第七話
いつもより眠い目をこすりながら今台所に立っている。
昨日のあのあと、布団に突撃されるのまではまだ許せる。そこでいきなり服を脱ごうとしたことは我が妹ながら正気度を疑った。
正直朝食を作らず寝てしまいたが、可愛い妹たちのために今朝も頑張って朝食を作る。
・・・まあ、辛いから簡単にご飯とネギ玉子入りの納豆後は、レトルトのお味噌汁で済ましてしまおう。
ご飯は炊けているので机にきざんだネギと納豆、玉子、箸を出したところで園木が起きてきた。
「あら、おはよう。朝食の準備ご苦労様」
そして、俺と食卓に並んだものを見てため息をついてから
「夕御飯とは違って随分と朝ごはんは手抜きなのね」
「悪かったな、誰かさんが急に家に泊まり込んでくれたおかげで、話がさらにややこしくなったおかげでしばらくは控えたいくらい次女三女と遊べたよ。」
「それはよかったじゃない、あなたに女性で優しくしてくれるのなんか妹さんと商店街のおばさま達くらいでしょ?」
言い返せないのが本当に悔しいとこれほどまでに思ったのは久々だと思った。
「別に食いたくないなら途中で買っていけ、俺はあいつら起こしてくるから」
「食べたくないとは言ってないわ、ただ、料理の質が落ちたことに残念に思っただけよ。」
いつも通りの起こす順番で初めに紅波の部屋に行くと、いつもは仰向けで寝ているのに今日はうつ伏せで紅波は寝ていた。
「おーい、紅波朝だから起きろー」
「・・・・・ごめんな、兄貴」
「は?どうした。そんな顔して」
珍しく紅波は落ち込んでいるようで、いつもの明るい雰囲気ではなくションボリとした寂しそうな雰囲気だった。
「昨日私が兄貴の部屋で寝落ちしたから、瑞樹と鈴が兄貴に迷惑かけて」
一昨日俺の部屋で寝てしまい、瑞樹達が紅波だけでなく俺にも罰を与えたことに対して罪悪感を感じてるらしい。
「今更そんなことだったら気にすんなよ。鈴は驚いたけど瑞樹はいつものことだし、妹たちに迷惑かけられるのなんか兄貴だったら当たり前の事なんだから。もっと迷惑かけてくれたっていいんだぜ。」
「でも、私も長女なのに二人のことまとめられなくて・・・」
「俺も気にしてないから気にすんな。妹たちに迷惑かけられるのも慣れるし、甘えられるものでもある。好きでやってるんだから紅波が困ることはありません。じゃあこの話はおしまい。朝ごはん出来てるから食べちゃって。」
いつもだったら頭でも撫でてやりたいが、あの二人が起きて見ている可能性があるので精一杯の笑顔をみせてやる
「ああ、わかったぜ兄貴。私も頑張る」
紅波もいつもの元気な笑顔を返してくれた。
・・・・さて、今俺は自分の部屋の前にいる。
いつもの朝だったら緊張なんてものはしない。だが、現在一番の問題児となっている二人が部屋の中にいる。
深呼吸を一つ。できるだけ警戒しながら部屋に入る。
「グヘヘにーちゃんの匂いに包まれて私たまらないよ」
「兄さんの枕自分の部屋に持っていってもいいかな?いいよね、だってこれは兄さんへの罰なんだから」
・・・・・
「二人共起きてるなら早く朝食食べてくれ、片付けもできないし学校行く準備もしなきゃいけないから。」
・・・ここにいちゃダメだ。早く脱出しなければ何かやばいことになる。本能がそう呼びかけている。
向こうが声をかける暇なく、バックステップで部屋から飛び出す。扉も閉めてそのまま全速力でリビングに入る。
「どうしたの神保くん、そんなに息を荒くして寝ている妹さんたちに欲情でもしたのかしら?」
「残念ながら妹を見て欲情じゃなく恐怖を覚えたね。」
