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 薄曇りになってきた空の下、ぼんやり座り続けること30分。増え続ける共和国軍の捕虜を数えるのにも飽きてきた頃、ポン、ポンとあちこちで信号弾が上がり出した。白色のそれは進出地点を報告するためのものだったはず。地図と照らし合わせていくと、連隊全体で予定していた攻略範囲の七割近くがすでに陥落していることになった。厳密には抵抗を続けている残存部隊もいるはずだが、そこが投降するのも時間の問題だろう。1日を見込んでいた作戦が半日で終わりそうだ。

 時計の針が11時を指すと、砲撃が再開された。右翼に分厚く降り注ぐ砲弾が大地を捲り上げていく後ろを、帝国の兵士達が走っていくのが見える。中央を進む部隊には砲兵支援が無いが、中央寄りは半ば制圧済みだ。大した抵抗もなく進んでいる様子が見てとれる。彼等には私の力は届かない。いや、届かなくはないが力を使いすぎて倒れたりしないように制限されている。今日1日では終わらない、野営を伴う作戦行動は初めてだ。使い所を間違えるなとデューリング少佐に釘を刺された。

 先頭集団が共和国軍陣地に吸い込まれていき、砲撃も落ち着いていく。共和国軍の塹壕線制圧が終わったら重砲も陣地転換のために移動する予定だったので、そろそろその準備に取りかかっているだろうか。何もかもが順調。怖いくらいだ。

 スザナがその辺に転がっていた木箱の残骸を集めて火起こしを始めだした。そういえばそろそろお昼か。食べるのは戦闘糧食とはいえ、淹れられるならお茶くらいは温かいものがあるとありがたい。そういうところは本当によく気が付く子だ。土嚢をうまいこと活用して竈をこしらえて、着々と準備を進めている。

「……司令部が動き出したようです」

「え、もう?」

 ユーリアが指差す先に、トラックの車列が見えた。砲撃で耕された大地をうねりながらゆっくり進んでいる。帝国軍にとって、自動車はまだ貴重な輸送力だ。それを動かしたということは、共和国軍には組織的な抵抗を行う能力は残っていないと判断したということでもある。

「スザナごめん、そろそろ移動するかも」

「はぁい」

 いい感じに燃え上がっている火の前で、スザナがちょっと不満そうな顔を見せた。お茶はまた後でね。

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