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口裂け女:ダークサイド  作者: 狭川ゆうき
2/2

第1話:出会い

 それほど大きいとも小さいとも言えない田舎のような街の中。

 一人の少年があくびをしながら歩道を歩いていた。

 その名は黒咲三郎。高校1年生である。

 退屈そうな少年は下校途中、騒がしい声が聞こえてきた。

 なんだと思い声のする方へ振り向くと、そこには何人もの男女の生徒たちがとる女子高生に石を投げていたのが見えた。


「またかよ・・・」と、ため息を吐いて。

「おい、お前ら!女をいじめんな!!」

 と、怒鳴り声を上げながらその女子高生を庇うように前に立ちはだかった。

 だが、その時に投げつけられた石が黒咲の頭に当たってしまった。

 流血しながらも、鋭く他の生徒たちを睨み付ける。

 血のおかげもあって凄みが増しているようにも見えた。

 

「い、行こうか。こんな奴ら放っといてさ・・・」

 黒咲の迫力のおかげかは知らないが、黒咲が乱入した事で生徒たちは逃げるようにその場から立ち去っていった。

「ったく・・・。あいつらめ・・・おい、大丈夫かい?怪我、してないか?」

「う、うん・・・。あなたの方こそ・・・大丈夫なの・・・?血・・・流れてるじゃない・・・」

「ん?これかい?平気、平気!ただのかすり傷さ!唾でも付けときゃあ、治るっての」

 元気に振り舞う黒咲の笑顔。

 だが、彼女は申し訳なさそうな顔をしている。

 彼女は頭脳明快で運動神経が超人とも思えるほど。しかも、アイドルのようなか可愛らしさもあった。

 そんな彼女なら学校一の人気者になれるはずだった。

 でも、今は違う。

 大きなマスクを被らなければならなかった事が、彼女を不幸への道を歩ませたのだ。

 あんな事があったから・・・。




 2週間前・・・







 黒咲はクラスの同級生たちとサッカーをしていた。

 が、黒咲はそれの選手が交代するまでの待機している。

「はぁ・・・面白い事、ないもんかなぁ・・・」

 と、ぼんやりと呟いていると、

「あれば苦労してねぇよ・・・。それよりも見ろよ、始まるぞ」

「んん~・・・?」

 黒咲の同級生が指差す先を見やる。

 少年が見やった先に100m走をしている女子高生たちがいた。

 その中で誰よりも差を付けて全力で走っている女子高生がいた。

 彼女の名は小鞠睦月だ。

 黒く真っ直ぐに伸びたロングヘアー。背は170cmもあり、モデルのようなスマートな体形は彼女の魅力をさらに大きなものにさせていた。

「すっげー・・・。見たかよ?彼女、100mを7秒で走ったぞ?オリンピック狙えるんじゃねぇの、あれ」

「金メダルになったら日本の鏡かもね・・・」

「それだけじゃないよな。スポーツなら何でもこなせるし、空手や柔道まで習ってたというじゃねぇか。脳筋かと思いきや、テストでもいつも1位らしいぜ。万能すぎんだろ、あれ。眩しい。眩しすぎるよ!俺の嫁にしてぇな!」

「へいへい、勝手にほざいてろよ。まぁ・・・嫌いじゃないんだけどね。でも、何か変な感じがするんだよな・・・」

 黒咲はぼんやりと小鞠を見ていた・・・。そのせいで選手交代の合図に耳を貸す事はなかった。



 夕刻、帰り道に向かっていた黒咲は街中でカフェの中で小鞠を目撃した。

「あそこにいるのは小鞠さん・・・。だよな?あの二人は?」

 一人はポニーテール。もう一人はブロンドのような髪をしていて、小鞠に負けず劣らずの美人だ。

 年は小鞠より上に見える。

 小鞠の姉たちだろうか。楽しそうにお喋りをしているように見えた。

 すると一人の中年男性が彼女たちの所へやってきた。

 あの二人のどちらかの彼氏だろうか?

