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貴女のことが大好きです

読んでくださってありがとうございました。嬉しい100p越えできました。評価くださった方には感謝感激雨あられです。ありがとうございます。少しづつpvも増えて、気力がわいてきます。

「隊長……」


 クレインとジリアムは居間で待つことにした。しばらくして、両親と無言の再会をはたしたアルフォードが戻ってきた。


「覚悟はしてきたんだがな、堪える……」


 アルフォードはソファに力なく座り、眉間をおさえる。

 二人は言葉をかけることが出来なかった。


「二人とも、着いてきてくれてありがとうな。疲れただろう、食事して少し仮眠をとるといい。夜は一緒に食べてくれ」


 案内させるというアルフォードに、クレインは思わず声を掛ける。


「隊長……、眠れますか?」


 ふっと瞳が揺れたが、一瞬で静謐さを取り戻す。アルフォードは強い……とクレインは思った。


「ああ、さすがに疲れた。指示は出したから、俺も少し眠るよ」


 それ以上いっても、アルフォードは弱音を吐かないだろうと、ジリアムも考えているようで、クレインを促して、立ち上がる。


「失礼します」


 二人が部屋にさがるのをアルフォードは見送った。




 =========================



「アルフォード、妹君は?」


 食事の合間にも家人に指示を与え、ゆっくりすることが出来ないアルフォードだったが、食後には少し時間があったので、三人で軽く呑む事にした。遅れて到着したアルフォードの護衛の騎士二人は食事を終えて、既に休ませている。




「アルティシアな、足の腱を切られているらしい。医師によると接合がうまくいけば歩けるようになるらしいが、どうなるかはまだ判断できないそうだ」


 アルフォードの手の中で葡萄酒のグラスがもてあそばれる。


「昼間は、起きてすぐに俺にあっただろう? 痛みを取るための薬が錯乱作用があるらしくてな、本人は覚えていないし、口に出したことが本人の気持ちとは限らないと医師には言われたんだが、あれは本心なんだろうな……。俺はどうやって妹に償えばいいんだろうな……」


 それは、クレインが聞いた唯一のアルフォードの弱音だった。


 クレインは知らず、手が震えた。葡萄酒が揺れる。なだめるようにジリアムはクレインの口に酒の肴を放り込む。


「アルフォード、医師は本人の意思ではないといったんだろう? 忘れてやれ。お前が気にしてるとしったらアルティシア様はきっと悲しむ」


 ジリアムはアルフォードの肩を叩いて、アルティシアの気持ちを代弁した。

 きっと普段のアルティシア様は、ジリアムのいう心の優しい人なんだろう。クレインの目には苛烈な目をした美しいけれど鬼気迫る少女に見えたけれど。


「そうだな……」


 アルフォードは何杯かグラスを空にしたが、酔いそうな気配はなかった。


 ========================


 葬儀の手配に侯爵家の親戚の訪問、国王陛下からの使者、書簡の整理などアルフォードの忙しさは凄まじいものだった。待たせる相手への挨拶や失礼をわびる仕事を執事とジリアム後から来たレイル・ソーンウィル、ナリス・エイル・ディロン が手伝いなんとかそれをこなしていた。


 クレインは自分の居場所のなさに心地の悪いものを感じながらも、時折アルフォードへのお茶入れなどをジリアムに頼まれていた。ジリアムは気持ちの休まる様子のないアルフォードに、無理に休憩をとらせられるのがクレインだと気付いていたからだ。


 そのうちにアルフォードの背後で使者への言葉を聞いたり、書簡の整理を手伝うようになって、クレインは自分がこういう文官の仕事に向いてるような気がした。

 いつか自分も伯爵位を継いで、同じことをせねばならない。そのためにアルフォードが現場を見せてくれているようだと、気がついた。


 この人はどこまでも優しい……。


 伯爵家の自分を責めない、どこまでも親身になってくれる。自分が未だかつてないほど追い詰められた状況において、クレインを気遣えるその強さにあこがれた。


 十日たった日の朝、アルフォードが迷いながらクレインに頼みたいことがあるといった。アルフォードの傍で仕事を見てるのも手伝うのも楽しかったが、そういわれると嬉しくなって聞きもせず了解した。


