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第二話

 毎日恒例の朝を乗り越え学校の机に突っ伏していると、頭上から朝から楽しそうな声が聞こえてくる。

 「おーいどうしたよ神保、朝っぱらから机に突っ伏して」

 顔を上げると、少しイラっとする笑を浮かべた木村が立っていた。

 「親が世界を飛び回ってるから、朝早く起きて朝食作ったりとか色々と大変なんだよ。」

 機嫌の悪い声で返すと木村は笑いながら、「それはそれは」と言ってきたので再び机に突っ伏すことにした。

 木村は流石にいじってくることはなく、別の友達のところへ行った。

 目を閉じて10分も経たない内に始業のチャイムが鳴ったので顔を上げると、担任が教室に入ってくる。

 そして、いつものように教卓に立ちHRが始まり点呼を終え、いつもだったら連絡事項を言う時になってからがいつもと違った。

 「え~、今日は転入生がこのクラスに来ることになりました。」

 一瞬にして教室は大騒ぎになった。

 確かに、一年の四月の終わりに転入だなんて普通だったら考えられない。

 「皆さん一回静かにしてください。確かにこの時期になると転入という変わったケースですが、仲良くしてあげてください。」

 担任が「では、入ってきてください」と、教室の外に声をかけるとさっきまでの騒ぎが嘘のように、教室は静かになる。

 ゆっくりとドアが開けられ入ってきたのは、ダークブルーの髪を腰のあたりまで伸ばした凛とした雰囲気の女子で

 たちまち野郎どもは歓喜し、女子は落胆の声を漏らした。

 一旦クラスを静かにさせてから、担任が転入生に自己紹介をさせる。

 「園木縁(そのぎゆかり)です。よろしくお願いします。」

 その表情はまるで氷のようだった。


 SHRが終わり一時間目の授業の準備をしながら、チラッと転入生を見てみるが。

 朝の挨拶がアレだったこともあり、普通だったら周りを取り囲まれ質問攻めが普通なのに誰ひとりと近くにいない。

 「神保どう思うあの子」

 いつの間にか隣に来ていた木村が聞いてくる。

 「朝の挨拶がアレだったから、誰ひとりと近づいてないな」

 現状を見たまんまに報告すると

 「いや、そうじゃなくて」

 少し溜めてから

 「結構かわいくない?園木さん」

 「やめとけ、あれは確実にドSだ心折られるぞ。」

 木村の目はまるで新しいおもちゃに興味津々な子供のようだ。

 「甘い、甘いぞ神保。ああいうのはなツンとした態度とは裏腹に、誰かに優しくして欲しいキャラだ」

 やけに自信ありげな顔をしていて、友人として不安になるがふざけ半ぶんで

 「攻略できるんだったら行ってこい、ギャルゲ脳」

 と、送り出してしまったことを五分もしないうちに後悔した。

 木村は・・・まあ、見事に心を粉砕されて帰ってきた。

 ある意味予想通りだったが、流石にここまでひどいと目も当てられない。

 一時間目の授業中もずっと上を見て、口から魂が抜け出ているんじゃないかと思ったほどだった。

 そして、ドS転校生の騒動も昼休みには落ち着き、昼食中の俺は未だに死にかけの木村を励ましていた。

 「今回は・・・あれだよ・・相手が悪かった。転校初日に軽薄そうに話しかけられたら、あんな感じの女の子だったああなるって。」

 「・・・・でもさ、あんなに的確に罵倒するか?初対面の子にあそこまで罵倒されるなんて初めてだった。」

 「そんなに落ち込むなって。大丈夫、まだ俺たちの高校生ライフは始まってから一ヶ月ちょいしか経ってないんだぜ。まだまだ先にはいいことがあるだろうさ。」

 頑張ったかいがあり、五・六時間目は普通に授業を受けていた。

 

