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本気

 テスト勉強期間二日目、僕は昨日と同じように宮森さんと一緒に勉強して、家の自室に戻ってからは復習をしようと勉強机に教材を並べていたけど、ぼんやりと天井を眺めていて進んでいなかった。


 今日でテスト範囲の基礎的な問題は一通りカバーしていた。残りは応用問題や先取り問題という点うちの高校独自の風習で習っていない部分の問題が出題される。


 進学校であるため、やる気のある生徒は解けたらいいねという感じの出題だ。


 ぼんやりとした僕の頭はとりとめもなく思考を巡らし始め、やがて収束していく。


「・・・・少しぶつかってみようかな」


 僕は宮森さんの素っ気ない態度以上にたまに出る素直な反応が好きだった。カラオケで歌を褒められた時のことを思い返すと自然と頬が緩んでしまうくらいに。


 あの反応を引き出せる可能性のあるものを僕は歌以外にも持っている。


 いや、あるいは歌以上かもしれない。目を閉じて思い浮かべる、テストが終わり順位が張り出されるその瞬間を──。


「よし決めた」


 僕は、スマホを取り出し彼女にメッセージを打つ。返信はすぐに返ってきた。


「期待してる、本当に」


 その短い返信を確認してから、僕は視線を開かれた教材にうつす。ページを応用範囲のところまでめくり、問題を確認する。


 ──自分の勘がまだ生きてるのを実感した。


 翌日から僕は朝の時間はもちろんそれ以外でも各教科の教材とにらめっこして、シャーペンを走らせていた。川崎さんや曾山さんは珍し気に僕を見ていたけど、守はなにかを察したようでただ「頑張れよ」とだけ言い残して自分の勉強をする。


 宮森さんは僕と同じように教材と向き合っていた。


 一筋縄ではいかなそうだな、とその様子を横目で見て直感する。


 でも勝算がないとは不思議と全く思わなかった。むしろ彼女が真剣に打ち込むことで僕もどんどん気持ちがのっていく。気持ちがのれば勘はより冴えわたる。


 僕にとって勉強というのはパターンの学習と応用を繰り返すものだ。この作業において僕が平均より高いのは最低限の知識を応用し最大限活用する能力。


 僕は最初の2日で各教科の土台のピースを持っていた。いつもならそのまま本番をむかえていたかもしれない。


 ──応用範囲の半分以上を既にカバーしていた。問題を分解して単純化すると全ては基礎の集合体、あるいは基礎に変化を加えたものであったりする。問題を解体して理解したらあとは作業的にピースをはめ込んでいく。


 そんなことをテストの2日前まで続けて、応用範囲の全てを網羅した。問題は──その先の範囲の出題。


「・・・・解いてくるんだろうな」


 残り二日、僕はエアコンの効いた自室のベッドに仰向けになって両手で掲げた教材を眺めるとそんな独り言をもらしていた。


 指定範囲の先の問題が厄介なのは普段予習していない僕の脳内に基礎のピースが揃っていないところだ。ブランクのせいか、予想以上に応用範囲の攻略に時間が掛かってしまった。


「最後は気合いって感じだな」


 僕はベットから起き上がり、勉強机に置いてある缶コーヒーをくっと飲み干すと未開の範囲に踏み込んでいった。我慢比べと集中力には少し自信があるのだ──。


 むかえたテスト当日、あまり寝ていないにもかかわらず頭は過去一で冴えわたっている。


 ──宮森さん見てて、僕の本当の精一杯を。


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