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僕は彼女に素っ気ない?

 カラオケ店を出る頃には、強くなると予報されていた雨はすっかり止んでいて、夜空には点々と星が見えるほどだった。


「きゆうだったな明」


 守がこちらを向いて意地悪そうに言った。たしかに少し恥ずかしいけど、予報が外れることなんてそこまで珍しいことではないじゃないか。


 なぜか川崎さんまでどこか満足気な笑みを浮かべてこちらを見ていた。


(この人は一体どこまで僕のことが嫌いなんだよ)


「それじゃここで解散でいいかな」


 後ろに居た宮森さんがそう言うと川崎さんと守が頷く。


「あの僕はこの後、曾山さんと少し話があるから」


 僕のその発言に宮森さんが「そう」と短く反応して、守と川崎さんも「じゃあまた明日」と言って帰って行った。


「えっと、どこで話そうか曾山さん」

「良いところがあるんです、ついてきてください」


 先を歩く曾山さんの後を追うように歩く。どこへ向かうのだろうか、曾山さんのことだから行きつけのカフェかそれともファミレスとかなのか。


 僕はふと思う。ここまで積極的な彼女を見るのは初めてで、おそらく僕が一番最初の目撃者なのではないだろうか。


(まあ、だからといって浮かれるようなこともないけど)


「着きました、ここでお話しましょう」


 先ほどの予想、カフェかファミレスかの答えはカフェだった。実にらしい。


 落ち着いた雰囲気のカフェで店内にはジャズが耳障りにならない音量で流れていて、暖色の照明が店内を照らしていた。僕と曾山さんはカウンター席の後ろの縦に並べられたテーブル席に向かい合って座る。


「それで守のことで相談があるんだよね?」


 彼女はこくりと頷いて、相談内容を話し始めた。


「私、守くんのことが好きなんです・・・・入学当初一人ぼっちで孤立していた私に話しかけてくれたのが彼でした」

「まあ、守はああ見えて世話焼きするタイプだからね」

「そうなんです、たったそれだけで好きになるなんて単純だと思われるかもしれませんが、日に日に彼を意識するようになってしまったんです」


(つまり、この相談は僕が一番危惧していたタイプのやつだ)


「それで、守と仲の良い僕に協力して欲しいって感じかな?」

「はい、良かったら守くんのことをもっと知れる機会を作ってもらったり、友瀬くんが知ってることを教えて欲しくて」

「悪いけど、僕は協力できない」

「・・・・それはどうしてですか?」


 理由なんていくらでも思いついた。単にめんどくさいとか僕にそんな機会を作る能力はないだとか。実際、機会を作る具体的な方法やそもそも知れる機会ってなんだろうと悩んでしまう。パッとは思いつかない。


「僕はそんな他人の恋路に介入するほどお節介じゃないし、世話焼きでもない。機会なんて自分で作ればいい、相手を知りたいなら友達じゃなくて本人にアプローチすればいい」


 僕は少し投げやり過ぎたかな、とちょっとチクりとする。これも昔の癖がまだ抜けきってないからか。


 曾山さんはうつむいて「そう、ですよね」と呟く。


「友瀬くんは守くんと違ってなんだか素っ気ないです」

「そうかな、ごめん少し投げやりだったかもしれない」

「いえ、本当のことですから・・・・」


 その後、しばらく僕らの間に沈黙が流れた。カフェの掛け時計の時刻を刻む規則正しい音が耳にはっきりと入ってくる。


「じゃあ、友瀬くんのことを教えてください」

「僕のこと・・・・?」

「はい、守くんと出会った経緯とかじゃなくてもいいです。単純に友瀬くんが当時どんな人だったのか気になります」

「守と出会う前の僕・・・・か。少しだけならいいよ。ただ曾山さんの役に立つ話だとは思えないけど」


 曾山さんは「ぜひ」と言って頷く。守と出会う前──中学に入ったばかりの頃の僕は今とは少し違う人間だった。思えば、今の宮森さんのような。


 そのせいで孤立していく僕を救ったのは守と意外にも他校の女子生徒だった──。

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