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 ぶらぶら庭園を歩きながら、私の知っている範囲でこっちの世界について説明をしていく。だいたいの地理と歴史。今の社会情勢。戦争のこと。なぜ大佐があんなトチ狂ったことをしているのか。ぐるっと一周してまた館の中に戻ると、朝と同じテーブルに飲み物が用意してあった。ちょっとクセのある香りのハーブティーで、温かくても冷めていてもそれなりに飲める。ポットからカップに注ぐと、まだ少し湯気が立った。椅子に座って家永さんの様子を窺う。お茶をちびりちびりと飲みながら窓の外を見ている彼女の感情が読めない。

「あの、花宮さん、は」

「うん」

「落ち着いてますね。すごく」

「うー……ん。そう見える?」

「はい。私とは全然違うなって」

 私なりにいっぱいいっぱいではあるんだけどな。昔から顔や態度に出ないのか、冷静と評されることは多かったけど。

「まあ何だろう、慣れ、かな?」

「私も慣れますかね?」

「きっとね。そのうち」

 再び無言になって、二人でお茶を飲む。どうしよう、色々踏み込んで聞いておくべき?それともまだそっとしておいた方がいい?

「私はさ、元々仕事で色々嫌なことがあって。それでまあ、こっちに来たのも受け入れやすかったんだと思う。気分転換したかったっていうかさ」

「そう、なんですね」

 家永さんの目がためらいがちに揺れる。彼女も何か抱えているんじゃないかなというのは私の勘でしかないけど。そこに何かしら、家永さんがここにいるヒントがあるんじゃないだろうか。窓の外を見ていた彼女が、私を見て、目を逸らし、また見た。覚悟を決めたように、ぐっとお茶を飲み干す。

「えっと」

「うん」

「私もその、色々あったっていうか」

「うん」

「まあその、下らない話なんですけど」

「うん」

 家永さんの瞳が、言葉を探しているのか忙しなく動く。何だろう、この年頃の子だといじめとか?

「えっと、けっこう仲良かった友達がいて。いっつも三人で遊んでて。その、小学校から一緒で、中学も」

「うん」

「で、高校も同じ所に行こうねーなんて言ってて。でも、その、私、落ちちゃって。めっちゃ泣いて。二人は、高校別れてもずっと一緒だよって言ってくれて」

「そっか」

 青春だなあ。眩しい。

「で、その、私も気持ち切り替えなきゃって。がんばろうって。思って、たん、ですけど」

 家永さんの目に、もりもり涙が盛り上がっていく。決壊して頬を濡らすまで大した時間は掛からなかった。

「その、二人、が。付き合うって。ごめんねって、言われて」

「……ああ」

 うわあ、甘酸っぱーい……。

 あー三人って女三人組じゃなくて男一の女二で?二人ともその男の子のことがずっと好きだったりして?中学まではずっと一緒だったから進展なかったけど、高校で一緒になった二人が付き合うことになった、と。うひゃー。ぽろぽろ泣いている家永さんには悪いけど、スレた社会人には眩しすぎる……。

 まあでも、彼女の気持ちも分かる。高校一年生って言ってたもんね。高校受験で失敗してずっと仲良しだった子達と別れて。自分にとっては不本意な学校で頑張ろうとしていた矢先に、好きだった人が親友と付き合うことになったら全てを投げ出したくもなるだろう。映画一本作れそうな展開だ。

「バカ、だなって。私。勉強、できないし。す、好き、て、言えない、し。本当に、嫌、で、自分が」

家永さんの横に椅子を動かして涙を拭うと、彼女は頭を私の肩に押し付けてきた。肩くらいいくらでも貸すさ。私の身長が足りなくてどうにも不格好だけど。

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