風の騎士姫
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こんなに……。
アルフォードは報告書を読み上げて、頭をかかえた。
「おい、お前の妹は傾国の美女か」
アルフォードの執務室で、レイルが団員と隠蔽していた報告書を読み上げて、アルフォードの側近であるナリスが言った。
「というか、どこの騎士だ……」
アルフォードも呟く。
というか、ゴキブリほいほい並に女に嫌われる要素のある人物達を集めて、足蹴にしてるようだ。
そういえば、最近王宮の貴婦人達の間に、流行り始めた新ジャンルがあると聞いたな。あまり気にしていない情報だったが、クレインはもしかしてと思う。確か、『風の騎士姫』……、そのまんまだなと今なら思う。
落ち込んで、王宮で大人しく王女殿下の相手をしていると思っていたら、なんてことはない、エリアルはどこでもエリアルだったようだ。
少し安心した。
「で、どうするんだ?」
ナリスの声は面白がっているようだ。
「領地に帰しますよ。こんなにあらゆる人物に恨みを買って、よく無事だったと思いますよ。一年か二年領地で大人しくしてれば忘れてくれるでしょう」
この侯爵の息子など三度もエリアルにやられているのに、反省の色が全くない。エリアルは強いとはいえ、やはり女性でもあるし、この先何があるかわからない。
もし彼女の誇りを傷つけるような何かがあったらその時は、クレインは悔いても悔いきれないだろう。
「いや、悪いのはエリアルじゃないのに、それは横暴ではないか」
「横暴とかではありません。私はエリアルの保護者として、彼女を護りたいので、そう決めただけです」
アルフォードは指先で机を叩く。考えをまとめるときのアルフォードの癖だ。
「わかった、西方騎士団でエリアルの送迎をすればいい。今日みているだけでも、あの王女殿下のエリアルへの信頼度の深さというか懐き具合はみてとれただろう。あんなに喋る王女殿下を俺は初めてみた」
「確かに。いつもいるのかいないのかわからないくらい静かな方だったのに、今日は年頃の女の子のようでしたね」
レイルもセリナを思い出して微笑ましく思う。
「ですが……」
クレインもそうは思うが、返事を渋る。
「手が空いているときは俺が行く。それでも……駄目か?」
アルフォードの視線を受けて、クレインは口篭る。願ってもないが、ここは諸手を挙げて喜んではいけないのだ。釘もさしておこうと思う。
「エリアルを追い詰めないで下さるのでしたら、帰すのは諦めましょう」
「追い詰める?」
アルフォードが不機嫌そうに聞き返す。
「その声です。その目です。その威圧感です」
ナリスとレイルもクレインの言葉に頷く。
「なんでそんなに怒ってるんですか。エリアルじゃなくても逃げますよ」
「いつもの温和な閣下がどうしたんですか」
やはり逃げられたのか……と落ち込むアルフォードだったが、理由が声と目と威圧感だと聞いて、首をかしげる。
「いつもと違うか……?」
「ちょっと自覚ありませんよ、この人」
「うわ、引くなぁ」
「違いますよ。エリアル、怯えてたでしょ」
さらに衝撃的な言葉がアルフォードを抉る。
「わかった……、優しくする。傷つけないように気をつける。きちんと護る」
アルフォードが、そこまで言うのなら、クレインにはもう止める言葉はなかった。
「わかりました。では、王女殿下にそのように伝えます」
「帰る時間を聞いて来てくれ」
今日の帰りから送るつもりらしい。
「了解しました」
クレインが部屋を出て行ってから、レイルが「お茶いれます」と立ち上がった。
「どうするんだ、領地に帰したほうがよかったんじゃないか?」
ナリスの質問の意味は考えるまでもなかった。
「そうだな、帰したほうがよかったんだろうな……」
組んだ指に額を押し付ける。
わかっていても、出来ることと出来ないことがある。
「俺は考えるのは苦手だ……」
「もう、いいんじゃないか。お前が、エリアル嬢に魅かれてるのも、大事なものを失う怖さをかかえてるのもわかってる。だからこそ、エリアル嬢はお前にとっては最愛の女になる可能性があると俺は思うよ。だって、『風の騎士姫』ってエリアル嬢のことだろう」
アルフォードは、聞いたことのない名称かナリスの言葉かどちらかわからないが眉を寄せる。執務室をでて、戻ってきたナリスが持っていたのは、ハードカバーの装丁の美しい本だった。
「これ、うちの奥さんの愛読書。最近でたんだけど、凄く素敵なのって読むように言われて読んでたんだけど、これってエリアル嬢のことじゃないか?」
報告書をみて、初めて気がついたとナリスは言う。
「貸すよ。読んでみろよ。格好いいから」
「それ私の奥さんも読んでますよ」
レイルもそういって、お茶を配る。
思った以上にファンがいるようだった。
アルフォードは、表紙をめくり、読み始める。元々こういう小説の類は読んだりしないので、少し戸惑う。
それでも読んでいくうちに、面白くて、続きが気になる。
「もう!仕事してください!!」
クレインが戻ってきて、読み耽るアルフォードを急き立てる。
ガミガミと小言でアルフォードを執務に追い立てる。閉じた拍子にアルフォードの読んでる本が何か気がついて、クレインは笑いそうになるのだった。
もちろん、『風の騎士姫』を書いてるのはリサです。
王女に執筆がばれた彼女は、仕事のほとんどを免除




