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僕にだけ反応が素っ気ない?

 放課後、昇降口前に僕らはそれぞれ傘を持って集まっていた。雨は夕方に近づくほど強くなっていき、今は風も強くなってきている。


「なあ、この天気でも行くのか?」


 僕は傘を開き始めている守にたずねた。もちろん答えは分かっているけど、万が一にも守以外の誰かが中止にしようと言ってくれることを期待してのことだ。


「カラオケボックスに雨の強さなんて関係ないだろ」

「でもなぁ・・・・スマホの天気予報だと夜に近づくにつれて雨がより強くなるみたいだし、帰りに影響が出るんじゃないか」

「んん、そうだな、三人はどうだ?」


 最初に応えたのは不安げに土砂降りの雨を眺めていた曾山さんだった。彼女は「そうですね・・・・」と考える素振りをしてから、言った。


「私も友瀬くんに賛成です、もちろん遊びには行きたいですけど私の傘はそんなに強くないので・・・・」

「そうか、それなら確かに仕方ないな・・・・宮森さんは?」


 流石にこの流れなら宮森さんも延期か中止を選択するだろうと考えていた。しかし、スッと宮森さんが僕に近づくと袖を掴む。


「と、友瀬くんはそんなに遊びたくないわけ?」

「遊びたくないわけじゃないけど、ほらやっぱりここまで悪天候だと素直に帰った方が良いかなと」

「・・・・大丈夫だよ、私は友瀬くんと遊んでみたい、駄目かな」


 素っ気なさが完全に消えて、あの告白をしてきた時のような宮森さんになっていた。唇をわなわなとふるわせながらもこちらを真っ直ぐ見つめていた。


(これは、ずるいのではないだろうか)


 守はなにやらにやにやと笑いながらこちらの様子をうかがっている。どうせろくな解釈をしていないだろう。


「曾山さんの傘の件なら俺の傘を使えばいいよ、結構でかいんだ」

「は、え、そうしてもらえるなら・・・・いけるかも」

 

 黙っていた川崎さんがここで口を開く。


「私も朱里が行きたいなら行く、ていうか友瀬に断る権利なんてないから」 

「どうかな、友瀬くん」

「分かったよ、行こう。その代わりあんまり遅くならないうちに帰ろう」


 ──そのカラオケボックスはそこら辺にある普通の店より少し高いところだった。個室は数人が余裕で入るくらい広く、テーブルの中央にはお菓子が大量に置かれていて自由に食べていいらしい。見たところ機材も最新のものが取り揃えられている。


 そして今、その個室の中に居るのは僕と守の二人だけだ。女子たちはドリンクを取りに行っている。


「驚いたな明」

「そうだな、宮森さんがこんな店の代金をポンと出せるお金持ちだなんて」

「それもだけど、明と宮森さんがあんなに仲が良いなんて知らなかった」

「なんだ、そうだとしたらショックか?」


 守は「まさか」と被りを振ってこたえた。


「俺の本命は全然違う」

「ほう、それは気になるな友達として」

「教える気はないけどな友達だとしても」


(まあ、別に興味はないが、曾山さんの相談がそれ系なら少し厄介だな)


 そんなやり取りをしていると、個室の扉が開き三人が片手にドリンクを持って入ってきた。彼女たちが座ったのと同時に僕も立ち上がる。


「守、僕たちも飲み物とってこよう」

「ああ、そうだな。三人共、先に歌っててもいいよ」

「行ってらっしゃい」


 宮森さんは言いながら川崎さんともうパネルを操作している。

 

「い、行ってらっしゃい」


 遅れて曾山さんがこちらに軽く手を振った。


 ──しばらくは守と川崎さんが主に歌い、たまに宮森さんが少し恥ずかしがりながらも数曲歌うというサイクルだった。そんな三人の様子を曾山さんがぼんやりと眺める。


「友瀬くん凄いね・・・・三人共」

「曾山さんも歌う?」


 彼女は勢いよく首を左右に振って「私は遠慮します」と言い飲み物に口をつけた。丁度三人共、かなり歌っていて満足しているようだ。そして、守が僕にパネルを渡して来る。


「明、一曲も歌ってないじゃん」

「最後の最後に歌おうと思ってたんだよ」

「じゃ、今がその最後だな」


 僕はパネルを受け取ると、少し自信のある歌い慣れた曲を入れてマイクを取る。個室に居る他の全員の視線が僕に注がれている。


(なんか、歌いづらいなこれ)


 とはいえ、失敗するわけにもいかない。万が一そんなことになったら、守と川崎さんにどんな反応されるか分かったものではない。僕は歌い出しのタイミングを見計らいながら、脳内で音の高さをイメージし、歌った──。


「流石に上手いな、明は」

「凄いです友瀬くん」

「意外だったよ、友瀬が本当に歌が上手いなんて。普段全然話もしないくせに」


 三人の反応は上々だ。最後、宮森さんの方を見るとこちらをぼーっと見ていて目が合ってしまう。また素っ気ない反応をするに違いない、と僕は予想していた。だけど、宮森さんはただ僕をずっと見つめて呟くように一言口にしただけだった。


「かっこよかった、明くん」


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