僕にだけ振りが素っ気ない
一時限から三時限までの授業が終わった。途中の休み時間にもっと宮森さんから話を聞きたかったけど、クラスメイト達が彼女の机をかこみ、僕との関係を聞いていてとても話しかけられる状況ではなかった。
「朱里、友瀬といつの間に接点持ったのよ」
「栞ちゃんには言ってなかったけど、実は結構話してたり・・・・」
「ふーん」
「なにかいけないことあるかな?」
「別に、ただ意外だなって思っただけ」
そう言いながら川崎栞は鋭い視線を隣の僕に向けてくる。この女子生徒はクラスの中でも気が強い性格で正直なところ僕は苦手だった。向こうも多分僕のことを同じように思っているかもしれない。
気が強い人間は僕みたいな陰気をまとった人間を毛嫌いするものだ。他でもない僕が昔そうだったのだから。
「出来れば栞ちゃんも友瀬くんと仲良くしてくれたら、嬉しいなって」
「まあ、考えとく」
そんな休み時間の会話を思い出しながら、僕は自分の机の上にお弁当を広げていた。隣の席では、宮森さんに川崎さんと守が机をくっつけて昼食を取ろうとしていた。
「曾山さん、良かったらこっちで一緒に食べませんか?」
宮森さんは、窓際の席に居る曽山さんに微笑みを浮かべて呼びかける。そして僕の方に視線をうつすと微笑みが消えた表情で言った。
「友瀬くんもこっち来れば」
その素っ気なさに真っ先に驚いたのは守だった。一方、栞は「なるほどね」と呟いてなにか納得した素振りを見せている。
「宮森さんも結構人によってはドライなんだね。ドンマイだ明」
「ふん、言ってろ守」
そうして、全員で机をくっつけて各々お弁当を食べ始める。宮森さんと川崎さんの二人はなにやら楽し気に会話をしていて、守がそれに時々参加していた。
(宮森さん、僕以外と話す時は穏やかでいつもの調子だ)
「あ、あの・・・・友瀬くん」
制服の袖がかすかに引っ張られる感覚と共に隣から消え入りそうなか細い声で名前を呼ばれる。メガネを掛けた曾山さんが遠慮がちに僕を見つめていた。
曾山さんは宮森さんと同じかそれ以上に大人しい女子生徒だ。正直彼女が宮森さん以外と会話しているところをいまだに見たことがない。
「どうかした?曾山さん」
「そ、その友瀬くんは守くんと仲が良いんですか?」
「まあ、良い方なのかな一応中学からの付き合いだし」
「そ、そうなんだ、あの実は相談したいことがあって・・・・」
曾山さんがそれを言いかけた時だった。
「曾山さんも良かったら今日、遊びに行きませんか?」
宮森さんと他の二人がこちらを向いていた。どうやらさっき楽し気に話してたのは遊びに行く予定についてだったみたいだ。
「友瀬くんも来るよね?」
「あ、ああせっかくだから行こうかな」
「え、友瀬も来るの」
川崎さんは露骨に嫌そうな顔をして僕の方をにらんでくる。やっぱり行きたくなくなってきた。
「まあまあ、川崎さん人数多い方が楽しいでしょ」
瞬時に守がフォローに入ると川崎さんは「そうだけどさ・・・・」と納得いかない様子ではあったもののそれ以上なにか言うことはなかった。
(どうやら僕は川崎さんに想像以上に嫌われているようだ)
「ところで、遊びに行くってどこに行くか決まってるのか?」
「明の長所が活かせる場所だぜ」
「え、友瀬って上手いの?」
「まあな、俺以上かもしれないな」
曾山さんと宮森さんはそんな会話をきょとんとした表情で聞いている。無理もない知っているのは守だけなのだから。
「友瀬くんって歌上手いんだ、意外」
宮森さんはなんでもなさそうなトーンで言った。もう少しなにか反応が欲しかったけど、なぜだかこの素っ気なさにも段々慣れてきた気がする。
「あ、あの私歌はあまり・・・・」
「曾山さんは無理して歌わなくてもいいよ」
宮森さんはうつむく彼女に穏やかな口調でフォローした。
「それじゃ放課後、昇降口の前に集合ね」
川崎さんが集合場所を言って、お昼の時間は終わった。最後、各々机を元の位置に戻している時、曾山さんが僕の袖を掴み話しかけてくる。
「今日の予定が終わったら、相談したいことお話してもいいですか?」
「うん、構わないけど、あんまり力になれるかは保障できないよ」
「そ、そのとりあえず聞いてくれるだけでもいいので・・・・お願いします」
「分かった、聞くだけなら良いよ」
曾山さんは「ありがとうございます」と言って元の場所に机を戻しに行った。
(あまり、面倒なことじゃなければいいけど)
僕は心の中でそう呟いてため息をつく。快晴だった天候は機嫌を損ねたように悪くなりかけていて、今にも雨が降り出しそうな様子でやっぱり遊びの誘いを断るべきだったな、と少し後悔した。




