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「私」が、この世界に来た時のお話。




****************************




「っ・・・・」





元気がとりえだったはずの私は、珍しく風邪をひいて高熱を出していた。





入学したばかりの高校を1日休んで、ベットの上で息苦しさと戦っていた。


そう、私は池上沙羅いけがみ さら。当時15歳だった。





「ぉ・・・かぁ、さ・・・」





母は、私が小学校5年生の時に亡くなった。


それ以来、父と二人暮らし。父は当然仕事へ行っているため、家には一人きりだった。



熱があって苦しいこともあってか、妙に心細く、亡くなって以来呼ぶこともなかった母を呼んだ。

『おかあさん』



苦しいよ・・・



助けて・・・






朦朧するまま、私は意識を失った。























額がひんやりとしたせいか、意識が浮上した。


だれ・・・?



うっすらと瞼を開けると、まだ頭がハッキリせず、頭がガンガン痛かった。



かすむ視界の中で、目に飛び込んできたのは金色と、茶色。そして、白。



「・・・ラ」



金色が動いた。おぼろげながら、それが人の髪の毛だと認識したけど、


どうして我が家に金髪の人がいるのか分からなかったし、考える余裕もなかった。



私の右手に、クっと微かな力が加えられた。


どうやら、誰かに握られているらしい。





「サラ」




今度は茶色が動いた。こちらも人の頭だ。



顔はハッキリとは分からないけど、私の知り合いに金髪も茶髪もいない。


でも、どうして私の名前を知っているの・・・?


人の部屋に入り込んで・・・。










視線を天井に向けると、



否、そこには天井はなかった。



見慣れたクリーム色の天井ではなく、白い、白いふんわりとした布が見えた。幾重にも重なっている。




ここは知らない、場所・・・?



そう考えると、背中に当たるベットの感触もいつもよりひどく柔らかだ。





あぁ、これは夢だ。




熱にうなされて見ているに違いない。



夢の中でも熱を出してるなんて、私って変なの。






「サラ、兄様たちがついてるぞ」



「頑張るんだぞ、サラ」






大きな手に包み込まれている私の右手。


優しく撫でられている私の頭。





どこか心地よさを感じながら、私はまた目を閉じた。


今度目を覚ます時には、きっと父がいるに違いない、そう思って。
























なのに、予想は裏切られた。



息苦しさがウソのようにスッキリした気分で目が覚めた私は、


またあの白い幾重にも重なった布とご対面する。




「え・・・・?」




ゆっくりと上半身を起こし、今自分がいる場所を確認する。


見慣れぬ大きなベット。軽くて暖かい、細やかな刺繍が施されている羽毛布団。


天蓋ベット・・・?


ベットの頭、足元、左部分は完全に柔らかな布が垂れ落ちている。


右だけが布を手繰り寄せて、ふんわりとベットの支柱にくくりつけてある。


そこから見えるのは、知らない部屋。


このベットもさることながら、この部屋もかなり大きい。品の良さそうな調度品の数々が視界に映る。



続いて私は自分を見下ろした。着た事もないような、可愛らしい、肌触りがよいネグリジェのようなもの。


ネグリジェの胸元を掴んでみて、そして気付いた。



「私、こんなに白かったっけ・・・」



寝ていたせいだろうか。寝間着から覗く手の色が、完全な黄色人種であるはずなのに、透き通るような白さになっていた。


それに、気のせいだろうか、手が小さくなったような気がするのは。



首を傾げると、視界に銀色が流れた。



何の気なしに、それを掴む。




「・・・・・・え?」




掴んだのは、銀の髪の毛。



それを引っ張れば、私の頭皮も引っ張られた感触。






「ど、どういうこと・・・?」





胸下で整えられた、さらさらの銀髪。






まだ、夢を見ているのだろうか。さっきの続きだろうか。



でも金髪も茶髪の人もいない。





混乱していると、ドアが開く音がした。その音に釣られて視線を上げれば、紺色の大人しいメイド服のようなものを着た20代半ばくらいの女性の姿が。


彼女はベットに近付き、そうして、その中で呆然としている私に気付いたのか



「っ!サラ様!お目覚めになられたのですね!」




と、みるみる涙を滲ませた。手にしていた水差しと薬のようなものが乗ったトレイがフルフルと震えている。



「サラ様、サラ様・・・あぁ、ミリーはどれだけ心配したことか・・・ジルンアス様もカイルアス様もそれはそれはサラ様のお傍を片時も離れないほどで。先ほど、サラ様の熱が少し下がったとお医者様が仰ったものですから、無理を言ってお二人には休んでいただいたところなんですよ。あぁ、こうしてはいられないですね。すぐにお二人をお呼びしますね。きっとお喜びになりますよ」




ミリー、とは、彼女の名前だろうか。


こちらが何も言う暇を与えないくらいの弾丸トークに、呆気に取られた。


そうして、彼女はそのまま出て行ってしまった。





何、何だったの?


頭の整理が追いつかない。


どうしてあの人はメイドみたいな格好をしていたのだろう。

それに、あの人の髪。亜麻色だった。染めた感じはしない。

顔立ちが・・・そう、西洋人のようだった。





あの人はまた戻ってくるのだろうか。聞きたいことはたくさんある。

でも、何を聞いていいのか分からない。

とりあえず、これが夢という確証は欲しい。


そういえば、誰かを呼んでくると言っていなかったか?




そうこうしている内に、少し部屋の外が騒がしくなり、先ほどのミリーという女性が出入りしていたドアが開き、




「「サラ!」」



と重なった声とともに、二人の男性が駆け寄ってきた。





この人たちだ・・・・さっき、夢で見たのは。

金髪の人と、茶髪の人。心なし、顔立ちが似ている。この二人も西洋人のような顔だ。

見たこともないような整った容貌に、あぁ、やっぱりこれは夢なのか、と思う。



それでも、私の名前を知っているのはやはり疑問だった。




「サラ、もう具合はいいのか?」


「どこか、気分が悪い所はないか?あぁ、起き上がったりして、まだ横になっていたほうがいい」



金髪の人が、私の顔を覗き込み、頭を撫でる。


茶髪の人が、私の背中を支え、そっとベットに寝かせる。



抵抗する余裕もない私は、大人しくベットへ逆戻りした。







長くなってしまったので、一旦きります。

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