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初投稿です。拙い部分もあるかと思いますが、よろしくお願いいたします。

気がついたら、私はココにいた―――――――



なぜかなんて、分からない。


だから、聞かないで欲しい。


それを知りたいのは、他でもない、この私なのだから。





*****************************









「サラ」



「サラ、ここにいたのか」





幾分耳慣れた、この甘ったるい美声を聞いて、私は色とりどりの花をジッと見ていた顔を上げて


後ろを振り返った。もちろんしゃがみこんだままで。




そこにいたのは、2つの美声の持ち主。ジルンアス兄様と、カイルアス兄様。


「ジン兄様、カイ兄様」


私がそっと名前を呼べば、二人とも目尻をこれでもかってくらい下げて微笑む。




ジルンアス兄様―――通称ジン兄様―――は上の兄だ。齢23歳。

陽を反射してキラキラする金髪を、耳の下くらいで切り下ろしている。


初めて触れた時はあまりのサラサラ具合に、羨ましさを通り越して妬ましさを覚えたものだ。

切れ長の目は、この国の次期宰相に相応しいというべきか、鋭く、人によっては冷たいとさえ思われるのだとか。

冷たい美貌は、逆に数々の女性を虜にしているらしい。


頭脳明晰、冷静沈着との誉れ高いジン兄様は、私には少々・・・いや、かなり度を越して甘い。

それでも自慢の兄様だ。




2番目の兄、齢21歳のカイルアス兄様―――通称カイ兄様―――は

茶色の髪を武人らしく短髪にしている。


王太子殿下の親衛隊副隊長を務めているカイ兄様は日々の鍛錬の賜物か、ガッシリとした体つきをしている。

筋肉のついた体は、私が思いっきり体当たり(兄様曰く「抱きつき」)しても、ビクともしない。


それでも威圧感を感じさせないのは、よく豪快に笑うから。気さくな人柄で部下に慕われている。


もちろん服務中の時は一分の隙も見せないくらい、周囲に目を光らせているのだとか。加えて、訓練中は「鬼」の異名を持つ。


武術に秀で、服務中と服務外のそのギャップに悶えるという女性は数多いる。

そんなカイ兄様も、私にはとことん甘い。





私がそっと立ち上がるのに合わせ、二人も近付いてくる。私の傍らに控えていた侍女たちが、静々と頭を下げる。






この国で、知らぬ者はいないほどの、この兄弟。

兄弟そろって、次世代を担う重要地位についているのは、その大部分が本人達の才能・努力の成果であるが、そこに侯爵家という身分も加わる。

公爵に次ぐ貴族で、実力・地位・身分・美形・約束された将来とくれば色めき立たない女性はいないだろう。


未だに独身でいるのもそこに輪をかける。






その侯爵家に、その兄弟の下には「隠れ姫」がいる――――というのは、周知の事実だ。





「隠れ姫」の由来。

侯爵家の第三子に姫がいるという事実はある。

だが、ほとんどの貴族はその姿を見たことがない。


だからこその「隠れ姫」だ。




では、なぜ人の前に姿を見せない?


とんでもない醜女なのだろうか。

出歩けないほど病弱なのだろうか。

人前に出すのも恥ずかしいほどのはしたない姫なのだろうか。



人々は憶測する。






だがその事実は。



あまりの妹姫可愛さに、兄二人が隠してしまったからだとか。


貴族の子弟に目をつけられないように、

よからぬ男に攫われないように、

ロクでもない男に騙されないように、

地位あるが故の嫉妬や妬みの悪意にさらされないように。





妹溺愛の成せる「隠れ姫」なのだ。











・・・・・・・・それが、この私、サラ、齢15歳。












5年前から、「私」は「サラ」に、なりました。

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