 痛みも少しひいてきたアルティシアに彼女の好きなショコラを持っていって話相手になってほしいということだった。確かに人と話していると痛みがまぎれることもある。クレインは尻込みしそうになる自分を奮い立てて、彼女の部屋を訪れたのだった。


「どうぞ」


 彼女の声は落ち着いていた。クレインはホッとして部屋に入った。

 薬のにおいと気持ちを落ち着かせるカモミールの匂いがした。


「ごめんなさいね、こんな格好で」


 黒い髪は肩の辺りで赤いリボンでまとめられて、前にたらしていた。少しやつれた顔に理知的な青紫の瞳が印象的だった。


 なんて美しい人なんだろうと、クレインは息を飲んだ。


 侯爵夫妻を殺した暗殺者は、この少女も手にかけようとして、『黒い髪は不吉だから殺せなかった』と言ったそうだ。


 違う、黒い髪が不吉なほど美しくて、殺すのをためらったのだろう。


 クレインは、ふと、自分の名前を名乗っていいのか迷った。彼女は、クレインがグレンリズム伯爵の息子だと知って、嫌がらないだろうか……。心の傷は癒えていないはずだと思った。


「アルティシアと申します。クレイン・クロス・グレンリズム様」


 名前はもう既に知られていたようだった。少し恥ずかしくなって、クレインは彼女のベットの傍にいって手をとって、そっと触れるか触れないかのキスを落とした。


「アルティシア様、クレインとおよびください。あなたの美しさに見とれてご挨拶が遅れました」


 アルティシアは軽く目を瞠り、ジッとクレインを見つめたかと思うと、


「恥ずかしいひとね」


と怒って、すぐにクスクスと笑った。


「自分のほうが綺麗なのに。そんなキラキラした髪の人、はじめて見たわ。お兄様の言ったとおりね。わたくしのことは、シアと呼んで頂戴。お友達になるのですもの、敬称なんていらないわ」


 はっきり言うタイプの少女らしい。見た目とはかなりギャップがあったが、それがまた好ましくもあった。


 クレインが持っていったショコラを嬉しそうに食べる姿をみていると、王都中のショコラを集めてみたくなるのは何故だろうか。


「私にも一つください」


 クレインがそういうと、はいっと一つ差し出してくれた。


「あっ……」


 クレインはアルティシアの手ごと持ち上げ、彼女の指から口にショコラを含んだ。


 真っ赤になるアルティシアに、なんでもないような顔で、


「美味しいですね」


というと、指とクレインの顔を交互に見て、


「もおおおおお!」


と、牛も負けそうな声で怒ってしまった。そんなやりとりを十五分もしたら、少し彼女が疲れてきたようなので、クレインは立ち上がった。


「また来ますね」


 アルティシアは、怒っていた。


「もう来なくていいわよ」


 そういっても、クレインは爽やかな笑顔だった。

 美しい金髪で、緑の瞳の本にでてくる王子様のようなクレインは、自分が本当に嫌われることなどないと思っているのだろう。そして、それは真実だから、もっとアルティシアは腹が立った。


 彼の去った後に枕をなげたアルティシアは、しばらくしてから、寝ててもずっと苛まれていた痛みがなくなっていることに気がついた。


 怒りが痛みを凌駕することがあるんだと、初めて知ったのだった。

このアルティシアの話は番外にするか本編にするべきか迷いました。しかもアルフォードの登場したところでぶったぎったので、どうなってんねんと思われたかもしれません。でも、アルフォードが、なんでエリアルと結婚できないとおもっているかを知って欲しくて、先にこの話を書きました。


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