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第3章 始まりの街


 門番に言われた通り、トニーは馬車をその場で止める。先程までこわばっていたトニーの表情は一瞬にして満面の笑みに変わった。


 トニー「ご苦労さん、性が出ますなぁ!」


 門番「馬車に乗っている少年は何者だ?見かけない顔だが。」


 トニー「すぐそこの道で路頭に迷ってたんだ。この年まで畑仕事しかしてこなかった世間知らずだったんで、この街の運搬の仕事に就かせようとしているところだ。」


 門番「そうか、では念の為荷物検査をさせてもらう。」


 トニー「ああ、かまわんよ。」


 門番は馬車の荷物と2人のズボンのポケット、それからトニーの持っていたアイテムボックスの中身を一通り確認した。


 門番「よし、そうしたら通行料は銀貨1枚だ。それから、そこの少年は本日中に職業安定所で情報登録するように。」


 トニー「はいよ!」


 そう言ってトニーは、馬車を発進させた。


 街の中は、打って変わって人々の活気に溢れており、石畳が綺麗に舗装されている。大通りには、木の柱とボロボロの布で作られた簡易的なテントが並んでいて、野菜や果物、串焼きなどが売られていた。


 クリス(一見治安が良さそうに見えるが、この街はおかしい・・・質素な生活をしている人々に対して、道が綺麗過ぎる。それに、奥の方に見える住宅地のような場所、まるで俺が住んでいた世界の豪邸のようだ。あそこだけ数百年時が進んでいるみたいだ。)


 トニー「これで分かっただろう。この街、いや、この世界はいびつだ。これまでのことは忘れて、運搬の仕事に就くんだ。死にたくなかったらな。」


 クリス「・・・」


 2人の間に、しばらく沈黙が続いた。しばらくして、街の中央エリアに到着した。先程遠目から見ていた住宅街のような場所は、住宅だけではなく、武器店や雑貨屋などのお店も立ち並んでいた。


 クリス「このあたりのエリアは先程の場所と比べて、だいぶ建物が立派なんだな。このエリアは一体?」


 トニー「この辺りは商人の店舗や、お偉いさんの住宅なんかがある。俺の店舗もこの辺りにある。」


 クリス「なるほどな。さっきのエリアとこのエリアの店や人々ではかなり貧富の差があるように見えるが、それは何故だ?」


 トニー「・・・すまねぇ、その質問には答えられねぇ。」


 クリス「いや、変な事を聞いて悪かった。」


 トニー「・・・ さぁ、着いたぞ!ここが職業安定所だ!」


 街の中央エリアだというのに、この建物だけやたら年季が入っており、公共の場というより、少し大きめの2階建て住宅のようだった。


 トニー「俺が案内出来るのはここまでだ。これから色々大変だとは思うが、運搬の仕事さえ見つかれば、安泰だろう。」


 クリス「なぁ、やたら運搬の仕事を推すが、何か理由があるのか?」


 トニー「そりゃあ、人気の仕事だからに決まっているだろう?それにオマエにとって都合がいいだろうからな。」


 クリス「都合がいい?何故だ?」


 トニー「とにかくだ!あと、時間がある時にこの街の地形は把握しておいたほうがいい。この街は広いからな。」


 クリス「ああ、分かった。」


 トニー「頑張れよ!応援しているからな!」


 クリス「本当にありがとう!いつかこの恩は必ず返すよ!」


 トニー「気にすんな!じゃあな!」


 そう言って、トニーはその場を後にした。


 クリス(トニーか。すごく親切な人だったけど、色々と隠し事も多かったな。ただ、言わないというより、"言えない"という感じだったが・・・)


 職業安定所の中に入ると、受付カウンターが2台あり、その隣には小さめの掲示板がある。自分以外の求職者は見当たらない。


 クリス「すいません、仕事を探しているんですけど、運搬の仕事ってありますか?」


 職員の男性「少々お待ち下さい。」


 職員が手元の書類を確認している間に、クリスは掲示板の張り紙を見た。


 クリス(ふーん、畑仕事や家畜の世話、町工場の求人か・・・!?)


 クリスは、掲示板に貼ってある紙の半分以上が求人ではないことに気づいた。


 クリス(魔術師を見かけたら直ちに衛兵に通報を!?・・・こっちは魔術の無い平和な世界を・・・これは・・・)


 それ以外にも、懸賞金と共に魔術師のイラストが描かれている張り紙が多数ある。


 クリス(間違いない・・・!この世界は魔法狩りをしている!何故リンさんは俺をこんな世界に!?)


 職員の男性「お待たせいたしました。失礼ですが、これまではどのようなお仕事を?」


 男性は丁寧言葉遣いだが、とても鋭い目つきをしていた。


 クリス「ああ、これまではずっと畑仕事をしてきたんだが、トニーさんの勧めで荷物の運搬の仕事に転職しようかと・・・」


 職員の男性「トニーさん?」


 クリス(しまった。安易にトニーさんの名前を出してしまったが、まずかったか?)


 職員の男性「そうでしたか!あのトニーさんから!運がいいですね!運搬の仕事はとても人気なのですぐ埋まってしまうんですが、今でしたら1件求人が出ております!」


 クリス(う、なんかすごい胡散臭いというか、これはコネ入社というやつなんじゃないか?)


 職員の男性「こちらの営業所が面接会場になっております。私から担当者に連絡しておきますので、このままこちらに向かってください。」


 クリス「ああ、ありがとう。」


 クリスは、面接会場の地図を受け取って、職業安定所を後にした。地図によると、面接会場は街の反対側にあるらしい。


 クリス(街の北側はまた随分景色が違うな。この辺りは年季の入った住宅が立ち並んでいる。南側の商業エリアとは打って変わって、道が入り組んでいて、地図が無ければ迷子になりそうだ。)


 クリスは、地図に記載されている場所に到着したが、そこは住宅街のど真ん中で、面接会場らしき場所は見当たらない。


 クリス(おかしいな、確かにここが面接会場のはずなんだが・・・)


 次の瞬間、クリスの腕が何者かに引っ張られて、建物の中に連れ込まれてしまった。



続く。




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