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口裂け女:ダークサイド  作者: 狭川ゆうき
1/2

プロローグ:始まりの闇

※本当にご注意ください。

 それは静かな夜だったな。


 いや、静かすぎると言ってもいい。


 今は冬の季節だから生き物の気配が感じられないのはわかる。


 それでもあまりに静かすぎた。


 まるで【何か】に怯えているようだ。


 そんな夜の中を一人の男子高校生が歩いていた。


 体格が良く、髪を金に染めていた彼はタバコを吸いながら公園へとやってきた。

 理由は特にない。

 というよりも、何故かここへ来てしまったという感じだ。

 何かに誘われたかのようだが、彼はそれさえ気付いていなかった。


 すると彼の背後から足音が聞こえてきた。

 自然と足音をする方を見ると、そこには一人の女がいた。

 朱いロングコートを来た若々しい女が佇んでいたのだ。

 しかし、闇夜のせいでそこまでしかわからなかった。

「なんだ、おめぇは」

 男が怒鳴り声を上げる。

 すると、女が足を動かし歩き出した。

 そして街灯の光で彼女の姿がやっとはっきりとわかった。

 とはいえ、長く黒い髪で顔を隠していて口元にはマスクを被っている。


「お前、あの時の女か!なんだよ。クラスの嫌われ者にしちまった俺に復讐でもしよってか?」

「・・・・・・・・・」

 女は無言のまま、彼の事を見つめている。

「んだよっ、だんまりかよ!まぁ、その方が不気味も増すよな?こんなバケモンみてぇ顔じゃあ、夜でなければ歩けねぇし、おめぇにはお似合いだよ、妖怪女さんよ!!」

「・・・ワタ・・・イ・・・」

「んぁっ?聞こえねぇよ、バァカッ!はっきり言いやがれや!!」

「・・・ワタ・・・キ・・・ィ・・・」

「だから聞こえねぇっつってんだろッ!!」

「ワタシ・・・キレイ・・・?」

 やっと声がはっきりした。

 しかし、彼は苛立ちを強め、さらにこう言い放った。

「はぁっ!?てめぇのどこが綺麗なんだよ!!そんなに醜い顔じゃあ、ブタ女よりもひでぇよ!!誰もがそう思ってんじゃねぇの?てめぇの事なんざぁ、誰もそんな事・・・」

 彼はハッと気付き、可笑しく笑い始める。

「そういやぁ、いたなぁっ、そんな奴。あんな顔になってもすっげぇ綺麗だろって怒鳴っていたが、あれは異常だね。どうかしてるぜっ。てめぇの病気のせいじゃねぇの?ああいうのはよぉ。ったく、てめぇもバカだが、あの野郎もバカだぜッ」

 女はスッと内側のポケットに手を入れる。

 彼はその事に気付かず、延々と喋っている。

「あんなバカも学校には置いとねぇよなぁ。そうだ。皆に連絡して奴もおめぇの仲間入りにさせちまうかぁ。そうすりゃあ、あいつも学校に来れなくなって、おめぇも来れなくなるわなぁ?まさに一石二鳥たぁこの事だぁ。アハ、楽しみで仕方ねぇよぉん」
















 グサッ・・・。






「えっ・・・?」

 男には一瞬、何が起きたのかわからなかった。

 自分の腹を見て、初めて現状を理解した。

 彼の腹に大型のハサミが思いっきり食い込んでいたからだ。

 その腹からピューっと勢いよく飛び出している。

 鮮血が彼の腹に染まり、その返り血で女の体いっぱいに浴びていた。

 ハサミを彼の腹から引き抜くと、信じられない速さで男の腹へ目掛けて刺した。

「うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!???」

 こいつ、正気じゃない!助けてくれ!!そう言いたかったが、激痛がそれを奪っていた。

 ただただ、言えるのは悲鳴だけだ。

 あまりの痛さに倒れこむ彼に女は容赦しなかった。

 激痛に襲われている彼の顔に二つの刃に開いたハサミを近付ける。


 ザクッ・・・。


 彼の両目はハサミで切られた。

 それも紙のように容易く。


「ウギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!」


 両目をやられた事でさらに激痛が走る。

 今までで一番感じた事のない死よりも怖い痛みが。

 それでも女は容赦しなかった。

 無表情で男の腹に刺していく。


 グサッ、グサッ、グサッ、グサッ、グサッ・・・。


 男が動かなくなっても、刺す事をやめなかった。

 ひたすらに刺し続けた。

 いつからか、無表情だった女の顔には冷たくも笑顔に満ち溢れていた。

 こんなに楽しい事だったと、思えるほどに。

 肉を刺す音だけが、夜の公園の中から聞こえていたが、誰もそれを耳にする事もなかった。


 


 これは序の口に過ぎない最初の殺人事件だ。

 本当の恐怖はここから始まるのだ。

 希望はない事もない。しかし、それさせ凌駕するほどの暗闇が空を覆っていた。

 三日月となった月もまた、嗤っていた。

































「ワタシ・・・キレイ・・・?」

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