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酷い兄

BLじゃないはずなのに、BLネタが面白くて・・・駄目ですね☆

 アルフォードの軍務西方指令という肩書きは、王国の騎士団を5つにわけた西方の長であるという意味である。

 騎士団は北東西南と国王及びその家族を護るための近衛の5つにわけられる。騎士団の下には軍があり、アルフォードが指揮を執るのは西方軍と呼ばれる。

 西方軍自体はグレンリズム伯爵領をはじめ、3つの領に駐屯しており、警備その他は西方副指令が行っている。

 軍務西方指令であるアルフォードは、季節ごとに3領の駐屯している町に順にまわるが、基本は王都での仕事が多かった。若いアルフォードが指令職につくので副指令には、しっかりとしたものがついたこともあるし、侯爵家をついだことでその仕事もあるために考慮されたこともある。

 貴族は家を継いでしまえば、騎士団を辞することが多い。侯爵ともなればそれは当然のことだった。しかし、10年前の『ミズリの戦い』においてアルフォードの功績は大きく、アルフォードの名前が将軍としてあがれば、それだけで周りの国への牽制になることから国王が要請し、それをアルフォードが受けた。




「アルフォード、もうそろそろいいだろう、さっさと結婚して子供をつくってしまえ。いつまでも若いと思ってたらあっという間だぞ」

 王太子に呼ばれて、いやな予感はしていたが、ズラッと並ぶ色とりどりの花々をみて思わず回れ右したアルフォードを捕まえて、王太子コンラートが言った。

「どれがいい?若いのから熟したのまで、とりそろえているぞ」


 アルフォードと王太子は同い年で、柊の園で何年か一緒に学んだ仲だ。14歳でアルフォードが騎士団に所属するまで、ご学友としてともに机をならべていたから、気安いが、それでも羽交い絞めにしてくる王太子を力の限りで引き離すということは出来なかった。

「やめてくれ・・・。言ったはずだぞ、俺は結婚はしないと。それなりの年齢になったら、親戚筋からよさそうなのを養子にするといったよな」

「何をいってる。お前のその艶やかな黒い髪、吸い込まれそうな紺碧の瞳!!ああ、わたしが女なら、寝込みをおそってやるのに!!」

 物騒な言葉に背後で黄色い悲鳴が起こる。襲って~~~とか聞こえたような気がする。

「残念ながら、わたしではお前の子は孕めんからな。ほら、どうだ」

 王太子妃のお茶会だったのだろう15人ほどいる女性たちは頬を染めてアルフォードを見つめてくる。何があったのか倒れて運ばれていく女性までいる。

 アルフォードは、何度断っても断っても女性を紹介してくるコンラートにうんざりする。


「失礼いたします」

 突然あらわれたクレインに更なる声が上がる。王太子に失礼のないようにアルフォードに許しをもらってから発言する。

「アルテイル閣下、砦より急ぎの伝令です」

 クレインに頷き、アルフォードは緩んだコンラートの腕から抜け出した。

 クレインをみて何か思い出したのか、コンラートは声をかける。

「アゼル子爵、ずいぶん可愛らしい妹君だったね。そういえば、アルフォードがエスコートしていたようだが、随分と親しいのかね」

 この男は、どれだけ自分に興味があるんだ・・・と白い目をむけてもコンラートは気にした風もない。

「いえ、あの日は私が具合を悪くしまして。初めての舞踏会で喜んでいる妹を連れてかえるのも不憫だったので、困っていたところを閣下に助けていただきました」


 よくまぁそれだけスラスラと嘘がつけるものだと、アルフォードは感心する。


「そうか、で、アルフォード、キスはしたのかね。もしかしてもう食べたなんてことはあるのかね」

 なんて堂々と・・・クレインも少し引きつっている。当然だろう、王太子でなければ決闘を申し込んでもいいくらいの失礼さだ。

「ふふん、ここにいる花達に手を伸ばさないのは、もう白い花に手を伸ばしたから・・・と思ったんだが」

「殿下、失礼ですよ。ごめんなさいねアゼル様、これでも悪気がないのよ」

 座っていた王太子妃が、花達に「続けてね」といってこちらに来る。

「悪気?あんなに可愛かったではないか。アゼル子爵に似て美しいだろうとは思っていたが、よくもまあ、あんな可憐な少女を隠してきたものだとおもったものだ」

 アルフォードがふと眉を寄せる。

「クレインに似てる?」

「似てるではないか、髪の色も瞳の色も・・・」

「似てないだろ。彼女はとても優しい瞳で・・・コロコロと笑うんだ。クレインのように無駄に愛想を振りまかないし、色気もない。」

 色気がない・・・3人は、それは褒め言葉でないことを知っている。

「気に入ったのか」

 コンラートが嬉しそうにいう。

「いや、妹みたいなそんな感じなんだ」

 クレインは内心ため息をついてしまう。

 

