表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/12

素直な彼女と思い

「ずっと申し訳ないなって思ってたの」


 日が沈みかけていて、茜色に染まっていた空は夜の訪れを感じさせる薄暗さになっていた。宮森さんはぽつり、ぽつりと続ける。


「不慣れって事前に言ってたとはいえ、告白した相手に急に素っ気ない態度しか取れなくて・・・・」

「それでも、友瀬くんは嫌いになったりしないで付き合ってくれて、本当はずっと嬉しかった」

「どうして、このタイミングで?」


 そう問いを投げた瞬間、袖を掴む力が強くなる。宮森さんは「それはね」と前置きをして言った。


「こうやって二人きりになれる時間って今まであまりなかったから、もちろん作ろうとしなかったのも悪いかもしれないけど」

「だから、こうして二人きりになれる機会を逃したくなかった」


 ──僕は思う。きっと宮森さんも僕と同じくらい不器用なのだ。初めての関係でどう接すればいいか分からなくて、逆に距離をとってしまう。壁を作ってしまう。


 あの日、なぜこんな関係性になる告白をしてきたのか、その理由は彼女にしか分からないけどきっとこれが彼女の精一杯の距離の縮め方なのかもしれない。


 目の前で今にも泣き出しそうな顔でこちらを真っ直ぐ見つめている彼女に親近感と共にある種の尊さのようなものを感じている自分が居た。


「ありがとう、宮森さん。僕も最初は戸惑ったけど、最近はむしろ素直なモードをここぞで入れてくるようになったから逆に効くよ」


 宮森さんは袖から手を離して、両の手のひらを左右に振って恥ずかしそうに頬を赤らめる。


「わ、わざとじゃないの自然にそうなっちゃうっていうか・・・・なんていうか」

「宮森さん」

「・・・・はい」

「安心してよ、宮森さんが今後どんな態度になっても僕は告白の理由を聞くまで離れないから」

「それは・・・・それじゃあまるで」


 宮森さんの声のトーンは沈み、消え入りそうなほど弱々しいものに変わった。僕はすぐに自分の言い方のあやまりに気が付く。この言い方ではそれが聞けたら離れると言っているようなものだ。


「宮森さんが言ったんじゃないか、付き合うのを前提にってだからきっと離れることなんてないよ」

「うん、まだ時間が掛かるかもしれないけど、ゆっくり接してくれると・・・・嬉しい」

「もちろんってこれ翌朝になったらまた素っ気ない態度に戻るパターン?」

「多分・・・・でも離れないで居てくれるんだよね」

「んん、もちろん」


 気づけばお互いがお互いの手にそっと触れていた。僕らは微笑み合う、そうしていたのは長くないけど、不思議と勉強していた時間よりもはるかに長く感じられた。周囲の時の流れが止まってしまったかのようだった。


 手の温もりは僕の胸にまで達し、じんわりと暖かくなる。僕はこの日、たしかに宮森さんとの関係を進展させられた、そんな手応えを得ていた。


 もちろん、その進み具合はわずかなのかもしれないし、勘違いなのかもしれない。


 それでもこの胸にじんわりと広がる感覚と彼女の微笑みは紛れもない進展の証だと僕は思った。これから起こる一切合切を考えることなんて今の僕には出来ないのだから──。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