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佐久間盛重の選択

 大高城への兵糧搬入を完了した松平元康は、鷲津砦攻略に取り掛かっている朝比奈泰朝を助けるべく大高城を出陣。向かった先は、鷲津砦と共に大高城を包囲している丸根砦。その丸根砦には佐久間盛重以下400の兵が駐屯。


佐久間盛重「何!松平が打って出ただと!!」

「松平勢。丸根砦に向け進軍であります。」

佐久間盛重「清州の殿に伝えよ。退去する。と。」

服部玄蕃「佐久間様!それはなりませぬ!」

佐久間盛重「我らだけでは守り通す事は出来ぬ。清州の本隊に合流する。」

服部玄蕃「なりませぬ!鷲津の者共は皆朝比奈と交戦中にあります。斯様な時、戦いもせず退くのは物笑いの種になるだけ。末代まで迷惑を掛けることになってしまいます!」

佐久間盛重「皆の意見は……。そうか……服部と同じか?しかしこの砦はあくまで監視を目的としたもの。まともに攻められては耐える事は出来ぬ。」

服部玄蕃「佐久間様。」

佐久間盛重「何か考えがあるのか?」

服部玄蕃「はい。」

佐久間盛重「申してみよ。」

服部玄蕃「松平が大高に入ったのは今し方。沓掛を出たのも今日であります。しかも奴らに課せられた役目は不慣れな兵糧の搬入。疲れを残したままの出陣であると見受けられます。

 仮に鵜殿の兵が加わっていたとしましても、兵糧が枯渇する中での籠城を余儀なくされていた者共であります。とてもではありませんが、いくさが出来る状況にはありません。奴らに勝つ可能性があるのは……。」


 今、この時をおいて他にありません。


佐久間盛重「もう一度尋ねる。皆の意見は服部と同じか?……わかった。皆の気持ち。この佐久間が受け取った。出陣だ!!」


 佐久間盛重以下400の兵は、一丸となって砦を出。松平隊に突撃。砦に籠るものと判断していた松平勢は、虚を衝かれ前線が崩壊。夜が明けてからも一進一退の攻防が繰り広げるも多勢に無勢。佐久間盛重以下400の兵は、ここで最期を遂げたのでありました。


酒井忠次「危のう御座いました。」

石川家成「思い込みはいけませんな。」

松平元康「寡兵であり、砦の備えも不十分な中。我らの弱点と油断を狙って来た。敵ながら見事であった。」

酒井忠次「殿。朝比奈様が鷲津を奪った。との報せが入りました。」

松平元康「それは良かった。ならば丸根に入る。沓掛の今川様に報告し、指示を仰ぐ事にする。」


 松平元康、朝比奈泰朝からの報告を聞いた今川義元は大喜び。丸根、鷲津両砦の守りを朝比奈に。松平元康に対しては大高城に。その後の事は今川義元自らが大高城に入ってからにする。それまでは兵馬を休ませるよう指示したのでありました。

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