 そして放課後にはほとんど木村の精神は回復したのか、何人か野郎を連れて遊びに行くようなので誘ってくれたが、夕食の準備があるので断って帰宅途中。

 ・・・・・背中に殺気を感じるが、明らかに気づけとばかりに放ってきているので、無視をしながら家から遠ざかるように、そして全力で戦える場所を探しながら歩く

 しばらく歩いたところで、公園に入りこちらも臨戦態勢を示すため荷物を下ろして、軽く準備体操をしながら声をかける・

 「いい加減出てきなよ。めんどくさいけど相手になってあげるよ。」

 気を張って周囲に意識を集中させ、どこから攻撃が来てもいいようにする

 「試合のときとは随分とキャラが違うのね、チャンピオンさん」

 「この性格のまま戦ってたら、観客がしらけちゃうからね。しかし、俺に何の用?園木さん」

 「ええ、父様が神保くんを組の戦力にしたいと言って聞かなくてね、君が組に入るように説得してくれって言われてきたのよ。」

 まさか、園木さんが何回か前の試合のあとにスカウトもらった組の組長の娘さんとはね

 「その話だったら、何度持ちかけられても首を縦に振ることはできないって、俺あの時いったはずなんだけど?」

 「それでも諦められないみたいよ。現に私を君の学校に無理やり転入させてるんですもの。」

 うわ~・・・迷惑、まわり巻き込みすぎだろ。

 「だから、ここは私のためにうちの組の鉄砲玉にでも何にでもなってちょうだい」

 そして、こっちは超無理やりなんですけど・・・

 「何度言われても無理だって、俺だって学校行ったり妹たちの面倒見たり食費稼いだりと大変なんだから、そんなことに時間割けないんですよ。」

 「そう・・・なら仕方ないわね、少し武力行使させてもらいましょう。」

 そう言った園木さんの後ろからは、ざっと10人くらいのいかにもチンピラが出てきた。 

 「お嬢、こいつやっちゃっていいんですよね?」

 「ええ、でも半殺し程度にしておいて、父様が気に入ってるみたいだから。」

 全員チンピラ装備は角材と鉄パイプ

 「これだけの人数じゃあ俺は止められないよ。」

 拳を構えて、一番近くにいるやつの懐に素早く潜り込み、左肘を後ろに引き加速させた右アッパーを顎に決める。

 左足を軸に体を回転させ、右ハイキックをこめかみに決めて一人をK・O

 「どうする?まだ続けるなら受けて立つよ」

 余裕の笑を浮かべて残り問いかける。

 「どうするじゃねえぞガキ、おい、殺っちまえ」

 園木の隣にいるチンピラの命令で俺の周を取り囲み、全方位からの角材や鉄パイプなどで一斉攻撃を仕掛けてくるから、少し本気を出すことにした。

 「時よ歪め」

 瞬間、チンピラ達の動きがゆっくりになり俺の動きが加速する。

 初めに目の前の敵の顔面に左ジャブ後ろには鳩尾に右足での蹴りを決める、そして足を戻す反動を使い左足で右側にいるやつの顎を蹴る。

 体勢を戻し腰を落として拳を構える。残りは6人一気に決める。

 体をひねり右フック。上を向くような動作で加速させた左アッパー。体を回して加速させた左ミドルキック。腹の中心に掌底。右のハイキックを首に。最後に右のストレートを顔面に

 「歪みよ戻れ」

 時間の流れを元に戻す

 「また聞くよ。どうする?」

 「予想以上に神保くん強いのね。いいわ、今日は引いてあげる」

 表情一つ崩さずクールに去るねぇ

 「いつ来たって無駄だからね。めんどくさい人と関わるのはテっつんだけで十分だからって、聞いてんのかなぁ」

 とりあえず、荷物をまとめて近くの商店街にでもよって帰るとしますか。



 そして自宅。

 夕食の準備が少し遅くなってしまったので、鈴に手伝ってもらいながら作る夕食は唐揚げとサラダ

 「兄さん、今日は随分帰りが遅かったね」

 「帰宅途中で変な人たちに襲われかけたからね」

 「え!?大丈夫だった?怪我とかは?」

 「大丈夫大丈夫、兄ちゃんは化物級に強いから全員返り討ちにしてやったよ。」

 手を止めて心配そうな顔で見てくるが、安心させるために笑顔で答える。

 「でも心配なのは俺じゃなくてお前たちに何かあるかもしれないから、そっちの方が心配だよ」

 「大丈夫紅波ちゃん強いから守ってもらうよ」

 「紅波も強いけどね、喧嘩的な強さじゃないからなぁ」

 俺が揚げ物で鈴がサラダをやっていると、匂いに釣られて瑞樹が台所にやってきた。

 「にーちゃんご飯マダー?お腹減ったよ、あと、今日帰ってくるの遅いよー」

 「悪い悪い、帰宅途中に色々とあってね。それより紅波は、帰ってきてから見かけないけど。」

 「紅波ちゃんなら兄さんがよくトレーニングに使ってる地下室で、最後の大会に向けて練習してますよ」

 そういえばあいつも中学三年生だもんな

 「我が妹ながら頑張りものだな。兄としては嬉しい限りだよ」

 「兄さんも頑張ってるじゃないですか。学校行きながらまあ、職業としてはアレですけど頑張ってお金稼いでくれて」

 「両親ともに行方不明状態だから、俺が頑張ってお前たちを育てていかなきゃいけないんさ。っとそろそろ出来上がるから瑞樹、紅波呼んできて」

 明日からは少しテっつんに頼んで妹たちは護衛とまで行かなくても、監視は付けてもらえるようだったら頼むかね。

すみません。

ホントだったら先月に投稿しようかと思ってたんですが、予定が詰まりすぎて片方しか投稿できませんでした。

 これからもゆっくりな投稿ペースになると思いますが、気長にお待ちください。

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