広忠の周辺
太原雪斎「お聞かせ願えますでしょうか?」
戸田康光「ありがとうございます。私がお願いしたい事は娘の嫁ぎ先、松平の事であります。」
太原雪斎「取り急ぎ岡崎救援の兵を動かす所存であります。」
戸田康光「ありがとうございます。しかしその松平広忠の周囲が一枚岩ではありません。広忠は以前、水野と姻戚関係にありました。それもあり松平の中には水野と繋がりのある者も多いと聞いています。もし織田が岡崎に攻め込んだ場合、松平の者共がどのような行動を起こすのか?不明瞭な所があります。」
太原雪斎「その通りであります。」
戸田康光「織田は、松平が一枚岩になっても勝てるかどうか?の相手であります。今川様の救援が間に合えば良いのでありますが、今橋城の接収はこれからであります。明日岡崎が戦場となった場合、今川様の兵は間に合いません。」
太原雪斎「……うむ。」
戸田康光「広忠が織田の侵攻を留める事が出来れば良いのでありますが、いくさはやって見なければわかりません。それに松平と織田とでは……。」
体力差が大き過ぎます。
戸田康光「一度や二度の攻撃を退ける事は可能かもしれません。しかしこれが1年単位となった場合、松平は持ちません。そうなった時……。」
松平広忠の家臣はどのような行動を起こすのか?周囲の親戚筋がどのような動きを見せるのか?定かではありません。
戸田康光「そして何より広忠の嫡男の母親は……。」
水野信元の妹。
戸田康光「広忠の排除に乗り出し、広忠の息子を担ぎ出す者が現れる危険性を排除する事は出来ません。その芽を摘まなければなりません。勿論、広忠の息子は大事な跡取りであります。娘の子ではありませんが、それは関係ありません。松平を背負っていただかなければならない方であります。ただ今の状態では落ち着いて育てる事は出来ませんし、命を脅かされない状況にもあります。大至急安全な場所へ移動していただいた上、きちんとした教育を施す必要があると考えています。」
太原雪斎「仰りたい事はわかりました。こちらも大至急義元に連絡します。」
戸田康光「ありがとうございます。」
しばらくして……。
太原雪斎「戸田様からありました
『広忠の嫡男を駿河でお育てする』
と言う提案。実現する運びとなりました。」
戸田康光「ありがとうございます。」
太原雪斎「ただ1つ問題が発生しています。」
戸田康光「どのような件でありましょうか?」
太原雪斎「松平広忠から
『牧野領を通るのは罷りならん。戸田様に手助けしていただきたい。』
との事であります。」




