接近
戸田は知多半島を経由し渥美半島。松平は西三河にそれぞれ勢力を拡大。両者の利害がぶつかり合う事は無かったのでありましたが……。
戸田康光「徳川家康の祖父にあたる松平清康が東三河に進出して来た。」
少年「戦いになったの?」
戸田康光「いや。私が彼と戦う事にはならなかった。」
少年「昔の関係が生きたの?」
戸田康光「そうでは無い。正直……。」
勝てる相手では無かった。
戸田康光「朝倉川とその朝倉側と合流する豊川の北に勢力を誇り、うちと対立関係にあった牧野氏と清康が激突。そこでの清康の戦いぶりを見て従う事にした。幸い清康は私の申し出を受諾。権益を維持する事に成功している。」
少年「でも従ったとなると、その後理不尽な要求をされたのでは?」
戸田康光「いや。そうはならなかった。理由の1つは彼の視線が西の尾張に注がれたから。そしてもう1つの理由が……。」
松平清康が家臣の勘違いにより討たれたから。
戸田康光「その時、清康は25歳。嫡男となる男子はいたが、まだ10歳。西三河の大半と東三河にも進出した一族を束ねる事など出来ない。親戚と言う親戚が
『今が権益拡大の好機。』
と考え行動した結果。その男子は国を追われ、伊勢に逃げなければならなくなった。まぁうちとしては幸いしたとも言えるのではあるのだが……。」
少年「どうして?」
戸田康光「朝倉川と豊川の南は基本うちの。正しくは神宮の権益なのであったのだが、その中にあって一ヶ所。どうする事も出来なかった場所があった。それが……。」
今橋城。
戸田康光「今川氏親の要請を受けた今の愛知県豊川市に勢力を誇った牧野古白が築城したこの城。その後、今川氏を経て再び牧野氏が押さえていたこの城がどうしようもなく邪魔な存在であった。その今橋城を……。」
松平清康は落としてくれた。
戸田康光「その数年後に彼はこの世を去り、松平は西三河で内輪揉め。その間隙を縫って牧野が三度支配するも、牧野は清康とのいくさで疲弊。私はこの機会を狙い城を攻撃。見事奪取に成功したのであった。」
少年「火事場泥棒?」
戸田康光「う~~~ん。ちょっと違いかな?それに私は……。」
一応御先祖様。
戸田康光「使う言葉には注意した方が良いかもしれないよ?」
少年「でも御先祖様のせいでうちの家族は世間から白い目で見られているんだよ?」
戸田康光「……悪かった。それに坊主の言う通り……火事場泥棒だったのかもしれないな……。」
少年「どうしたの?」
戸田康光「私が今橋城を手に入れてしまったがために……厄介な人物を引き入れる事になってしまったのだから……。」