表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/46

番外編~入部希望と、選ばれし帰宅部~

 四月の放課後、黎進高校の校舎裏には、ぽつんと開け放たれた倉庫がひとつ。

 その前に立つのは、三人の生徒だった。


 帰野玖郎──帰宅部を名乗る男子生徒。目つきは鋭く、髪はボサボサ、制服はだらしない。

 だが口を開けば「ふむ、事件だな」とか「この状況、謎を感じる」とか、まるで推理小説の主人公を気取っている。


「鍵が……消えた、だと?」


 玖郎が倉庫の扉を前にして呟く。


「さっきまで鍵、挿しっぱにしとったんやけど……戻ってきたら、無くなっとって」


 そう答えたのは、新聞部の福山しおり。

 ギャルっぽい見た目に、口調は広島の備後弁。だが中身はしっかり者で、玖郎とは幼馴染の腐れ縁。


「まさか……これは“選ばれし者”にだけ訪れる、帰宅部入部試験──!」


 玖郎の謎のテンションに、しおりは額を押さえる。


「いや、単なる忘れ物じゃろ」


 そこに現れたのが、山口。どこにでもいるような平凡な男子生徒。やたら謝り癖があり、よくモノを落とす。


「え、えっと、ぼく何もしてないよ?ほんとに!」




 玖郎はしゃがみこんで、倉庫の前に落ちていた砂を指でなぞる。


「この足跡……三人分。しかも一人は……スキップしてる?」


「いや、あんたがスキップしてたんじゃろ」


「たしかに僕が来るときスキップした。でもそれは喜びからだ」


「なにが嬉しかったん……」


「謎に出会えたことが、僕にとっては至上の喜びだからさ」


「…それで鍵、どうなってるんですか?」


 山口の問いに、しおりは頷く。


「ちょっと席はずして戻ってきたら……この通り、鍵だけなくなっとった」


「犯人は……この校舎に潜む“第六の部活動”の関係者だな」


「第五までしか部活ないじゃろ」


「だから第六だ。公に認められていない、闇のクラブ……たとえば“鍵マニア部”だ」


「絶対ちゃうじゃろ」


「ちょ、ちょっと待って!」


 山口が声を上げた。


「もしかして……僕、持ってるかも……」


 ポケットをごそごそ。

 ──チリン。

 鍵が、出てきた。


「……え?」


「……は?」


「………………やっぱりおまえか」


「違う!これは、落ちてたのを拾って……その、拾ってポケットに入れたのを忘れてた!?」


「それが犯人のセリフやろ」



 こうして事件は、たった数分で解決した。

 犯人は、山口。

 理由は「拾ったけど、渡すタイミングを見失ってた」という凡ミスだった。


 だが、玖郎の推理は終わらない。


「違う……これは“表の事件”にすぎない……」

 玖郎は、空を見上げた。


「本当の謎は、なぜ山口は鍵を持ち歩いたのか……“鍵を握る男”──その裏に、組織の影が……!」


「もうええて!!」


 こうして、黎進高校の春は過ぎていく。

 だがこの日を境に、玖郎、しおり、山口の三人は、なぜか一緒に下校するようになった──


「帰宅部」の名のもとに。


(玖郎としおりは幼馴染です)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