 ちょっと太っていてイケメンとは言えないが裕福そうではあった。

「へぇ~・・・。なんか知らないけど彼氏もいるのか。やっぱり家系で凄そうだな、彼女たちって・・・」

 自分には関係ないけどね、と思いながら歩いていった。

 



 休日の土日が過ぎ、黒咲は目の周りが黒くなっていた。

 登校前日の深夜に宿題をしていなかった事に気付き、徹夜で宿題に神経を注いでしまったせいだ。

 頭が良くないだけに、結局は朝を迎えてしまったわけで・・・。

「はぁ・・・。こんなはずじゃなかったのに・・・。ついてないっすね、俺・・・」

 ガクッと落ち込みながらも学校に着くと隣のクラスで何やら騒がしくなっている事に気付いた。

 なんだと思い、隣のクラスに覗き込む。

 そこには小鞠睦月が椅子に座っていた・・・。

 まではよかった・・・。

 彼女はとびっきりに大きいマスクをしていたのだ。

 マスクなら別に大きくなくてもいいのに、一体・・・?

 黒咲は首を傾げると、そのクラスの男子生徒が彼女のマスクをパッと取り上げた。

 そして一瞬、静まり返った。

 本当に静まり返ったのだ。音一つなく、不気味に。

 その理由は誰もがわかる事だろう・・・。




 












 彼女の口がまるでヤケドのような外傷があり、それどころか皮が大きく剥かれているようだった。

 いや、肉も抉られているようだ。

 どう見えて酷い有り様だった。

 傷は口だけのようでそれ以外は何ともないのだが、それでもあの美貌はどこへ行ったのか・・・。そう思わずにはいられない。

 それは誰もがそういう反応だ。


「か・・・。返して・・・!!」

 彼女は懸命に声を出す。

 痛みなのか、口を開ける事に辛そうな表情をしているようだ。

 だが・・・。


「へっ、誰が返すかよ。バケモンみてぇな口になっちまったおめぇによ!!」

 心に突き刺さるような言葉。

 その男が合図だったかのように・・・。


「そうだ!そうだ!こんな奴、ここに来るだけでも反吐が出るぜ!どうして学校なんかに来たんだよ!?」

「出てけ、出てけ!」

「病気が移るだろ、あっち行け!」

「やだ、あんたって妖怪女だったの?私たちを騙してたの!?」

 そして・・・。

「さっさと死ねよ!屋上が飛び降りれよ!!」

 誰が言ったかは知らないがその言葉に彼女は席を立ちパッと走り去って行った。

 少年は小鞠とすれ違う際、彼女にあふれんばかりの涙が溢れていたように見えた。


「おい・・・!」と、黒咲は怒鳴る。

「あん・・・?んだよ、おめぇ」

「最低だな、てめぇら・・・。口が変わっただけでクラスの嫌われ者にするなんてよ。薄情すぎんだろ、人でなし野郎共がッ!!!」

「んだと、てめぇ!!」


 黒咲は男たちに目もくれず、小鞠の所へ向かって走って行った。

 そして屋上・・・。


「えっと・・・屋上で、いいんだよな・・・」

 屋上まで走った黒咲は周りを見渡す。

 そこには柵に登ろうとする小鞠の姿が。

「お、おい!早まんな!!」

 黒咲は駆け出して小鞠を掴む。

「は・・・。放して・・・!飛び降りるの・・・!飛び降りるの・・・!!」

「いい加減にしろ!死んだら解決になるわけがねぇだろ!!笑いもんにされちまうだけだぞ!!」

 どうにか柵から引き剥がす事が出来た。

 だが、彼女の興奮は止まらない。

「どうして・・・。どうして止めるのっ・・・!?あなただって、この顔がっ、この口が怖いんでしょう!?」

 醜い口の先が尖ってるようにも思えた。まるで裂けてるかのように。

 だが、小鞠はそんな事には見向きもしなかった。

「はぁっ!?何を言ってんだ、お前は!!口がどうなった所で、お前は何か変わったのか!?どんなに醜い姿になろうとも、お前はいつものお前だろ!!皆の人気者で憧れなお前だろ!?俺なら絶対に届かないお前だろう!!」

