して、勘違いされて……」


 アルフォードは立ち上がる。


「人を集める。ナリス、頼めるか」


 一番近いクレインの屋敷にアルフォードの直属の部下、今勤務にあたっていないものが集められる。


 十六名、多くもないが少なくもない。これ以上の人数になると、大事になりかねない。もう既に執事の命令の元、三隊が捜索に出ている。


「どうも、妹は閣下の言葉を誤解して、領地に単独で逃げ帰ったようです。勿論、そのまま両親の元にもどれればいいのですが、何分女の一人身。何があるかわかりません……」

「すまんが、エリアルの捜索を手伝って欲しい」


 アルフォードが頭を下げれば、ナリスもレイルも勿論他の部下達も「気にするな、手伝う」と心配てくれた。


 クレインが言うには、エリアルには有事の際にグレンリズム領から王都へ、王都からグレンリズム領へ逃げるための道を教えてあるということだった。三つの経路を地図に書き写し、一隊はアルフォード、一隊はナリス、一隊はレイルが追うことになった。もしものときのためにクレインは屋敷に残り指揮をする。

 五人ずつ、伝令の系統も慣れたもので、ジンシルは側で見ていながら、系統立った作戦に驚く。ジンシルは騎士団に慣れているもののクレインの従者でしかないので、その組織としての強さを客観的に見ていた。


「では、今から出る」


 アルフォードは、焦る心を掻きむしりながら、馬に乗る。流石に馬の産地であるグレンリズムが用意した馬は、力強い駿馬だった。


 調整された火の松明をいくつも灯しながら疾走する集団が王都を離れていくのを、たまたま起きていた人々は何事かと見つめるのだった。



 ======================= 


「何故……?」


 クレインの質問に、ジンシルは丁寧に答えた。


 エリアルに告白したらしいのだが、誤解させてしまって、エリアルが泣いていたこと。アルフォードが追い詰めたらエリアルは逃げるだろうと思って止めたこと。そして、クレインに誤解を解いてもらおうと思って待っていたこと。


「何で告白して、それだけのことでこんなことになるんだ?」

「申し訳ありません……」

「いや、お前だけが悪いわけじゃない……。それにエリアルの心配はあんまりしていない」


 エリアルには身を護る術を教えてきた。今じゃ立派な『風の騎士姫』だ。皆が本気で心配してるので言うつもりがなかったが、もうこれくらい盛り上がらないと、アルフォードが動けないんじゃないかとも思っていた。


 あの人は自分を縛りすぎる――。


 どうもエリアルに関して、その縛りはかなり切れているように思うが、何事も勢いが必要だろう。


 三経路のうち、一番エリアルが進むだろうと思う道をアルフォードに示した。


 出会うか出会わないかは、運しだいだ――。


 ジンシルは何故か笑みを浮かべる主人を訝しげに見つめ、ため息を吐くのだった。

わーい。感想ありがとうございました☆

ちょっと真面目なシーンが続くので疲れます(笑)。真面目なまま走りきるのがいいのか、笑いに逃げるべきか、BLで休憩すべきか迷うところです。

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