表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

106/109

99

「南部戦線についてはどの程度?」

「全く知りません」

 大佐の問いに力強く答える。ある程度話を聞いてはいるが、よく分かっている人に詳しく聞いた方が良い。

「南部戦線は同盟国を挟んだその先にあります。主力となっているのは同盟国軍なので、帝国軍はあくまで援軍として行動することになっています」

「はい」

「ただ、その同盟国で革命が起きたため事情が少々複雑でして。現状としては進出地点で停滞している、というところでしょうか」

「はあ」

 この世界の政治に疎い私に大佐が丁寧に説明してくれたところによると、今回の戦争が始まった時に帝国と同盟を結んでいた隣国も参戦。共和国との繋がりが深かった南の連合国との間で交戦状態になった。帝国軍の支援を受けた同盟側は連合国に対して優勢に戦闘を進め、都市国家連合体である相手国内に侵攻しいくつかの都市を攻略した。

 ところが、そこで隣国の国王が精神的に不安定になり、唐突に退位を表明。これは戦争が直接の原因というより、それ以前から国内で民主化運動が激化していた流れによるものらしい。王制から議会制民主主義に移行する混乱で、南部戦線は現状維持で停滞することとなった。

「えーと、質問があります」

「どうぞ」

「それだけグダグダ……混乱しているのに、連合国側は反攻してこないのでしょうか?」

「あちらも戦争はしたくないのが本音です。侵略されている諸都市議員は強硬に反撃を訴えていますが、連合国全体としては少数派にすぎません。日和見的と言いますか、勝手に撤退してくれるのを待っている、という状況ですね」

「はあ。そういうものですか」

「連合国は旧都市国家の独立性が高く、統一した行動が苦手です。また、彼等は伝統的に傭兵を用いた戦争を好む傾向があり、自ら血を流すことを厭います。今回も共和国が教育隊を派遣することで圧力をかけ、武器全般を支援してようやく重い腰を上げたという経緯があります」

 何と言うか、そんなことでいいのか?戦争だというのにやる気がなさすぎてぽかんとしている私に構わず、大佐が続ける。

「今回共和国が停戦に応じたことで、連合国に対する支援も停止します。帝国としてはこの機会に南部戦線を片付け、残る東部戦線に全力を集中したいと考えています。第三軍は既に移動に向けた準備を進めていまして、先遣隊として司令部機能を持った二個中隊の兵力を抽出し終えています」

「はい」

「貴方にはその先遣隊に合流していただく予定です。明日には移動を開始しますので準備をお願いします」

「明日、ですか」

 特に準備も無いので、明日動けと言われて動けなくはない。それにしてもずいぶん急だ。

「少人数での移動であれば、鉄道を使えば三日で到着します。その頃には先遣隊の一部が既に活動しているでしょうから、後は指示に従ってください」

「了解しました」

 明日、か。乙女にはどう説明しよう。相手にやる気がないなら、激しい戦闘にならないでいてくれるといいな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