 少年の気迫の言葉に彼女は少しハッしたようだった。

「でも・・・。でも・・・。こんな私・・・。誰も好きになってくれないよ・・・。私は死ぬまでこのままだ・・・。このままなのよ・・・!!だから・・・ッ!?」

 小鞠の声が止む。

 止むざるを得なかった。

 何故なら・・・。


 黒咲が小鞠を抱きしめたからだ。

「俺は嫌いにならないよ・・・。絶対にな・・・」

「な・・・なんで・・・。どうして・・・?どうして・・・?」

「あんたほどじゃないけれど、惨めな事にあった人たちを何人も見てきたからな・・・」

「・・・えっ・・・?」

「とにかくバカな事は考えるな・・・。学校に行きたくないなら無理して行くな。寂しくなったら俺が会いにいってやるよ。だから、今は死ぬな。な?」

「う・・・。うぅっ・・・。うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!」

 彼の言葉に大泣きする小鞠。

 小鞠がこんなに泣いた事は一度もなかった。今までずっと・・・。

 そんな彼女が同じ学校とはいえ、クラスが違い声を互いに掛け合った事もない他人を相手に泣いたのだ。

 そんな彼女をそっと優しく抱きしめる少年。

 これが彼女との本当の出逢いだった。



 話は戻り、2週間後。





「久々に学校へ来たのか・・・?悪い、知らなかったよ。俺に始めから言ってれば付きっきりにしたのに」

「ごめん・・・。ごめんね・・・」

「まぁ、いいさ・・・。またろくでもない連中が集まったら大変だもんな。家まで送ってやるよ。家に着くまで、それ取るなよ?」

「う・・・。うん・・・」

 小さく頷く小鞠。

 どこか元気がない。

 いじめのせいなのか、やっぱり。


 そして彼女の家までたどり着く。

 実はまだ彼女の家に入った所か、家まで行った事もなかった。

 なので、今日で初めて彼女の家を見る事になる。


 さすがに億万長者のような家ではなかったが、それでも高そうな一軒屋で庭もとても広かった。

 自分が住んでるオンボロなアパートとはまるで桁が違う。

 一度は住んでみたいな、こういう家。


 すると、彼女の家のドアが開く。

「睦月!?睦月なのね!?」

「ね、姉さん・・・」

 やっぱり姉さんなのか。

 少年はとりあえず挨拶をする

「すいません。あなたの妹さんをここまでお迎えしました」

「どうも、すいません。うちの子が・・・。迷惑だったでしょう?」

「いえ、とんでもない。こんな美人さんと隣で歩くだけでも・・・ぁ」

 思わず本音がポロリ。

 今の聞かれたか!?

「いや、その!そういうわけじゃないっす!これはその・・・えっと、あっと・・・」

「ふふっ。面白そうな子ね。ひょっとしてあなたが少年君?」

「ふぃ!?あっ、はい。そうっすけど・・・。どーして俺の名を?」

「私は次女よ。あなたの事は妹から聞いたわ。あの時は妹を救ってくれて本当にありがとうね」

「いや、人として当たり前すぎる事をしただけですよ。人間はこうでないとね」

「ふふっ・・・。さすが妹の彼氏ね」

「そうそう、彼氏としてもとーぜん・・・。は、はい?」

「ちょ、ちょっと姉さん!?」

 唖然とする黒咲。

 小鞠は頬を赤らめて慌てて言った。

「あら、ごめんなさい。さっ、あなたは早く家に入って。誰かに見られたら大変よ」

「う、うん・・・。それじゃあね、少年君・・・。本当にありがとう・・・」

「おう、またな!」

 黒咲に手を振って家の中に入っていく。

 すると次女が思いがけない事を言った。

「ねぇ。頭に血が出てたようだけど・・・。大丈夫だった?」

「えっ?ああ、これはこ・・・、じゃなかった。睦月さんに投げた野郎たちの石を当たっただけっすよ」

「つまりあなたは何もされなかったのね?」

「まぁ、そうっすけど・・・。どうしかしたんですか?」

「う、ううん。なんでもなければそれでいいの。その・・・」

「はい?」

「またお願いね。でも、無理はダメよ?それろ彼女が変な事をしようとしたら私たちに教えてね?」

「変な事?そうするような人には見えませんよ」

「そうなんだけどね・・・。それじゃあ、またね」

「はい、また」

 次女はドアを閉めた。

「変な事?何の事だろうな・・・」

 不思議に思いながらも黒咲はその場を後にする。



 しかし、さっき次女が言った事にモヤッとしたものを覚えていた。

 黒咲は気になった事はとことん突き止めたい好奇心が人一倍あったからだ。

 時間もあるし、公園でも行って考えるか・・・と、公園へ向かった。


 その公園には立ち入り禁止のテープが貼られ、見張り役の警察官が数名ほどいた。

 そして何人もの野次馬たちが集まっていた。

 何か事件か?

