立て直し
岡崎城。
朝比奈泰能「忠高が勝手な真似をしなければ……。」
太原雪斎「過ぎた事は仕方ない。しかし此度わかった事があった。」
朝比奈泰能「どのような事でありますか？」
太原雪斎「それは……。」
松平の家臣は織田と戦う意志を持っている。
太原雪斎「私は安祥を囲った後、信秀が病であるため後詰めの兵を出す事はあり得ない。と考えていた。そしてその事は松平にも？」
朝比奈泰能「伝えてありました。」
太原雪斎「つまり忠高は織田の援軍を恐れ、城攻めを敢行したわけでは無い。」
朝比奈泰能「御意。」
太原雪斎「軍令違反は厳しい処罰が待っている事は知っていたはず。」
朝比奈泰能「はい。」
太原雪斎「結果で黙らせる手もあるが、恩賞に与るのは難しい。勝手にやった以上、出来て当たり前であるのだから。」
朝比奈泰能「はい。」
太原雪斎「それにも関わらず忠高が突撃を敢行した事には理由があった。」
朝比奈泰能「はい。忠高の父忠豊は過去のいくさで織田に討たれています。」
太原雪斎「弔う気に？」
朝比奈泰能「満ち溢れていました。」
太原雪斎「故に此度のいくさで私は忠高を松平衆の先手に起用した。そして山崎城での戦いで私の期待を上回る活躍を見せてくれた。しかしそれが徒になってしまった。」
朝比奈泰能「はい。」
太原雪斎「その忠高の後を……。」
朝比奈泰能「松平の者皆が追い掛け、いくさに参加した。と聞いています。」
太原雪斎「松平の家臣は皆。織田とのいくさを望んでいた？」
朝比奈泰能「そのように考えて間違い無いかと。」
太原雪斎「彼らの思いに応えなければならぬな？」
朝比奈泰能「御意。」
太原雪斎「しかし力攻めをする以上、それ相応の犠牲を覚悟しなければならない。」
朝比奈泰能「はい。」
太原雪斎「安祥以外の心配事を取り除かなければならない。」
朝比奈泰能「仰せの通りであります。」
半年後。太原雪斎は安祥城と地続きで、矢作川（矢作古川）に面した荒川城に布陣。この狙いは……。
太原雪斎「裏切り者の吉良義安を討ち果たす！」
先年、織田方となった吉良義安の居城西条城と安祥城との連絡を断つため。予め東条城に保管していた兵糧や武器を荒川城に輸送。太原雪斎はこれを活用し西条城を包囲。これを見た吉良義安は降伏。後顧の憂いを断つ事に成功した雪斎は安祥城を包囲。
太原雪斎「此度は織田も兵を動かしましたか……。」
朝比奈泰能「援軍が到着する前に。」
太原雪斎「片付けてしまいましょう。」
と力攻めを敢行。２ヶ月後。安祥城は陥落。城主織田信広を生け捕るのに成功したのでありました。
