第五話
いつもよりも重い気分で鍵を開け家に入る。
靴を確認すると、まだ妹たちは帰ってきてないようだ。
「とりあえず上がってくれ、本当に泊めるかどうかは俺の一存じゃ決められないから。」
「ええ、そうさせて貰うわ」
園木は丁寧に靴を揃えてから、俺の後に続いてリビングに入って来た。
「適当に座って、あと緑茶と紅茶・インスタントだけどコーヒーなにがいい?」
「紅茶をお願い、砂糖とミルクはいらないわ」
「・・・・・」
「・・・・・」
・・・辛い、何これ人ん家来てんのに話しかけんなオーラ全開って、今すぐにでも逃げたいんですけど。
「そんなに緊張しなくても大丈夫よ、別にあなたに好意があってあなたの家に居候したいと思ってるわけじゃないから、あなたが緊張するような展開にはならないわよ。」
何?俺何か怒られるような事したっけ?
「悪いが俺が緊張してるとしたら、お前のことじゃなくていもう「たっだいまー、にいちゃんだれかきて・・・」ちくしょー」
最悪だ、予想してた中で多分こいつが一番話を聞かないであろうと思っていた奴が、一番最初に出会ってしまった。
「にいちゃん、夜が楽しみだね」
入ってきたときはいつもの明るい笑顔だっのが、園木以上に冷たい目となり怖いことだけ行って部屋を出て行った。
「終わった・・・。俺夜あいつらに勝てる気がしない」
「あなたの妹さん、随分と冷ややかな顔ができるのね、あなたと違ってとても優秀そうだわ」
今朝あったことを知らない園木はあくまで客観的に見ているだけであった。
「あの兄さん、瑞樹ちゃんどうしたんですか?あんな・・・」
「スズ待って話だけでもいいから聞いて、その場だけで判断するってバカなことはしない子だと思ってるから話を聞いてお願い。」
一瞬で表情が氷点下になりかけたスズに、今にも土下座しかねない勢でお願いする。
「えっと・・・じゃあ、言い訳だけ聞いてあげます。」
スズの分の紅茶を用意して園木のいる机ではなく、テレビ前の机に移動した。
「えっと・・・、兄さんあの女の人は誰なんですか?」
「あの・・・、この前言ってたヤクザの人たちいたじゃん。そこの組長の娘が俺を組に引き入れたいから、俺の学校にやってきて昨日襲撃されたかと思ったらなぜか今日から居候するって言い出して聞かなくなっちゃって・・・」
俺が言い訳し終えると複雑そうな表情で俺を見て
「兄さん、断れなかったんですか?それとも断らなかったんですか」
その目にはさっきまでの複雑そうな何かを考えるようなものではなく、浮気でも疑ってるんじゃないかという意図が見えた。
一旦園木の方を見てから鈴に顔を近づけできるだけ小さい声で
「ノー、と言う前にあいつの中では決定事項だったみたいでな、答えられなかった。」
顔は近づけても目線はどこか遠くを見て言わないと言えなかった。
「兄さんはもっとしっかり自分の意思を他人相手でも、貫けるような人になるべきです。」
返す言葉も見つかりません・・・
「でも、なってしまったのなら事態を改善させるために考えなくてはいけませんね、どうしましょうか」
「多分今朝のことも含めて夕食の時に兄妹会議やるんだよね。」
俺の刑罰は今朝のことプラスαで一体どんな判決が下されるのか、今から心配で手が震えてきた。
「兄さん、全身が小刻みに震えていますけど大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃない・・・瑞樹が怖い」
夕食を作らないで部屋にこもろうか本格的に考えていたら、流石に飽きてきたのか園木が声をかけてきた。
「ねぇ、神保くん一体いつまでお客を待たせる気かしら?」
「人んちに家主の許可も得ず、勝手に居候を決定して来るような人間を客と思ったつもりはないんだけど。」
園木は冷たい表情でこちらを見下ろすように睨んでくる。
「とりあえず、使ってない和室を掃除しとくからしばらくテレビでも見て待ってろ。」
買ってきたものを冷蔵庫に詰めて、鈴に掃除を手伝ってもらう。
使ってなかったとはいえ、たまに鈴が掃除をしていたらしく全体的に片付いていて軽く掃除機をかけたり、空気の入れ替えをするだけで掃除は済んだので、一旦休憩していると鈴が隣に来た。
「兄さん、大丈夫なんですか?」
鈴としてはやはりヤクザの娘というところが怖いらしく、不安げな表情を浮かべていた
「兄さんの貞操が取られないか」
・・・・・前言撤回、流石だぜぇ家の姉妹たちは。
「大丈夫、この家の中じゃ最強だから簡単には奪われない」
思わず苦笑いになってしまった。
「心配するなら夕食の方が先だ、そろそろ紅波帰ってくるだろし、瑞樹も夕食の時間が遅れたらそれでも文句言いそうだし」
時計を見ればもう六時半になるところだった。
「今日の夕食はご飯と味噌汁とアジが安く手に入ったのでアジの塩焼きと、わかめときゅうりの酢の物です。」
役割分担は俺がアジと味噌汁、鈴がご飯と酢の物で調理開始
「神保くんって料理できたのね、以外だわお金稼ぐことしかできないと思っていたのだけれど」
夕食を作り始めたところでふと園木が台所に来て、なかなか失礼なことを言ってきた。
「何を言うんですが、すごいんですよ我が家の兄さんは掃除・洗濯・料理に私たちの面倒を見てくれるんですから」
「・・・神保くんの妹さんたちがブラコンになった理由がわかったわ」
園木は呆れたような目で俺と鈴を見ていた。
「邪魔しに来たんだったら、もう少しかかるからテレビでも見ていて頂けませんかねぇ。魚焼くのに少し時間がかかるんで」
魚屋のおっちゃん安くしてくれたはいいけど、内蔵処理していないやつだったので仕方ないので捌いていると。
リビングに瑞樹が入ってきた。
「にーちゃん腹減った、あと、夕食後は兄妹会議で、にーちゃんに罪はかなり重いからね。」
不安になるようなことを言って、ソファーにふんぞり返ってテレビを見始めた。
会議の結果、今俺が捌いているアジのようにならないことだけを必死に心の中で祈るばかりだった。
投稿遅れてすみませんでした。
空気だった次女の鈴をメインで話を作ってみました。
次の更新は未定ですが、これからもやめず完結させるまで続けていきたいと思っています。