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臆病な狩人

読んでくださってありがとうございます。

今回は短いですw。

 三十分ほど踊った後だろうか、エリアルがハールの肩越しにアルフォードを見つけたのは。

 来てさほど立ってはいないのだろう。二十六歳くらいの可愛らしい感じの婦人を連れて、アルフォードはホストであるシジマール侯爵に挨拶をしていた。


「来たのかい?」


 ハールの言葉に頷く。繋いだ手越しにハールの安堵が伝わってエリアルは笑った。


「酷いな。おれは後どれぐらい踊ればいいのか心配してたのに」

「ハール、意味がわからないわ。どこかで休憩すればいいのに…」


 この鈍感な少女にどう言えばいいのかわからないので、踊り続ける意味は言ってなかった。どうせ、言ったとしても、「情けないわね」と怒られるに決まってるのだ。エリアルは、リリスの半分もハールに優しくない。


「どうする。挨拶しにいくか?」

 

 ハールは、エリアルの目線の先をさえぎらないように上手にリードする。


「ごめん、ハール。無理だわ……、怖い」


 いつの間にかエリアルの視線が下がっていた。そんなところにアルテイル侯爵はいないだろう。エリアルの表情が曇っていく。


「どうしたの。あの人はいるんだろう?」


「ごめんなさい……もう、十分だわ」


 エリアルは、キュっと口を結んで、何かをこらえる様にハールから手を離した。

 突然の終了にハールは驚いたが、エリアルの顔をみて、頷いた。


「酷い顔をしてるよ……」

「そんなこと、女の子にいう言葉じゃないわよ。リリスに言いつけるから」

 

 そんな泣きそうな顔でいう言葉でもないと、ハールは思いながら、エリアルを輪の外へ、更に庭のほうへ促したのだった。



 ==========================


 エリアルは、アルフォードがこのホールに入ってきた瞬間に気がついた。


 自分の大好きな人が見つけやすい人でよかったとエリアルは思った。

 今日は騎士団の礼服ではなかった。黒の夜会用の服だ。瞳の色とあいまって、そこだけ闇のようだった。金の飾りが酷く似合っている。昼見たアルフォードとのギャップが堪らない。


 にやつきそうになる自分がちょっと乙女らしくなくて嫌になる。やはり、リリスをみならわないくては。


 アルフォードと目があったような気がしたが、気のせいだったのだろう、直ぐに視線はわかれて、ホストであるシジマール侯爵と挨拶を交わしている。

 ハールはエリアルの態度ですぐに理解したらしく、アルフォードのほうを沢山みれるようにリードしてくれた。こういう優しいところは、リリスにお似合いだと思う。


 やはりアルフォードは、エリアルがここにいて、彼をみているのに気付いてるのではないだろうかと思う。どんなにハールが見えるように踊ってくれていてもずっと同じ方向をみているわけにはいかないし、ハールの肩越しにみるので、ずっと目線があってるわけではない。どちらかというと、隠れることが多いのだが、その目は何だかいつもと違った。


 機嫌が悪いのだろうかと思う。

 まだ彼に会ったことは二度しかないから、それが普通なのかもしれない。


 アルフォードは大きな身体が周囲に与える威圧感を理解していて、あえて鷹揚に振舞ってるようだった。騎士団の訓練のときの凄まじい迫力ですら、一部なんだとクレインが言っていた。


 エスコートしてる女性の少し後ろから踊る人々を眺めているが、その目は、少し苛立っているようだった。何故だろう、自分を睨んでいるような気がする。


 ターンをして、次にアルフォードをみれば、突き刺すようだった視線が緩んで、一緒に来た淡い黄色のドレスのパートナーと談笑してるようだった。彼女がアルフォードにねだるように腕に手をかけて、踊ろうと誘っているようだった。

 アルフォードはそれに応えて、彼女の腰に手を添えて踊り始めた。



 彼のステップは最初はゆっくりなのに、段々と大胆になっていくのだろう。

 きっと、……自分と踊ったときのように。


 馬鹿だ、自分は。


 挨拶できれば、どうにか彼に踊ってもらえると、期待していたのだ……、多分。それ以外に二人の踊る様をみて、ショックを受ける理由がない。


 友人でもない、ただの……ただの部下の妹なだけなのに。クレインに無理やり押し付けられて、踊ってくれただけなのに……。あの優しさに甘えて、期待したのだ。

 


「どうする。挨拶しにいくか?」

 

 ハールの声に我に返る。


「ごめん、ハール。無理だわ……、怖い」


 スローテンポな曲でよかった。


 ぼんやりしてても身体は動いていた。ハールは訝しげにエリアルをみている。


 なんて言えばいいのだろうか。

 アルフォードが踊ってくれなさそうだから、帰る?

 アルフォードが怖い目で見てるから帰る? 

 あの冷たい瞳は、自分に執着してる部下の妹がずっとみているのが気持ちわるいから苛立ってるのだろうか。


「どうしたの。あの人はいるんだろう?」


 リリスの夜会の機会を奪ってまで、ハールに着いてきたのに、声も掛けずに帰ろうなんていえない。でも、もう無理だった。挫けそうな心は、エリアルから冷静さを奪っていた。こんな曲の途中で止まるなんて、非常識だ。でも、もうこれ以上ここにいたくない。アルフォードが彼女に微笑みかけながら踊っているところなんて、見ていたくなかった。


「ごめんなさい……もう、十分だわ」


 必死に搾り出したその声にハールは驚きながらもエリアルの気持ちを優先してくれた。


 ===========================


 エリアルがハールと出て行くのを、アルフォードは焦りながらも見ていることしか出来なかった。

普通モード、エリアルモードです。アルフォードモードはいらないかな、くどいかな?アルフォードのほうが絶対狩人だと思うんですけど、とりあえずw

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