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第1章 最後の魔法使い

ーーー遥か昔、人類から人並み外れた力を持つ「魔法使い」が誕生した。魔法使い達はその力を人類の発展のために惜しみなく使い、親交を深めようとしたが、人類はそれを恐れた。人類は魔法使いと共存するか、滅ぼすかで二分してしまい、歴史の大きな分岐点を迎える。これは、人類が魔法使いと共存を選んだある世界の物語である。ーーー



 アナウンサー「来月18歳の誕生日を迎える魔法使いのユウリは現地時間13時に記者会見を予定しており、魔法使いの道の進退を発表する見込みとなっており、専門家はー」


 (現在、世界に魔法使いは俺とユウリの2人しか存在せず、明日ユウリが魔法使いの道を選ばなければ、世界から魔法使いが途絶えることを意味する。実際に会ったことはないが、初めてテレビで彼女を見た時から夢中である。魔法使いの道に進むことを14歳の時から決めたのも、人々のために奔走して、みんなから愛されている彼女の隣にいたいと思ったからだ。あと1年だ、あと1年で俺も彼女の後に続ける。きっと彼女も同じ道を進むだろう。明日は孤児院のお手伝いだ、今日はもう寝よう・・・)


 翌日、孤児院で皿洗いをしている時、男の子に大声で呼ばれた。


 ジャック「クリスー!ユウリの記者会見始まったよ!」


 クリス「しまった!もうそんな時間か!」


 皿洗い中の皿を持ったままテレビの前に向かうと、全員テレビの前に釘付けになっていた。


 友理「本日はお忙しい中、大勢の方にお集まりいただき、誠にありがとうございます。私、ユウリ・スコットは魔法使いを引退することをここに宣言いたします。」


 ガシャン!と皿が割れた音がして、みんなが驚いて振り返る。


 ジャック「クリス!お皿!」


 クリス「あ、ああ、すまない。すぐ片付ける。」


 ジャック「俺も手伝うよー。」


 女の子「ユウリは魔法使い辞めちゃうのかー、まぁ、前々から予想されていたけど、いざ発表されるとやっぱり寂しいね。」


 男の子「でも、俺達にはクリスがいるし問題ないでしょ。マスコミの前でも一生魔法使いだって早々に宣言してるし。」


 シスター「これからはより一層クリスさんに日々感謝をし、魔法使いさんがいることが決して当たり前ではないことを改めて肝に銘じましょう。」


 子供達「はーい!」


 クリスは皿を片付けた後、現実から目を背けるように皿洗いを再開した。


 クリス「どうして・・・どうして・・・。」


 ジャック「えっ、知らなかったの?テレビでもユウリが魔法使い辞める可能性が高いってずっといってたじゃん。」


 クリス「ユウリが映ってる所以外ほとんど見ていないから・・・。」


 ジャック「あちゃー。」


 クリス「いつかユウリの隣にいても恥ずかしくない魔法使いになるために俺は15歳から2年間頑張ってきたんだ。もう魔法使いになんてなりたくない・・・。」


 ジャック「それ、かなりまずくない?街のみんなもだけど、マスコミはクリスが最後の魔法使いだって、大々的に取り上げてるよ。今さら魔法使い辞めるなんて言い出したら大変だよ。それに、クリスはイケメンだし超モテモテじゃん。何もそんなに友理に固執しなくたって・・・。」


 クリス「俺の片想いは2年半も続いていたんだ!そう簡単に諦められるか!それに、修行期間満了になる18歳まであと1年もある、どんな気持ちで続ければいいんだ・・・。」


 ジャック「マスコミの前で立派なことを喋ってたクリスが本当はこんなことを考えてたなんて、俺、悲しいよ・・・。」


 ジャックはその場で目を手で覆うが、明らかに口角が上がっている。


 クリス「ただ、確かにこのまま魔法使いの役目を放棄したら、この街どころか世界中から居場所がなくなっちまう。その後のことはその時に考えよう。」


 ジャック「ちぇっ、最近クリスのノリが悪いなぁ。」


 クリス「ふっ、同じ手を使いすぎたな。そろそろ次のネタを考えたらどうだ?」


 ジャック「それだけ余裕があれば大丈夫そうだね。」


 クリス「生意気なっ。」


 ジャックとじゃれているうちに、クリスの失恋による悲しみはいつの間にか和らいでいた。


 孤児院のお手伝いが終わり、自宅に戻ったクリスはいつもより疲れており、すぐにベッドに横になった。


(あと1年で俺は魔法使いか人間としての人生を歩むかを決めなくちゃならない。たが、馬鹿な俺は自分で人間としての人生を放棄してしまった。これからの1年、どう過ごそうか・・・駄目だ、今日はもう疲れた。明日から考えよう。)


 クリスは深い眠りについた。


 イグジスト2025年2月17日。この日、世界から魔法使いクリスが消滅した。


続く。


















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