 これか、エリアルが言ってたやつは。


 コンラートがなおもアルフォードを突こうと口を開きかけたところを王太子妃が止める。「わたしくも気にいりましてよ。どうかしら、姫の話相手としてエリアル様、王宮においでくださらないかしら」

 ギョッと男3人は王太子妃を凝視する。

「まあ、怖い顔。あなたまで何を驚いてらっしゃるの。姫の話し相手をさがしてることはお話していたでしょう。とても明るいあんな方なら、大人しいセリナをきっと導いてくれると思うのだけど」

「ああ・・・そういえばそういってたね。突然だったから驚いたよ。その話は子爵ではなく、父君の伯爵の了承をえないといけないだろう」

 コンラートは、妻の突然の提案に思案しながらもそういった。


 アルフォードが気に入っているなら、セリナの相手をしてもらっている場合ではないからだ。

 王太子妃も心得たように頷く。



 クレインは、静かに話が終わるのを待っていた。

 これは自分が答えていい話ではないからだ。

 何も言わないクレインを疑問に思いつつも、アルフォードは王太子妃に挨拶をして、退出した。



「何故何も言わなかったんだ」 

 騎士団に戻りつつ、アルフォードはクレインに聞いてみた。

 それが何にたいするものなのか、少し迷う。

「エリーに色気がないことですか?」

 ブッとアルフォードは噴いた。

「色気なんてものは、恋をして、こがれてるうちにでてきますよ。妹は、最近りんごを

みてぼんやりしてます」


 あれから3日だ。3日しかたっていない。アルフォードは手の中にいた少女を思いだす。


 あんな可憐な少女を王宮にだって?そんな狼の巣にうさぎを放つようなまねをすれば、喰いあらされるに決まっている。

 

 あの王太子妃があんな恐ろしい女だとは思わなかった。


「りんごがどうしたんだ」

「りんごが好きなんでしょう」

 妹はりんごをみてこのでかい男を想ってるのに、当の本人は思ってもみないのだろう。

 エリアルが不憫だ。

「そういえばりんごが好きだといってたな。花は百合が好き。果物はりんごが好き。色は蒼が好きだといってた・・・」

 蒼、恥ずかしくて紺碧だといえなかったんだろう。

「男はアルフォード・リングス・アルテイルが好きなんでしょう」

 少しぶっきらぼうにクレインらしくなく呟く。

 魚はアジが好きみたいなのりだ。

 クレインはエリアルに心でわびた。


 アルフォードは、クレインをみて、息をのんだ。そして、唾が器官にはいったのだろう、盛大にむせながら、見向きもしないクレインの後を苦しそうに追った。


 冷静に伝令の報告が聞くことはできないだろうなとクレインは思う。




 本当は、初めての恋にとまどっている妹をゆっくり見守ろうと思っていたのだ。アルフォードは独身主義を唱えていたし、急ぐ必要はなかったから。

 それがどうだ。これまでもいくつも来ていた見合いの話が、積極的なほどの熱意をもってグレンリズム家に届いている。王都の屋敷にも、領地の父の元にも届いているだろう。数もだが、家柄も相当なものだ。そのうち断りきれなくなるのは目に見えていた。


 ゆっくりして、そのまま外堀を埋められたりしては大変なことになる。


 父には、自分の考えは何年も前から伝えていた。


 領地を護ってくれたアルフォードが、自分の家族を失って、もう二度と失いたくないと独身主義なこと。アルフォードが一度も自分たちグレンリズム家を責めないこと。

 

 エリアルが望むことが前提だが、アルフォードのために強くなるように育てたいと、戦いの後、クレインが父にエリアルの教育の全てをまかせてもらったのには、そういうわけがあった。

読んでくださってありがとうございます。楽しんで書いてます。

ジレジレしてるのは周りだけという・・・。

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