 怪訝な表情を浮かべる黒咲に突然「なぁ、君。ちょっといいかな?」と声を掛けられた。

「ん?」

 振り向くとそこには50台前後のいかにもおっさんらしい服装の刑事がいた。

 何も悪い事をしてないのに、まさかの事情徴収!?

 ・・・んなわけないよな、多分。

「なんですか・・・?」

「うむ。ここで殺人事件があってな。どうやら君と同じ高校みたいなんだ」

「えっ!?マジですか!?そんな・・・」

「それでこの人なんだがね・・・」

 と、生徒帳を見せられる。

 まぁ、指紋の事もあるから透明な袋の中に入っているわけだが刑事ドラマと同じなわけである。

 それでその写真に写っていたのは、小鞠がマスクを被って初めて登校した時に無理矢理マスクを剥がして彼女の今の現状を知らしめ、あげくの当てには心無い事を言いやがったあの男子生徒だ。

 とても許せる事をしたわけじゃないが、殺される事になるとはちょっと気の毒だ。

 それしても一体、誰がこんな事を?何のために?

「君は被害者と同じ学校の子だろ?何か知ってるかね」

 心当たりはあるかもしれない。

 いや、気のせいだろう。

「いえ、心当たりもないですね・・・」

「そうかね。もし、何か思い当たる事があればいつでも我々に言ってくれ。ご協力感謝だ」

 刑事はニッと笑い、去っていく。

 黒咲は浮かない顔をしていた。

 まさかな・・・。

 でも、そうだとしても俺は・・・。




 当日の深夜。


 黒咲と同じ高校に通う女子高生が懸命に逃げていた。

 人気のない歩道で「助けて!」という声が響く。

 だが、それも虚しく何も答えなかった。

 後ろから何かの足音意外には。

 どこまで走ったのだろうか。

 女子高生はトンネルへ来ていた。

 後ろを振り返ると誰もいない。

 逃げ切れたのか?

 ホッと胸で撫で下ろす。


「ワタシ・・・キレイ・・・?」


 女の耳元でとても冷たい声がした。

 振り返るとそこには前髪で顔を覆った女がいた。

 マスクを剥がした顔に女は絶句する。

 そして腰を抜かしたのか、ガクッとその場にしゃがみこんでしまった。

 恐怖に慄き、金縛りにあったかのように体が動かなかった。

「いや・・・いや・・・」

 声もまた小さく、開いた口は大きかった。

「ワタシ・・・。キレイ・・・?」

 再度、聞いてくる。

 もしかすると、答えれば逃がしてくれるかもしれない。

「き・・・。キレイです・・・」

 と、懸命に声に出す。

 マスクをしていた女はニヤッと冷たく微笑む。まるで獲物を追い詰めて喜んでるかのようだ。

「コレデモ・・・?」

 そう言い、マスクを外す。

 そんな光景を目の当たりした女子高生の悲鳴がトンネル内に響いた。

 身の毛のよだつ有り様に。 

 女の綺麗な手には美容師が使うような大きなハサミを軽く握られていた。

 ハサミの先をそっと女子高生の口の中へ入れていく。

 不気味な女にハサミを入れられた女子高生はまだ恐怖で体が動かない。

 最早、蜘蛛の糸に絡まった蝶のように。

 そして次の瞬間・・・。


 女子高生の後頭部にハサミの矢先が赤く染まって顔を覗かせた。

 ハサミを引っこ抜くと女は力なく倒れ、動く事もなかった。

 汚れのない綺麗な手もまた朱く染まっていた。

 その手を近づけて舌で甘美なまでに舐める。彼女は嬉しそうに微笑んでいた。


「まダ・・・。まダ足りナい・・・。まダ・・・」

始まりました、口裂け女の話!

駄文ですが、これからもよろしくです!!

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