一瞬でかいた汗をぬぐいながら乱れた呼吸を整える。
「にいちゃんあそこはもっと踏み込んで突っ込みを入れてよ。ボケた意味がないじゃん」
2階から鈴におんぶされて瑞樹も降りてきた。
「お前は誰かにおぶってもらわないと、朝降りてこれないの?」
「にいちゃん、話をそらすなよ。どう、さっきのどきってした?」
いつもだったらすごい眠たそうな顔をしてる時間なのに、ニヤニヤと距離を詰めてくる
「しねえよむしろ恐怖を感じたよ。久々だったよあんなに一瞬で怖いと思ったのは。」
すると鈴の背に乗ったままなのに、やれやれと言わんばかりのため息をつき。
「ひっどいなぁにいちゃん、もっとさなんていうの。こう、良かったみたいなの無いの?」
「実妹に対してなんて答えればよかったさ。それよりごはん食べて今日も学校あるんだから。」
三人分のご飯をよそってきた俺を園木がゴミを見るような目で見てくるが、何か言ったら心を砕かれそうなので見なかったことにする。
「神保くんの朝はいつもこんなに騒がしいのかしら?」
「大体こんな感じだけど、いつもはこれほどまでにひどくはない。」
園木の疑うような視線は食事中続き、次女三女の暴走の悩みと合わさり食事が今朝は喉を通らなかった。
学校に到着し自分の席についていつもの態勢になる。
家よりも、自分の部屋よりも、今この小さなスペースが一番の癒しだ。
「おっす神保って、また朝からそんな格好かよ、もう少し真面目な感じにできんのかね君は?」
まだ午前の授業すら始まっていないからか元気そうな木村の顔がなぜか腹が立つ。
「学校に来てる理由が可愛い子を探すがメインの人間にだけは、そういうこと言われたくねえよ。」
「あんだよ、つれねえな。なんか面白いことでもあったんか?何か聞かせろい」
「なんもねえよ、ただいつもよりも朝から面倒臭いことが多すぎて疲れてんだよ。」
「なんかあるんじゃねえか、聞かせろてか聞かせてくださいお願いします。」
「暑い暑苦しい、寄るな汗臭い見苦しい。鬱陶しい。」
涙目で懇願する木村を無理やり引き剥がす
「あなたは家でも学校でもいつも五月蝿いわね。」
「「・・・・・・・」」
あ、来ちゃった。
来るのはわかってたさおんなじクラスだもん。でもさ、もっとスルーされると思ってたからさ、あと、さらっと爆弾落としやがった。
「神保。さっき園木さんが言った。家でも学校でもって、どういう意味だ?」
あ・・・木村の目がマジだ。
「もしかして、お前のさっき言ってた。面倒臭いことが多かったって、園木さんが関係しているか?」
やばい、さっきまで明るく談笑してた、非リアの野郎どもの目が怒りに染まりつつある。
「関係してなくはない、だが、主な原因は俺と妹達だから。園木はあくまで+αでややこしくしてくれただけだから。」
「それで、お前はあの可愛い妹さん達だけじゃなく、園木さんまで貴様の毒牙にかけたというのか?」
やっべえよ、こいつら誰の頭がサザエさんみてえだって?って言ってる時の仗助みてえな殺気放ってるよ。
「全員隊列を組め。奴を・・・神保剛志を生きて返すな」
どこかの最先端進学校の二年の最低クラスのような状況で、園木に対して怒りを燃やしながらあのバカどもをどうやって全滅させようか考えながら、サバイバル鬼ごっこが始まった。
・・・・こうして俺の安らげる場所がまた一つ減ったのだった。
お久しぶりです。
そして、すみません。
卒業&入学とかくペースが落ちてしまい、別の方も3ヶ月かかってやっとの更新です。
できるだけ早く更新できるように頑張りますので、読者の皆さんよろしくお願いいたします。